16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり

2024年4月24日(水)12時10分 ITmedia PC USER

折りたたみディスプレイが徐々にいろいろと採用され始めています

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 Galaxy Z Foldシリーズを筆頭に、折れ曲がる有機ELディスプレイを採用したフォルダブルデバイスがジワジワと市場に増えています。
 その勢いはついにPCの世界にも及んでいます。今回は16.3型ディスプレイを搭載したレノボ・ジャパンの「ThinkPad X1 Fold」(以下、X1 Fold)を試用する機会が得られたので、ノートPCが折りたたみディスプレイになると、どのようにビジネスに活用できるのか、いろいろ試してみました。
 先に言っておきますが、X1 Foldの価格は直販価格で49万2525円(税/送料込み)と非常に高価です。そもそもこの金額のノートPCを購入する方は少ないでしょう。
 とはいえ、そうした金額感だけを見ても仕方ありません。製品の純粋な使い勝手を検証してみたところ、タブレットとして活用するケースが非常に面白いと感じました。特によくスタイラスペンを使ってメモ書きやアイデアを考える方であれば、唯一無二のデバイスとなるでしょう。
●折りたたみを生かした使い方
 まずは基本的なところから見ていきます。折りたたみディスプレイを搭載しているだけあって、さまざまな形で活用できます。まずは一般的なノートPCとしての使い方です。付属のキーボードを使うことで、コンパクトな12型のノートPCのようになります。
 そして、目玉となる全画面での使い方はこちら。ディスプレイを開いて付属のマグネットスタンドを使って設置しています。ボディーの剛性もしっかりとしているため、安定感に問題はありません。キーボードはBluetoothで接続します。
 少しだけディスプレイを折りたたんだ状態で使うこともできます。縦でも横でも使えますが、横向きで本のようにして使うのは面白いと感じました。
●しっかりと実用に耐えうる作り
 折りたたみディスプレイという特徴以外にも、X1 Foldはしっかりと実用できる作りを兼ね備えています。PCの使い勝手を大きく左右すると言っても過言ではないキーボードは、ThinkPadの特徴ともいえるトラックポイント付きです。
 指紋認証センサーもキーボード側に搭載しています。12型サイズのノートPCですが、キーピッチなど含め十分に余裕のあるサイズです。なお、本体側に搭載されているカメラは顔認証機能にも対応しているので、キーボードを使っていない場合でもWindows Helloを利用できます。
 スタイラスペンにも対応しており、違和感なく使用できました。iPadのようにマグネットで本体にしっかりと装着できるのも便利なポイントです。スタイラスペンは充電式ではなく、電池を使用するタイプです。
 個人的にはWWAN(5G対応)にも対応しているのがうれしいです。nanoSIMやeSIMを利用することでモバイルネットワークに直接接続できます。
 折りたたみディスプレイは開いて大画面にした状態でも、Windows 11のウィンドウ配置機能を活用すれば使い勝手は上々です。
 しかし、気になる点もあります。
●X1 Foldを使って気になってしまったところ
 いざ実際に購入すると考えた場合、プロセッサがIntel Coreシリーズの第12世代しか選べません。特に最新のCore Ultraは“AI PC”とうたっているように、将来性がある新しいプロセッサになっています。
 高価なデバイスなので基本的には長期利用を考えると思いますが、少しちゅうちょしてしまうポイントかなと感じます。
 もう1点は、キーボードです。キーボード自体というよりは、キーボードを使う前準備がやや煩雑です。ノートPCのように使う場合、ディスプレイの上にキーボードを置きますが、この置いた状態だと折りたためません。使用中はごく普通のノートPCとして使っている感覚になるので、閉じるときも普通に閉めようとしてしまいました。
 当たり前ですがキーボードが引っ掛かって閉められず、画面に傷がついていないかとヒヤリとします。実際に引っ掛かっている部位は縁(ベゼル)の部分なので大丈夫なのだと思いますが……。勢いよく画面を閉めることもあるため、ちょっと怖さを感じました。
