楽天モバイルは単月黒字化目前に ローミング+プラチナバンドで通信品質向上にも尽力

2024年5月14日(火)23時45分 ITmedia Mobile

楽天グループの連結売り上げ収益。第1四半期としては過去最高となる売り上げを達成

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 楽天グループは2024年12月期第1四半期決算を発表した。売上高を示す連結売り上げ収益は前年同期比8%増の5136億2400万円、連結営業利益は332億7200万円の損失で赤字が継続した。Non-GAAP営業利益は254億4900万円の赤字だが、前年同期比で435億円の改善となった。
 売り上げは第1四半期としては過去最高を記録してグループ全体では好調。懸案の楽天モバイルも増収と損失改善が続いていて「黒字化目前」だと三木谷浩史会長はアピールする。
●国内EC、フィンテックは順調 楽天ペイメントは初の黒字化
 売り上げ収益に貢献したのは好調な楽天市場、楽天トラベルを中心とした国内EC事業で、海外事業も順調に推移した。フィンテック事業も銀行、証券などが順調に推移して全事業でプラス成長。特に楽天ペイメントはNon-GAAP営業利益で四半期での黒字化を達成した。楽天モバイルも増収とコスト最適化によって損失が改善し、Non-GAAP営業利益の改善に貢献した。結果として連結EBITDA(税引前利益に支払利息、減価償却費を加えて算出される利益)は528億円の黒字となり、前年同期比493億円のプラスだった。
 セグメント別では、インターネットサービスがSPU(スーパーポイントアッププログラム)を改定した影響や、前年の全国旅行支援などの反動で国内EC事業の売り上げ収益の成長率は鈍化。それでも同5.4%増の2857億円を確保。さらにNon-GAAP営業利益は14.8%増の136億円となった。
 ただし三木谷会長は、「かなりマイノリティの投資事業などもあり、それがなければ63.3%の伸び」だと順調な進捗をアピールする。
 国内EC事業は、流通総額が同4.7%減の1.3兆円となったが、前述の全国旅行支援の反動などは想定の範囲内としており、主力の楽天市場自体は堅調。こうした一過性の要因がなければ、国内ECのNon-GAAP営業利益は約20%増になっていたと三木谷会長は分析する。
 その他、インバウンドが好調な楽天トラベルは同243%増と大幅な成長だった。広告事業やRakuten TV、Rakuten Kobo、Rakuten Viberなどの海外事業も順調に拡大した。
 SPU改定などが流通総額にも影響したが、これまでは「利益貢献マイナスのユーザーがそれなりにいた」(三木谷会長)のに対して、楽天モバイルへの加入など楽天サービスの利用が増えたことで利益貢献のユーザーが増加した。
 フィンテックセグメントでは、収益は同15.1%増の1935億円、Non-GAAP営業利益は同47.4%増の393億円。全事業で増収を達成したことに加え、楽天ペイメントが営業黒字化したことが貢献した。
 楽天カードはショッピング取扱高が5.6兆円に達して同12.5%の増加。営業利益率も19.2%まで上昇し、売り上げ収益は同6.9%増の800億円、Non-GAAP営業利益は同22.7%増の153億円となった。
 楽天証券は、懸念されていた国内株取引手数料無料化でも口座数と取引ボリュームの拡大、新NISAのスタートで売り上げ貢献。口座数は同22.1%増の1091万口座、NISA口座数は同32.6%増の520万口座となり、新NISA口座数では首位となったという。売り上げ収益は同25.9%増の313億円、Non-GAAP営業利益は同20.9%増の74億円だった。
 楽天銀行は、売り上げ収益が同18.4%増の356億円、Non-GAAP営業利益が同29.9%増の139億円。口座数1520万回線まで拡大するなど順調で、預金残高も10.5兆円まで達した。JR東日本に提供するBaaSサービスも「大変好調に推移している」(同)ということで、次の四半期以降で貢献しそうだ。
 初の四半期営業黒字化となった楽天ペイメントは、2022年から実行してきた加盟店・利用者拡大強化策が奏功したと分析。楽天ペイアプリのダウンロード数が60%の伸びを示して利用が拡大していることが黒字化につながった。
 日本のキャッシュレス決済比率は39.3%に達して、「最終的には欧米並みの70〜80%まで伸びる」と三木谷会長。楽天ペイメントの事業もその伸び率に合わせて拡大すると期待する。
