新しい「iPad Pro」と「iPad Air」どちらを選ぶ? 実機を試用して分かった“違い” 一新されたMagic KeyboardやApple Pencil Proも試す

2024年5月14日(火)6時5分 ITmedia Mobile

M4を搭載した13型のiPad Pro(左)と、M2搭載のiPad Air(右)を一足先に使ってみた

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 2023年は新製品の投入を“お休み”していたiPadだが、蓄積したパワーを一気に放出するかのように、そのラインアップを大きく変えた。iPad Proは、「M3」を飛ばして「M4」をプロセッサに採用。iPadとして初めてディスプレイが有機ELになっただけでなく、2枚のパネルを重ね合わせたタンデムOLEDで十分な輝度を確保している。有機ELは薄型化、軽量化にも貢献しており、結果として13型のiPad Proは100g以上、その重量をそぎ落としている。
 さらに、Appleはこのモデルに合わせてApple PencilやMagic Keyboardも刷新した。新登場のApple Pencil Proは、同時に発売になるiPad Airでも利用できる。iPad Airは、プロセッサに2022年発売のiPad Proと同じ「M2」を採用。大画面版として13型モデルも加わっている。
 まるでiPhoneのようなラインアップになったiPadだが、2022年以来のフルモデルチェンジとあって注目を集めている。そんな新しいiPad Pro(13型)、iPad Air(11型)を、非常に短い期間ながら試用することができた。ここでは、そのレビューをお届けしよう。
●薄く、軽くなったiPad Pro
 レビューのために触れたiPad Proは13型だったが、このモデルを手に取ったユーザーがまず驚かされるのはその薄さや重さだろう。公式スペックは厚さが5.1mm、重さがWi-Fiモデルで579g。22年発売の12.9型iPad Pro(第6世代)は、それぞれ6.4mm、682g。厚みが1.3mm、重量が103g削減された形になる。見た目がシャープになっているのはそのため。特にMagic Keyboardに装着した際には、厚ぼったさが目立たなくなり、よりPCらしいたたずまいになった。
 実際、手に取るとその違いは一目瞭然だ。103gというとピンとこない数値かもしれないが、その割合は前モデルの総重量の15%以上。特にミニLEDを採用してきた12.9型版のiPad Proは、そのデバイス特性ゆえにズッシリとした重みがあった。有機ELの採用により、これが解消されている。さすがに11型版のiPad ProやiPad Airより重量はあるが、13型の広いボディーに重さが分散しているためか、持ったときの軽いという印象はそれ以上に感じやすい。
 その有機ELは、コントラスト比が200万対1と非常に高く、色鮮やか。自発光のため、黒は、これまでのどのiPadと比べてもキュッと締まって見える。黒い背景だと、画面の表示がベゼルに溶け込んでしまうかのよう。これによって、シチュエーションによっては、あたかも映像だけが浮かんでいるかのように見えてくる。没入感の高さは抜群に高い。13型版は、その明るいディスプレイが大迫力で迫ってくる。
 このディスプレイを動作させるには、M4に組み込まれたエンジンが必須だったという。AppleがM3を飛ばし、M4にジャンプアップしたのはこうしたカスタマイズを加えるため。そのアプローチは、ダイナミックアイランドなどに対応するため、「iPhone 14」のとき、Proモデルに特化した「A16 Bionic」を開発したのに近い。こうした開発手法が取れるのは、プロセッサから端末、さらにはその上のOSまでを一貫して手掛けているAppleならではといえそうだ。
 飛躍的とまではいえないが、CPU、GPU、NPUなどの性能も、着実に向上している。以下はM4を搭載したiPad Proと、M2搭載のiPad Airを比較したもの。「Geekbench 6」で、CPUとGPUのスコアをそれぞれ取っている。iPad ProはCPUのシングルコアが3658、マルチコアが14557。GPUは53805だ。これに対し、iPad Airはそれぞれ2595、10066、41848。iPad AirのM2も決して低い数値ではなく、むしろパフォーマンスは高い方だが、M4はそれをも上回っている。