 Bluetoothキーボードなので充電が必要になる点もやや面倒さを感じますね。
 そして、やや惜しいのがインタフェースです。本体にはそれぞれThuderbolt4とUSB 3.2 Gen 2に対応したUSB Type-Cが2基しかありません(もう1基あるUSB Type-Cはキーボード充電用です)。USB Standard-AやHDMI出力なども欲しかったところです。
●ノートPCとしての大きなメリットは見いだしづらい
 折りたたみディスプレイではありませんが、前回、似たようなコンセプトのデバイスである「Zenbook Duo」をレビューしました。かなり気に入ったので、自腹で購入して現在愛用中です。
→・35万円切りの2画面ノートPC「ASUS Zenbook Duo」は、デスクトップPCとしても抜群の使い勝手だ
 そのため、どうしてもZenbook Duoと比較をしてX1 Foldを触ってしまいます。そうした目線からすると、ノートPCとして見た時のX1 Foldは使い回しにやや難があるように感じてしまいました。
 まず、通常のノートPCとして使おうとした場合です。サイズが小さいにもかかわらず重いのです。スペックシート上では本体が約1.26kgで、さらにキーボード(スタンド含む)が約627g、合わせると約1.88kgとなります。Zenbook Duoの場合、14型ディスプレイ2枚とキーボード(スタンドは本体側に付属)で約1.65kgなので、実はX1 Foldより軽いです。
 そしてキーボードの取り扱いも手間がかかります。前述した通り、キーボードは本体の中に収納できません。そのため、カバンから取り出し、ディスプレイを開いて、別途キーボードを取り出して画面に乗せる、といった手間が必要になります。12型サイズなので取り回しに優れていそうと思いますが、キーボードの一手間が必要であるがゆえに、そうはいきません。
 また、屋外で使うときはプライバシーフィルターが欲しくなります。しかし、折りたたみということもあり、ズバりな製品が出るかは少し難しいところかもしれません……。
●唯一無二となるのは、大型タブレットとして使えること
 ノートPCとしての機動性をいったん捨てて考えると、見えてくるのが「大画面タブレット」としての存在です。これは非常に活用できると感じました。
 まず、そもそもこのサイズのタブレットデバイスはほぼありません。iPad Proの最大サイズは12.9型、Galaxy Tab S8 Ultraは14.6型です。X1 Foldはさらにその上をいく16.3型と、大きいディスプレイが大好きな私としては見逃せないポイントです。
 私はMicrosoftの「OneNote」のようなペン入力対応アプリを使って、アイデア出しや図のドラフトをよく書きます。そうした場合、大きな画面であればあるほど使い勝手が良くなるため、大画面デバイスをよく購入します。
 X1 Foldは最大級のサイズで、純正スタイラスペンも付属しており、もちろん反応も良好です。この点はかなり魅力を感じました。
●そして、画面をフルに活用したデスクトップ機として
 Zenbook Duoのレビューで紹介したのと同様に、デスクトップ機としての活用もオススメです。そして、Zenbook Duoよりも洗練していると感じました。1枚の画面なので非常にスッキリ見えます。もちろん、ケーブル1本で外付けディスプレイと接続、給電も可能です。ペンタブレットのような使い方もアリでしょう。
 性能面ではプロセッサがやや古いものの、実質的にはよほど高負荷をかける処理でなければ問題はないでしょう。なお、この状態でオンライン会議をする場合、カメラもほどよい高さで使えるため、角度的にも良い写りが期待できます。
●とにかく、非常に面白いデバイス
 デバイス自体は非常に意欲的で面白く、実用性も十分だと感じます。しかし、やはり一番のネックは価格でしょう。そして、価格からするとハードウェアの古さは否めません。また、高価格であるがゆえに、細かな点の完成度も求めたくなります。特にキーボードの取り扱いは気になるところです。
 それでも、紹介したような使い方は唯一無二のデバイスです。ぜひ一度、触ってみていただければと思います。

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