メルカリで詐欺に遭った話 不誠実な事務局の対応、ユーザーが「絶対にやってはいけない」こと
2025年4月27日(日)12時15分 ITmedia Mobile
今回、メルカリの詐欺被害に遭った商品
カメラレンズを購入したはずが、届いたのはプラスチック玩具(!)。被害額は20万円超えです。どういった経緯で詐欺に遭ったのか、どのような対応をしたかとともに、フリマアプリで同様の被害に合わない方法をお伝えします。
●相場より安い出品に目がくらんで購入
ある日、メルカリのレコメンド機能で欲しかったカメラレンズが出品されているのを見つけました。相場の10%ほど安く、丁寧に使われているような商品のようでした。直前に自分が値下げ依頼した商品を他の人に買われてしまったこともあり、急いで購入したのですが、これが間違いでした。
後から確認すると、出品者は本人確認前、評価0件、出品商品は高額なカメラレンズとダミーと思われる日用品の2点のみというかなり怪しいものでした。
出品画像をダウンロードし、Google画像検索もしくはGoogle Lensを利用することで同一画像を検索したところ、過去に楽天ラクマで写真も文面もほとんど同じ出品が見つかりました。
加えて、カメラレンズのような高額商品はシリアルナンバーが記載されており、そこを調査することによって該当商品が西新宿の某有名カメラ店で販売されたことがあること、現在eBayにてドイツにて販売されていることが分かりました。
出品者が手元に何もないにもかかわらず、他人の出品情報をコピーして出品していることになります。それにバレにくいように、他サイトからコピーするというずる賢さときた。これは非常に怪しい、ということで当日中にメルカリ事務局に経緯を説明の上、キャンセル依頼をしました。
●後手に回るメルカリ事務局対応
購入後すぐに対応をしたため、メルカリ事務局が問題を把握してキャンセル手続きをすれば解決だったのですが、不幸にも翌日夕方には出品者より商品が発送されたとの通知来てしまいました。
メルカリ事務局の確認があったのは2日後のお昼。明らかに対応が遅いです。事務局からの提案内容を要約しますと、
・既に商品が発送されてしまったためキャンセル手続きは不可能
・届いた商品を確認し、返品合意ができれば購入者による送料負担で返品
・返品合意がなければ取引を完了するように
とのことでした。
対応が遅い上に、取引トラブルがあったときのマニュアル通りの回答が届き驚きました。このような回答であればAIで十分であり、有人対応の意味がありません。
メルカリ事務局は電話対窓口が公式には案内されておらず、緊急対応窓口なども設定されていません。いくら急ぎの対応が必要でも、こちらからは何もできないのはもどかしいばかりです。
なお、以降メルカリ事務局からの対応は、違反行為とメルカリが認定した後も含めて、平均して中1日挟んだ2日後に返事が来る形でした。明確に対応が遅いです。
●柔軟な対応のヤマト運輸
さて、肝心の届く商品ですが、メルカリの取引画面を見るとネコポス便で届くようです。ネコポス便とは厚さ3センチ以内の商品の郵送であればポストに投函(とうかん)する形で届けることで送料を抑えることができるヤマト運輸のサービスです。
今回購入した「はず」の商品はカメラレンズです。厚さ3センチに収まるわけがありません。その上、ネコポス便の責任限度額、つまり破損時の補償額上限は3000円で、20万円のカメラレンズで使っていい郵送手段ではありません。
「確実に商品は届かない」と確信したため、私は郵送を担当するヤマト運輸に事情を説明した上で商品を営業所止めに設定、商品の開封に立ち会いすることと動画を撮影する許可をいただきました。
そして商品が届いた当日、ヤマト運輸の営業所にて商品を開封します。
封筒の時点で確実にカメラレンズではないと分かっています。何が入っているのか逆に楽しみでしたが、開けてみると、なんと安っぽいプラスチック製のブレスレットが入っているではありませんか!