 このレベルになると、当然ながら「Photoshop」や「Lightroom」といったアプリはサクサク動くし、動画編集もこなせる余裕がある。Mac譲りのパワーを持っているのは、過去のiPad Proと同じ。ただ、この力、特にNPUを活用した標準アプリがまだまだ少ないような気がする。iPadOS 17では、オーディオメッセージの書き起こしや、FaceTimeのジェスチャーリアクションといった、それらしい機能が増えているが、まだまだ断片的。この点は、6月に開催されるWWDCに残しておいた余白といえそうで期待感が高まる。
●Magic Keyboardも一新、高級感は大幅アップ
 iPad Proは、Magic Keyboardも一新した。既存のものとは互換性がなくなっており、これまでiPad ProやiPad Airを使っていたユーザーも買い替えの必要が生じる。後述するApple Pencil Proも含めてアクセサリーまで全とっかえしなければならないのは、価格はもちろん、エコの観点でも疑問が残るところだが、あえてそれをしただけに完成度は高い。
 キーのストロークはこれまでのMagic Keyboardに近く、やや浅めながらしっかり入力した感触を得られる。サクサクと文章を打っていくには、このぐらいの深さがちょうどいいと感じるのは、筆者だけではないはずだ。また、最上段にファンクションキーが加わり、iPad Proをダイレクトに操作しやすくなった。単に機能性が増しただけでなく、角度をつけたときにキーの上部に画面がかかることが少なくなった。
 これまでのMagic Keyboardは、全体が樹脂素材で高級感に欠けていたところがあったが、それもキーボード側がアルミ素材になることで改善された。また、見た目やたたずまいだけでなく、耐久性の向上にも期待できる。樹脂はディスプレイを保護しやすい反面、手のひらとの摩擦で汚れが付きやすかったり、破れてしまいやすかったりする。筆者が使い続けてきたMagic Keyboardがまさにそう。その点、新しいMagic Keyboardであれば、より長い期間、クリーンでミニマルな印象が損なわれるおそれが少ないと言えそうだ。
 一方で、このMagic Keyboard、本体とカバーが一体となっているだけに、そこそこ重さがある。初代iPad用Magic Keyboard発売時から、なぜかAppleはかたくなに重量を公開してこなかったが、今回もそれは踏襲されてしまった。重さは購入にあたり、非常に重要な情報。本体を軽量化したのであれば、なおさらのこと。こうした情報公開の仕方には、改善を期待したい。
 ということで、実際にMagic Keyboardを量ってみたところ、その重さは660g強であることが分かった。12.9型用の旧Magic Keyboardは700gほどといわれているため、本体だけでなく、キーボードも軽くなっている格好だ。本体と合算したときの重量は、約1.24kg。キーボードを装着したまま、PCのように持ち運ぶときには、さらに軽くなったといえる。
●スクイーズやバレルロールに対応し、使い勝手が増したApple Pencil
 M4搭載iPad Proや、M2搭載iPad Airには、Apple Pencilを充電するためのポートが搭載されているが、これはApple Pencil Pro専用のもの。既存のApple Pencil(第2世代)は、非対応だ。これは、充電の仕様が薄型のiPad Proに合わせて変わったためで、後方互換性はないという。試しに第2世代のApple PencilをiPad Proに設置してみたが、ペアリングはできなかった。
 なお、充電をケーブルで行うApple Pencil(USB-C)はそのままiPad ProやiPad Airで利用できる。登場時には、「なぜこのアイテムが今出たの? 意義は? 買う人いる?」といった形で疑問が噴出した製品だったが、まさかワイヤレス充電の仕様が変わる布石だったとは……。とはいえ、ここまでボロカスに言われていたApple Pencil(USB-C)を持っている人は、非常に少ないはずだ。筆者も持っていない。