 楽天はクレジットカード、楽天銀行のデビットカード、QRコード決済の楽天ペイ、楽天ポイント、楽天Edy、楽天キャッシュと幅広い決済手段を対応。「世界的に見てもこれだけの支払手段をそろえているフィンテック企業はない」と三木谷会長は話す。加えて、総取扱高は30兆円を超えていることから、今後も日本のキャッシュレス決済をリードして、ビジネスを拡大していきたい考え。
 2024年には、楽天ペイ、楽天ポイント、楽天Edyのアプリを完全統合し、楽天カードや他のフィンテック事業との連携を進める。これによって楽天カードや楽天ペイからロイヤリティーの高い楽天銀行、楽天証券、保険サービスへと利用をつなげて収益性をさらに高めていく。
●楽天モバイルのEBITDA単月黒字化が目前に 回線は680万を突破
 モバイルセグメントは、売り上げ収益は同3.6%増の998億円まで拡大。Non-GAAP営業利益は719億円の損失だが同307億円の改善。EBITDAは297億円の赤字で337億円の改善となった。
 楽天モバイル単体だと売り上げ収益は同7.1%増の620億円、Non-GAAP営業利益は259億円の改善となる660億円の損失。EBITDAは260億円の損失だが、成長投資となる顧客獲得費用や楽天グループに対する利益の押し上げ効果を算定すると40億円の損失という計算になり、「EBITDA黒字化は目前」だと三木谷会長は話す。
 MNOサービスの売り上げは同36.3%増の361億6100万円で、MNO契約数は648万(5月13日時点で680万)、調整後MNO解約率は1.27%、MNO ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は2024円となった。
 楽天モバイルの目標は、契約回線が800〜1000万、ARPUが2500〜3000円で、これにMVNEやBCP用途などの収益をプラスして、月次の営業費用を230〜250億円に抑えることでEBITDA単月黒字化を目指す。
 こうした目標に対して、まずはKDDIとの新ローミング契約を含めて人口カバー率が99.9%に達してネットワークの改善が進んで、契約者の77.8%が改善を実感しているといった指標から通信品質の向上が顧客獲得につながっていると分析する。
 さらに保有する5G Sub-6(3.7GHz帯)における衛星通信との干渉調整条件が緩和され、電波出力が上げられるようになったことで、関東地方のエリアが2024年内に最大1.6倍まで拡大。既に東海地方では約1.7倍、近畿地方では約1.1倍の拡大で、さらなるエリア拡大が期待できる。
 加えて、新たに700MHz帯の新バンドが6月にも商用化される見込みで、これによってさらなるエリア拡大が図れるという。「3MHz幅という限られた帯域なので、(キャパシティーよりも)どちらかといえばカバレッジを増やす」(同)。
 カバレッジの拡大では、地下鉄や屋内での自社ネットワークのつながりやすさを改善していく。2026年内には、衛星通信のSpaceMobileのサービスを開始し、「面積カバー率100%」を実現したい考え。これが実現すれば「富士山の火口でも津軽海峡でもどこでも電波が入る」(同)という。
 こうした取り組みも奏功して顧客の純増数は右肩上がりで拡大。楽天カードとのキャンペーンや最強家族プログラムなどによって顧客獲得が進んだ。
●楽天モバイルユーザーが楽天エコシステムの収益拡大に貢献
 楽天モバイル契約者は、楽天市場での買い物が増えるなど楽天サービスの利用が多くなるため、楽天エコシステムの収益押し上げに貢献している。これをARPU押し上げ額として、1055円のプラス効果がある、というのが同社の分析。2024年3月他月では、MNO ARPUが2024円、押し上げ額が1044円となり、トータルで3068円のARPUとなって、2022年第1四半期の1545円からほぼ倍増した。
 2024年第1四半期におけるグループ全体に対する利益の押し上げ額としては98億円の効果があるとみられており、楽天モバイル単体ではなく、グループ全体に対する高い効果が得られているというのが三木谷会長の考え。
 ARPU向上に向けて、さらなるデータ利用の拡大を目指すとともに、Rakuten Link内の広告にも注力して利益の拡大を図る。法人向けにも、グループ内だけでなく提携企業のサービスと組み合わせたDX化の取り組みも加えて収益の向上を目指す。

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