立ち会いのヤマト運輸のスタッフたちも「えぇー!」と声を上げていました。いわく、長年勤めているがこんなことは初めてだそうです。
その場で立ち会い者の名前と、メルカリ事務局から調査依頼があった場合の協力依頼を確認し、解散としました。なお、撮影した写真や動画はメルカリ事務局以外への公開禁止と言われているため、当時の様子の写真、動画の共有は控えさせていただきます。
●質問に答えずとぼけ続ける出品者
フリマアプリにおける取引は、基本的にユーザー同士の取引で、事務局はその取引の場を提供しているにすぎないため、トラブルもユーザー同士での解決が求められます。
ゆえに、私は違う商品が届いたため返品対応を求めるとともに、後の調査にて出品者の証言となりうるよう、以下の質問を投げてみました。
・確実に画像通りの商品を発送したか
・ネコポスで発送したのは確かか
・ネコポスではないならどのように梱包して発送したか
・同一シリアルナンバーの商品がeBayにて出品されているがご存じか
メルカリでは24時間以上連絡がない場合返品申請ができるのですが、それを交わすように24時間たつ直前に返事が来ました。いわく、
・調査をするので何が届いたか教えてください
・おっしゃる通りネコポスで届くわけがない
とのこと。自身にとって不都合な部分や、矛盾となる回答は全くありませんでした。その後、質問に答えるよう何度か依頼をするものの、その都度調査する、という定型文が来るだけです。
返事の文面は非常に丁寧でしたが、私の文面を繰り返しているところが多く見受けられ、AIを使って返答をしているのだと推測されます。また、この頃を皮切りに類似する高額出品が大量に続いており、仮に商品情報のコピーから出品、その後の対応含めてAIを使ってやっているとすれば非常に厄介であるといえ、将来的に詐欺と見抜くのもより難しくなるのだろうと思います。
なお、余談ですがその後に
・どうして詐欺をしたのか
・類似される出品はあなたによるものか
・本人確認の義務化直前に急いで詐欺をしようと思ったのか
・生成AIの活用はしているか
といったことを聞いてみましたが、それ以降返事はありませんでした。
●1週間たって商品を回収 「取引の完了」はやってはいけない
出品者と並行してメルカリ事務局に事の経緯と対応を依頼します。メルカリ事務局の対応は以下の流れでした。
・まずは出品者と連絡が24時間以上取れない状況になってから再度問い合わせてください
・順次案内するのでお待ちください
・正しい商品が届いているか、同居人が受け取っていないか、受取者の住所名前電話番号の確認
そして事件から約1週間経過したのち、届いた商品をメルカリ事務局が回収し調査するということとなりました。当時のヤマト運輸の担当者が商品の回収に来て、引き渡して事務局の連絡待ちとなります。
なお、ここまでトラブル対応の流れの一例として私の事例を紹介しましたが、出品者への対応で一番やってはいけないのが「取引の完了」です。場合によっては出品者から評価をするよう依頼が来ますが、メルカリでは評価をすると取引完了となり、出品者に売上金が入金される仕組みです。一度評価してしまうと出品者が売上金を回収してそのままアカウントを捨てていなくなってしまうため、トラブルになった際は絶対に評価をしてはいけません。
●すぐに警察に相談し、捜査への協力をする
今までのメルカリ事務局の対応に不信感を抱いているため、商品が届いたその日のうちに警察へ相談しました。
警察署では被害の相談をするため、本人確認書類、届いた商品の現物、取引画面を用意して訪問します。加えて、スムーズな対応のために事前に電話を入れておくとよいです。
警察との1時間以上の事情徴収で聞けた話は以下の通りです。
Q1 被害届の提出は可能か
A1 今回の場合は不可能。被害届は被害を受けた後に提出するものであるため、銀行振込をした・電子マネー残高で払ったなど資産的な被害が出た場合にしか出せない。今回はクレジットカード払いなので資産の引き落としは翌月以降になるため、被害届の提出は現時点では不可能
Q2 捜査はしていただけないということか
A2 被害届はなくても捜査は可能。証拠として届いた商品と取引画面を記録させてもらい、しかるべきき対応を進める
特に今回は発送元のコンビニと発送時間が記録されていたため、すぐに当該コンビニの防犯カメラ映像を差し押さえることで誰がやったかの特定は可能かもしれないため、すぐに動くとのことでした。なお、コンビニの防犯カメラは平均1週間で削除されるため、出品者を特定したいのなら、とにかく早く動くことが大事です。
なお、発送元の住所は明らかに発送コンビニと違う場所にあったため偽住所、そして名前の偽名だと推測されるためそこからの捜査は難しそうです。
Q3 同様の被害にあったときの対処法は
A3 とにかく変だと思ったらすぐに相談に来てほしい。するべき対策や今後どうすればいいかの相談に乗ることが可能だし、それこそがわれわれの仕事である。対応する部署は生活安全課だが、警察署が遠いときは最寄りの交番や警察署への電話でも対応できる
私の場合、まず最寄りの交番で相談したものの、拾得物対応しかしていないと門前払いされましたが、本来は交番でも対応可能とのことでした。一番は警察署に電話し、時間があるときに直接担当者に相談するのがベストで、取引完了をしない、出品者への対応方法などアドバイスがいただけます。
Q4 類似の相談は多いか
A4 オンラインショッピングのトラブルは増加傾向。トラブルに合わないのが一番大事だが、万が一トラブルになったら遠慮なく相談に来てほしい