 そのため、ほとんどの人はApple Pencil Proへの買い直しが必要になる。その分、新機能がしっかり入っていて使いやすい。同モデルから握ってメニューを表示する「スクイーズ」に対応した他、ペンにはジャイロセンサーを搭載しており、回転も認識する。これによって、筆をキャンバスに押し当て、ぐるっと回して円を描くことも可能になった。
 特に筆者は、スクイーズが便利だと感じた。アプリがどのように実装するか次第にはなってしまうものの、ギュッと握るだけでツールのメニューが表示されることが多く、ペンの移動距離を最小限に抑えられる。例えば、文字の校正をしていたとき、ペンの色を変えるために画面の上までペンを移動させてから戻るといった経験はないだろうか。筆者にはある。
 そのため、第2世代のApple Pencilでは、ダブルタップでペンと消しゴムを切り替える機能は頻繁に利用していた。これによって移動距離が最小限になり、思考が中断されづらくなる。ただし、ダブルタップで切り替えられるのはペンと消しゴムといった2つのツールに限定される。スクイーズであれば、ギュッと握ることでより豊富な選択肢のメニューが表示される。これは便利だ。
 幸いなことに筆者はこれまでApple Pencilを紛失したことはないが、本体に装着する際のマグネットの力は弱く、少し力がかかっただけで取れてしまう。持ち運びの際に、どこかに落としてしまったという人は少なくないだろう。この問題を解決するため、Apple Pencil Proは「探す」に対応している。スタイラスとしては高額な部類に入るだけに、うれしい新機能といえる。
●M2搭載iPad Proを踏襲しつつ、コストダウンを図ったiPad Air
 先に紹介したiPad Proだけでなく、M2搭載のiPad Airでも、これらの機能は漏らさず利用できる。Airといってもその名の通り、プロセッサには2022年に発売されたiPad Proと同じM2が搭載されており、処理能力は十二分に高い。Apple Pencil Proを使いたい、ハイエンドタブレットが欲しい、大画面で映像を見たいといったニーズであれば、より価格がこなれたiPad Airがオススメできる。
 ただし、iPad Proと比べると、ProMotionに非対応な点には注意が必要だ。リフレッシュレートが低いことは、文章作成や写真の処理などをしているだけだと感じづらいが、スクロールを高速にしようとするとその差が分かりやすい。特に、アプリ一覧を表示する際のエフェクトは、120HzのPro Motionに最適化されている気がする。逆にいえば、iPad Airだと、ややカクツキが目につく。
 また、よしあしとは別に、生体認証の仕組みが異なる。どちらもこれまでと同じで、iPad ProはFace ID、iPad AirはTouch IDだ。個人的にはキーボード装着時にそのまま顔が認証され、使い始められるFace IDの方が好みだが、端末と顔に一定の距離が必要になる。タブレット単体で使う際には、Touch IDの方が直感的といえるかもしれない。認証は速く、トップボタンはiPad Proよりも大きいため指を当てやすい。
 ただし、インカメラ自体はiPad Proと同様、ベゼルの長辺側に移っている。そのため、本体を横向きにした際に、自分の映像が中央に来やすい。カメラの場所を自然に意識できるようになり、FaceTimeやビデオ会議などはこちらの方が断然しやすい。iPad Proと比べると、マイクやUSB Type-Cの仕様、マイクなど、細かく細かくコストダウンを図っているが、これで十分な人も多いはずだ。
 確かにiPad Proのディスプレイは魅力的で、映像美を堪能できる。薄くて軽いボディーも、スタイリッシュだ。一方で、その価格はWi-Fi版で16万8800円(税込み、以下同)から。13型モデルだと、21万8800円にまで上がってしまう。タブレットに何を求めるかにもよるが、価格を見て「うっ……」と思うユーザーも少なくないだろう。逆に、9万8800円からのiPad Airは、バランスがいいタブレット。カラバリやストレージの選択肢の豊富さも相まって、売れ筋になりそうな予感がする。

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