エンタープライズIT新潮流 第35回 エンジニアのためのBlog作成の簡単アプローチ
2024年9月30日(月)13時0分 マイナビニュース
Blog執筆のすすめ
筆者はBlogについてはかなり大昔の2000年初頭にマイクロソフトに勤務していた時代から始めて、所属企業の中でもいろいろと書いてきました。マイクロソフト時代は月間10万アクセスくらいを誇っていました(自慢)。また、多くの企業でマーケティング責任者として、社員のBlog作成を促してきました。
グローバル企業を見ていると、ますますBlogが重要になってきています。というのは、ブランドが社外の会話で作られる時代、社外への会話とネタが必要になっており、そのためにはBlogが格好の手段であること、また、マーケティング活動の一部としてキャンペーンのランディングページでの使用や、SEO(Search Engine Optimization)対策でキーワードを埋め込むページとして重要になってきているからです。
筆者はこの連載のように書くことは好きなので、継続してBlogを書けます。しかし、普通の方にはBlog作成はなかなか厄介なことだと思います。多くの場合「Blogの作成は難しい」「Blogの作成が続かない」「Blogを作成する時間がない」などと言われます。筆者の経験上、なんとか最初のBlogを作り上げてもらっても、ほぼ続かないですね。筆者のアドバイスをしている企業でも同じ課題があり、今回の内容を思いついたのです。
構造化を意識して執筆する
多くの場合、BlogはWordの1ページ分くらいの文書になります。しかし、これをいきなりライティングしても、良いBlogにはならないですし、途中で行き詰まってしまいます。こつとしては、最初に全体の構造を作り、その後にセクションを作りこむことで細分化して、小さな作業を完結するようにもっていくのです。これを筆者は「構造化プログラミングのように」と言っています。
筆者は最初の仕事がSE・プログラマーだったのですが、そのときは構造化プログラミングが大事だと言われていました。構造化プログラミングとは、「順次」「反復」「分岐」という単純な制御構造を「手続き」という単位でまとめることで抽象化し、その手続きをさらにまとめてより抽象的な「手続き」を作る、といった階層構造によってプログラミングする方法です。これで品質の高いプログラムを作ることができます。Blogはこの中の「手続き」を順次進めるだけです。
この手続きの構造は、「PREP」を意識します。PREPとは、Point(ポイント)が最初にきて、そのReason(理由)とExample(例)を解説して、最後にまとめてとしてPoint(ポイント)で締める、という手法のことです。日本人が大好きな「起承転結」にはしないということです。ReasonとExampleは、設営のセクションです。
さらにBlogで大事なのは、PREPの前に魅力的な見出しと、2行で表現する全体が想像できるリード文をつくることです。これは、書籍『朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた 戦略的ビジネス文章術』(中央経済社 著者:野上英文)を読まれることをお勧めします。この書籍では「仮見出しでは一体何の話題かを明示している」「最も重要な話題に絞っている」「ぱっと見て話の筋が分かる短さにする」というルールを示しています。
また、リード文では読み手にとっての「メリット」、本文全体の方向性や全体感を表す「要約」、本文の索引としても働く「キーワード」としてリード文作成のヒントが提示されています。見出しは、多くのメディアの記事を見ると、時間的なことを入れると魅力が上がるようです。たとえば「3カ月で実現する」「1年で達成した」などです。
もちろん、どのようなBlogを執筆するかのテーマが読まれるBlogを作成するための肝になります。Blogの作者が言いたいことではなく、想定読者が聞きたいことをテーマにする必要があります。テーマとして業界のトレンドや業界の課題、規制、ビジネスに有効な差別化可能な機能などを検討してください。
構造化のための具体的手法
Blogの構造は、下図のような見出し・リード文から始まり、概要 / 結論が続き、それを説明する複数のセクションがあり、最後にまとめるという形になります。
そして、Blogの作成は、以下の順次で進めていくことになります。
1.テーマを決める
2.仮の概要 / 結論を作る
3.仮の見出しを決める
4.リード文を作成する
5.説明文の構造を決める
6.説明文の各セクションをライティングする
7.概要 / 結論を最終化する
8.見出しを最終化する
Blogの中では「6.説明文の各セクションをライティングする」が労力を使う部分です。でも、「5.構造を決める」のところにヒントがあります。そのヒントとは、数字で説明文をセクションに分割することです。これは見出しとも連動するのですが、以下のように、並列または直列で説明を分解するのです。ここが構造化プログラミングでの手続きになります。
•△ステップで理解する〇〇
•〇〇を実現する△つのポイント
•〇〇に対処する△つの方法
•〇〇である△つの理由
•〇〇を実現するための△つの課題
こうして構造さえ決まってしまえば、後はそれぞれのセクションの詳細を記載すればよいのです。Blogですから、それぞれのセクションではせいぜい3〜5行程度書けば済みます。この場合、△の数字は奇数がよいと言われており、Blogは3つくらいが妥当だと考えます。こうすることで、見出しも何が言いたいのかも、より具体的になりますよね。見出しにこのような数字を使わなくても、説明文の流れは構造を意識しましょう。そうすることでライティングが容易になり、読者も理解しやすくなります。
その他のヒントとしても、以下があります。
•一文に詰め込まない。"しかし"や"そして"で二文をつながない
•セクション間に空行を入れて、塊を明確にする。空行は目の休み場所になる
•難しい表現や言葉をなるべく使わない。専門用語はできるだけ解説する。親戚の叔父さんに説明するつもりで書く
•漢字とひらがなのバランスをとる。漢字が多すぎると見た目が固くなる
•複数の要素がある場合は、"以下"で説明するとして、箇条書きにする
また、構造を意識して作るためには、Microsoft Wordの「アウトライン」を使うと効果です。PowerPointように全体の構造から文書を簡単に作ることができます。Wordのメニューの「表示」から選択します。
以上のように、作成前に構造をしっかり作り上げ、作業を細分化して、それぞれを仕上げていくことで、良いBlogを比較的簡単に作成できます。ぜひトライしてみてください。
北川裕康 キタガワヒロヤス 35年以上にわたりB to BのITビジネスに関わり、マイクロソフト、シスコシステムズ、SAS Institute、Workday、Infor、IFS などのグローバル企業で、マーケティング、戦略&オペレーションなどで執行役員などを歴任。現在は、独立して経営・マーケティングのコンサルティングサービスを提供しながら、AI insideの Chief Product Officer(CPO)を担当。大学は計算機科学を専攻して、富士通とDECにおいてソフトウェア技術者の経験もあり、ITにも精通している。前データサイエンティスト協会理事。マーケティング、テクノロジー、ビジネス戦略、人材育成に興味をもち、学習して、仕事で実践。書くことが1つの趣味で、連載や寄稿多数あり。 この著者の記事一覧はこちら