じわり盛り上がる「ハーフサイズ」のフィルムカメラ、魅力と選び方

2024年5月22日(水)6時0分 マイナビニュース

若者を中心にフィルムカメラ人気が続くなか、「ハーフ」「ハーフサイズ」と呼ぶフォーマットのフィルムカメラが話題に上ることが増えました。巷では、コダック製のリーズナブルな価格のハーフサイズカメラが人気を博していますし、リコー(ペンタックス)はハーフサイズのコンパクトフィルムカメラをこの夏にリリースすると予告しています。今回は、ハーフサイズについて解説するとともに、現在中古で手に入れられる往年のハーフサイズカメラを紹介したいと思います。
35mm判にはない魅力を持つハーフサイズ
一般に、35mmフィルムのフォーマットサイズは36×24mmの大きさです(今回は「フルサイズ」と記載します)。ハーフサイズも同じ35mmフィルムを使用しますが、フォーマットの大きさはその半分、18×24mmとなります。
35mmフィルムは、フルサイズで撮影したときの撮影可能枚数がパッケージやパトローネ(フィルムが入る金属製の容器)に記載されていますが、ハーフサイズで撮影した場合、その2倍の枚数が撮影できます。24枚撮りフィルムなら48枚、36枚撮りなら72枚になります。以前に比べ、フィルムの価格はビックリするほど高騰していますので、ハーフサイズでの撮影なら経済的に撮影が楽しめます。前述のコダック製のハーフサイズカメラが人気なのも、リコーが新しく出そうとするカメラがハーフサイズなのも、ひとつにはその理由もありそうです。
基本的に、ハーフサイズのカメラをそのまま構えると、縦位置写真となります。縦位置写真の好きな人はよいのですが、横位置写真に慣れていると使いにくく感じるかもしれません。また、仕上がった写真が縦位置ばかりになることも。横位置の写真が撮りたいときは、積極的にカメラを縦位置に構えるよう心がけておくとよいでしょう。
ちなみに、京セラが1980年代後半にリリースしていたサムライシリーズのように、フィルムを横にして装填するカメラの場合、ハーフサイズながら通常の構えで横位置の写真が撮れるものもありました。
フォーマットサイズが小さいため、総じてカメラが軽量コンパクトなのもハーフサイズの特徴であり、魅力となっています。持ち運びしやすく、カメラバッグのちょっとしたスペースに収納でき、またそのサイズ感から注目されることも少なくありません。
さらに、フルサイズと比べたとき、同じ画角のレンズならば、ハーフサイズは実焦点距離が短く、深い被写界深度が得やすいのもメリットのひとつ。ピントを大きく外すことは少ないといえます。
その反面、大きなボケを得るのは難しく、ボケを生かした描写はどちらかといえば苦手です。そのため、ハーフサイズはパンフォーカスで撮ることの多いスナップ向きのフォーマットといえます。また、フォーマットがフルサイズの半分の大きさですので、フィルム特有のザラっとした粒状感が出やすいことも特徴。これについては好みの分かれるところですが、緻密な写りを求めるのであれば粒状感の出にくい低感度のフィルムを使い、粒状感を生かした写りが楽しみたければ高感度のフィルムを使用すると効果的です。
今手に入れられるハーフサイズカメラのおすすめは?
以上がハーフサイズのおもな特徴となります。ハーフサイズカメラの購入ついては、現在新品で手に入るのはコダックの「EKTAR H35N」(実売価格は10,890円前後)や、ロモグラフィの「Lomourette Half-frame Water Lilies Edition」(実売価格は10,880円前後)などがあります。プラスチック製でシンプルな構造のカメラがほとんどですが、その分価格はリーズナブルです。これからハーフサイズで撮影を楽しみたい人や、フィルム初心者の入門用として最適な1台といえます。
中古ならば、さまざまなハーフサイズカメラが手に入れられます。おもなメーカーとしては、オリンパス、リコー、キヤノン、富士フイルム、コニカ、ミノルタ、京セラ、ペトリなどがあります。
なかでも、オリンパスはハーフサイズカメラを1960年代に積極的に展開しており、現在中古カメラショップでも見かけることの多いメーカーです。バリエーションも豊富で、シンプルな「PEN EE」シリーズから、珍しいハーフサイズの一眼レフ「PEN F」シリーズなどがあります。
リコーは、ゼンマイによるフィルム巻き上げ機構を持つ「オートハーフ」シリーズを1960年代から1970年代まで展開しており、やはり中古カメラショップなどでよく見かけます。そのほかのメーカーのハーフサイズカメラも、お店を丹念に探せば比較的簡単に見つけられます。
中古のハーフサイズカメラの購入は、やはり中古カメラショップで直接購入するのがベスト。店員さんの話を聞ききながら実機を手に取って状態を確認できますし、初期のトラブルに対応してくれるところも少なくありません。もし近所に中古カメラショップがない時は、そのようなショップが運営する通信販売を利用するとよいでしょう。状態の確認や不安点は購入前に電話で質問できますし、店頭で購入したときと同様に初期トラブルに対応してくれます。カメラの状態が把握しづらく、補償が一切ないネットオークションやフリマサイトなどでの購入は、初心者に限らず控えたほうが賢明です。
繰り返しとなりますが、フィルムが経済的に使え、コンパクトで軽量なカメラの多いハーフサイズは、とても魅力的なフォーマットといえます。中古のハーフサイズカメラもまだまだ手に入れやすく、価格も比較的安価。手軽に撮影できる完全オートのカメラから、露出やピント合わせが楽しめるカメラも少なくありません。スマホやデジタルカメラのきれいすぎる写りに飽きた人や、とにかくフィルムでの撮影に挑戦してみたい人に、ハーフサイズのフォーマットは断然オススメ。フィルム写真への入り口として、気軽にトライしてみてほしいと思います。
著者 : 大浦タケシ おおうらたけし 宮崎県都城市生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、雑誌カメラマンやデザイン企画会社を経てフォトグラファーとして独立。以後、カメラ誌および一般紙、Web媒体を中心に多方面で活動を行う。日本写真家協会(JPS)会員。 この著者の記事一覧はこちら

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