カレー沢薫の時流漂流 第295回 内定辞退と転職ファストパス、氷河期世代が悶える就職戦線異状なし

2024年4月15日(月)17時42分 マイナビニュース

世界最大のスラム街Xではポストがバズるとインプレゾンビは言わずもがな、必ずクソリプや反対意見を書き込む者が現れるという。
可愛い動物の写真ですら、背景から「この生育環境には問題がある」と虐待認定してきたり、「本猫に掲載許可は取ったのか?」など、それはそうだが人間如きには言われたくないリプがつくようになる。
さらに同属性ならみんな賛同してくれるわけでもなく、女による男叩きポストに「その男性が睨んできたのはあなたが女性だからではなく殴って財布を奪おうとしたからではないですか?」と、同性からも強い反発がくることもある。
しかし「氷河期の過酷さ」に関しては、少なくとも同じ氷河期世代から「そんなことなかった」という否定リプがつくことはほとんどない、という意見を見かけた。
○氷河期世代の連帯感はちょっと、いや、本当にコワい
氷河期と言っても「マジでマンモスいなくなった」など、リアル氷河期についてのポストではなく「就職氷河期」に関することだ。
しかし「X民の足並みが揃うレベルのヤバさ」だったとすれば、ある意味リアル氷河期より過酷と言える。
実際、先日も国会でとある氷河期世代の女性議員が自身の就職活動の悲惨さを討論で語った際、周囲の議員から嘲笑とも言える笑いが起こったことが物議を醸し、「笑った議員は全員出てこい」といいながらジャックナイフにペッティングする氷河期世代が後を絶たなかった。
ちなみに「氷河期世代」とは現在のだいたい40歳から54歳のことを指すそうだ。
ということは私もギリギリ氷河期世代に入っているのだが、実はそこまで氷河期の煽りを受けた記憶はない。
もちろん氷河期末期だったことや、地域も関係していると思う。
しかし、コロナの影響を最も受けなかったのが無職のひきこもりだったのと同様に、平時でも採用を見送られるタイプだった私は、就職活動が上手く行かないことを「氷河期のせい」とはあまり思わなかったためだと思われる。
むしろ、決まらなくても周囲に、氷河期だから仕方ないと思ってもらえてラッキーとさえ考えていたかもしれない。
ちなみにコロナの時も「本が売れないのはコロナの影響で本屋が閉まったせい」と言っていた。
やはり当時私を採用しなかった企業は先見の明がある。
逆に言えば、氷河期さえなければ名だたる企業に内定をもらいまくっていたであろう優秀な人材ほど、氷河期の影響を受けてしまったということだ。
そんな人材が意に反して就職できずフリーターを余儀なくされ、やっと採用率が上がったころに面接を受けに行ったら、姑の擬人化みたいな面接官に「卒業してから今まで何やってたの? アルバイトは働いていた内に入らないからね」などと言われて心を病んでいたかと思うと、本当に笑いごとではないので、笑った議員は暴徒に襲われる前に出頭して警察に保護してもらった方が良い。
○売り手市場な今、「内定辞退」は当たり前?
特に日本は「新卒」というカードが未だに強いので、この基本1回しか使えない最強カードを氷河期カードで封殺されてしまった世代は本当に不幸である。
そんな氷河期世代からすると今の「人手不足による売り手市場」は憎いほど羨ましいだろう。
しかし本当に好待遇の会社に入り放題状態だったら、世の中はこんなにギスギスしていないはずなので、結局低賃金で過酷な労働をしてくれる人が不足しているというだけな気もする。
だが少子高齢化により、企業が若手の確保に苦慮しているのは事実であり、新卒含む若者に関しては売り手市場も嘘ではないようだ。
実際、複数の企業から内定をもらいながら、内定を辞退したという新卒も多いようである。
氷河期世代からすれば、「お前が辞退した内定を30年前の俺によこせ」という話だろうが、空前の異世界転生やタイムリープブームの今でもそれは難しい。
しかし、今、辞退した内定を数年後の自分に使える制度が話題になっている。
一昔前には、大企業は同業他社と面接日を揃えて、学生が他社を蹴って自社に来るか試していたという話もあった。
だが、初デートで大戸屋に連れて行って「試してくる」男はどっちにしてもやめておけと言われるように、企業も新卒を試している場合ではなくなっている。
よって、内定を辞退した者であれば、後になって再度入社を希望した際に、選考過程をスキップして即最終面接まで行ける「タレントプール」、通称「転職ファストパス」を用意する企業も出てきているらしい。
企業にとっては、自分を振って別の女のところに行った元カレが、上手く行かずにノコノコ戻ってきたかのような話だが、そこまでしてでも若くて有能な人材が欲しい、というのが企業の本音なのだろう。
すでにXには「弊社の新卒初日にバックレ」という大草原投稿が散見されているが、逆視点で見れば初日でブラック企業だと見抜いた新卒がファストパス片手に脱出した、という話なのかもしれない。
しかし、ファストパスで行けるのはあくまで最終面接までであり、必ず採用とは限らないので、ファストパスで内定辞退した会社に入るつもりが落とされて、結果無職という可能性もゼロではない。
さらにファストパスには辞退してから3年以内など、使用期限があったりもするそうだ。
旬は短い。いつまでも「元カノは今でも俺のことが好き」ということはないのだ。

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