総じて、とても丁寧に対応していただけました。特に悪意のある出品者に対する捜査が可能であることに驚きました。捜査に協力できるように、取引の状況を整理して伝えた上で、証拠となる商品の保全をするのが肝要です。
●メディアに露出後にようやく返金 相手が捨てアカだと八方ふさがり
事件が起きてちょうど1カ月がたった頃、メルカリの詐欺が再度SNSで話題になり始めた頃に私もX上で経緯を紹介することにしました。
それをきっかけに、テレビで私の事例を紹介していただくことになり、その放映数日後、ようやくメルカリ事務局より返金対応をしていただけました。事務局とは1週おきにチャットで状況の問い合わせをしており、メルカリ事務局からの回答は、以下の通りでした。
・2週目:配送会社に調査中
・3週目:出品者の対応待ち、個人情報保護のため出品者との競技内容は非公開
・4週目:出品者の禁止行為が確認されたため出品者に返品・キャンセルしてもらうよう依頼中
・5週目:SNS上でメルカリ詐欺が話題に、筆者テレビに出演
・6週目:メルカリ事務局より返金対応をされる
メルカリはとにかく個人間取引であるため、出品者の対応が必要という立場を堅持しています。今回の出品者は捨てアカウントを使用しているため、対応を拒否しているのだと推測され、八方ふさがりの状況でした。
しかし、メディアで詐欺のことが話題になると急に態度を軟化、出品者の同意なしで返金対応していただくこととなりました。
このようなトラブルが起きたのは、ひとえにメルカリの本人確認に穴があるためです。いくらでもアカウントを作って出品でき、ノーリスクで詐欺ができる状態であるため、AIを使った大量の詐欺出品ができる状態でした。
幸いなことに、今回トラブルが起きたメルカリでは、3月19日より高額商品の販売に本人確認が必要になりました。私はその直前の駆け込み詐欺に引っ掛かってしまったわけではありますが、近頃、本人確認済みアカウントによる同様の販売詐欺も多く見受けられるようになり、SNSでも「果汁グミが入っていた」などと話題に挙がりました。本人確認がなされているから、評価が高いから安全、とは限らないことには引き続き要注意です。
一概に本人確認がなされているから、評価が高いから安全、というわけでもないことには引き続き要注意です。なお、本来トラブルが解決してから筆を執るべきでしたが、急ぎ記事を公開したのもひとえに皆さまへの注意喚起のためです。
●詐欺に遭わないためにすべきこと 相場より安い商品には注意!
以上が、私の身に起きた事件でした。フリマアプリでの詐欺に遭ったときの対策として、私の例を紹介することで皆さまの参考になれば幸いです。
フリマアプリで商品詐欺に遭ったときは、すぐに事務局や警察、場合によっては消費者庁などへ相談し適切な対応を取るよう相談するのが最善手です。その際、メルカリは事務局対応が遅いため行政に頼ることがおすすめです。また、評価など取引完了につながる行為は絶対にしてはいけません。
とはいえ、まずは詐欺に遭わないこが大事です。極端に相場より安い商品には特に注意が必要で、その際は以下の点を確認しておきましょう。
1. 出品者が本人確認をしているか
2. 出品者の評価は高いか
3. 出品者の過去の出品商品との食い違いはないか
4. 商品写真は本物か
5. コメントで他の写真を載せる依頼をし、それに対応していただけるか
安いからと目がくらんで他の人に買われないようにすぐに飛びつく、というのは一番危険な行為です。反省。
●メルカリはプラットフォーマーとしての責任を果たすべき
メルカリに対してはともかく対応が遅い、有効な対応ができていないことを課題提起したいです。早期発見できたとしても対応が遅いようでは意味がないので、緊急性の高い要件の窓口の設定が必要だと思います。
詐欺師側もAIを利用するような予測ができる今、プラットフォームとして同様にAIでトラブルの検知と緊急性の優先順位付けや、規約違反商品だけでなく詐欺・リスク商品のパトロールなどにも注力する必要があるでしょう。
そういった安全対策ができないようであれば、われわれユーザーは10%もの手数料を何のために払っているのでしょうか? 今回のように詐欺商品をレコメンドに出すようでは、今後安心して使えませんし、メディアで話題になってからようやく対応を進める姿勢はいささか不誠実に感じます。
加えて、安全の取り組みには捜査機関・公的機関との連携と書かれていますが、私の場合、3週間時点で警察から電話で連絡があり、進展を聞かれています。本当に捜査機関と連携しているのか疑問符がつきます。
本来、SNSなどを用いて社会的圧力による救済を求めるのは、企業の調査や警察の捜査の妨害になる可能性があり、避けるべきでしょう。しかし、企業の対応が後手に回っている現状を踏まえると、そのような潮流が目立つようになるのは仕方のないことなのかもしれません。
特にメルカリの場合、購入者が返品を利用した商品のスワッピング詐欺(購入者が意図的に不具合を主張して返品を要求し、異なる商品を返品して商品をだまし取る詐欺)で泣き寝入りになった事件がSNSで炎上したことを受けて、初めて事務局対応となったことが記憶に新しいです。
トラブルが起きたらまずSNSで炎上させるのが最善手となるような世の中にならないように、企業は営利を追求するだけでなく、お客さまの資産と商品を取り扱うプラットフォーマーとしての責任を果たすべきだと強く思います。