MX ERGO Sレビュー - ロジクール定番トラックボールマウスが静音&USB-Cで魅力アップ

2024年11月25日(月)6時0分 マイナビニュース


●優れた親指トラックボールが静音モデルチェンジ
ロジクールはトラックボール製品の上位機種「MX ERGO」の新モデルを9月24日に発売しました(MXシリーズではない通常のトラックボールマウス新製品「M575SP」は2024年9月19日に発売)。
前モデルとなるMX ERGOのレビュー記事で筆者は、「6年後にモデルチェンジするか?」と書きました。その答えが今回の新製品。MX ERGOシリーズとしては実に(6年を超え)7年ぶりのモデルチェンジとなりました。なおトラックボール製品としては2020年に、M575SPの前モデル「M575」が10年ぶりにモデルチェンジしています。
あまりにも気になったので今回MX ERGO Sの実機をお借りし、じっくり2カ月試してみました。
ちなみに愛用していた前モデル「MX ERGO」はスイッチ不良を起こしてしまい(参考記事)、次いで購入した2台目も現在かなり劣化が進んでいます(こちらは外装の表面が劣化してえぐれ、ベースまで見えています)。
スイッチ不良の1台目は、スイッチの接点洗浄で復活したので、お出かけ環境で使う予備機になっていますが、今のところなんとか動作中。外側がかなり劣化しているものの、5年以上酷使しても十分毎日の利用に耐えています。電池持ちがよいこともあり電池の劣化も感じず、長く使えるいい製品だと思います。
さて、筆者のロジクールトラックボールとの付き合いは大変長く、親指でボールを動かすタイプは「Cordless TrackMan Wheel」(ST-64UPi)が最初。この製品もコードレスですが、当時は27MhzのRF帯を使っていたため、スチールデスクでは電波が飛びにくくなるという難点を抱えていました。
そこで有線トラックボールの「TrackMan Wheel」(ST-65UPi)に乗り換えたのが2002年。2010年には2.4Ghz帯のUnifyingを使用し、さらにボールの移動検知方法を大きく変えた「M570」が登場。その後「MX ERGO」が、同社のトラックボール初の最上位サブブランドのMXの名称とエルゴノミクス性を引っ提げて2017年に現れました。
通常モデルのM575もエルゴノミクス性を加え、さらにカラバリを増やし2020年に登場。……その全てを使ってきた、というのがこれまでのザッとした歴史です。
○トラックボールの利点とMX ERGOのよいところ
親指トラックボールの良さは省スペースで場所を選ばないところです。マウスの場合、パソコンの右(左利きの人は左)にある程度の移動スペースが必要。また例えばテーブルクロスの上やガラステーブルの上では動作しにくいマウスも多いです。
もちろんトラックボールも置く場所が必要ですが、マウスと違って移動しなくてよいので必要スペースは少なく、場合によってはキーボードのパームレストの上やひざの上でもよいのです。狭いスペースの機内や新幹線の中で作業するならマウスよりも絶対にトラックボールでしょう。
中でもMX ERGOシリーズの良さは主に2点。1つは新モデルに乗り換えても気にならないデザインで、右手にすっぽり収まったポジションで親指が自然とボールにかかり、人差し指と中指がマウスクリックに収まる構造は変わりません。
2つ目はMXシリーズゆえの高級感と先進性。黒基調のボディに加えて、手に収まる部分はラバーコートが滑り止めになっており、さらに20度傾けるという構造によって余計な力を必要としない(=使れにくい、長時間利用できる)という点です。
ロジクールはエルゴノミクス性に関して大学と共同研究を行っており、MX ERGOの発表会では試作のモックアップを何種類も展示していました。2台のパソコンをまたいで操作できる「Flow」機能も便利ですし、専用のレシーバー以外にBluetooth接続にも対応しているので、2台パソコンを持っている人には超便利です。
一方、ロジクールで最上位となるMXシリーズのマウスと比較するといくつかの見劣りもあります。クリック感あるスクロールと高速でホイールがなめらかに回り続けるスクロールが自動で切り変わる「MagSpeed Smartshift」や、最大3台の接続が切り替えられる「Easy Switch」機能はMX ERGOにはありません。
とはいえMX ERGOに惚れ込んで「No Trackball, No PC life」となっている筆者。新型のMX ERGO Sはどうでしょうか?
●MX ERGO Sの進化点はUSB-C充電とLogi Bolt!
○新型はUSB-Cによる充電およびLogi Boltに変更
MX ERGO以降の新製品が出てこなかったのは、ある意味MX ERGOが完成された製品だからとも言えます。
人間工学的にストレスを減らすため20度右に傾けられる構造や、各パーツの配置は従来からほぼかわりません。基本デザインが変わらないので、MX ERGO Sも今まで使っていたサードパーティ製のトラックボールケースに収まります。
初代発表時にはやや時期尚早だったかもしれませんが、先進のMXシリーズなら採用して欲しかったUSB-C接続による充電に、新モデルのMX ERGO Sは対応しました。外観からは、USBコネクタと背面の滑り止めラバーの印刷が変わった程度の違いで、パッと見た感じでは新旧がわかりません。
MX ERGO Sに限らずロジクール製マウスは電池持ちがよく、1分の充電時間があれば24時間利用できるというのもうれしいところ(以前のモデルが現在も使えるのは、電池持ちがよいので充電サイクル数が少ないというのも影響しているのでしょう)。
時代の変化にも当然対応。ロジクールは環境配慮に対してパッケージの紙化から始まり、現在は外装プラスチックの20%がリサイクルプラスチックとなっています。MX ERGOでは付属していた、充電用USB-Cケーブルも付属しません。
一方でトラックボール本体は不織布に包まれており、フラッグシップ製品らしさを感じさせるパッケージとなっています。
将来的にはフレキシブルプリント基板の製造において、従来は銅箔をエッチングで取り去る従来のタイプから銅ナノインクのインクジェットでパターンを作成し、銅メッキで配線に必要な厚みにするピュアアディティブ法のPoCを今後進める予定となっています(ちなみにこの技術を開発したのは日本の企業で2023年大きく注目されました)。
また、初代ではUnifyingによる接続でしたが、MX ERGO Sはビジネス製品から採用が進んでいるLogi Bolt接続に代わりました。
ロジクール独自の接続技術となるLogi Boltは、企業オフィスでも安心してワイヤレス製品を使えるという観点から普及が進んでいます。Logi Boltは、Unifyingと同じ2.4Ghzながら、Bluetooth Low Energyを基盤にしたプロトコルに変更されました。混信と遅延も減らし、ペアリングも含めた暗号化が行われているのが特徴となっています。
3つ目の進化は、コロナ禍出のリモートワーク拡大とともに問題視された「クリック音」の低減。MX ERGO Sはその「S」の名の通り、静音スイッチを使用しています。新製品のプレスリリースでは、耐久性の言及はないものの、80%静音となったスイッチを採用していると書かれています。
●手に合うかどうか、ショップで実機を触ってみよう
○正当なマイナーチェンジで魅力アップ、欲を言えば……
今回じっくりMX ERGO Sを触ってみました。
使い込まれた旧製品と比較するとカッチリ感がありますが、基本的な使用感は変わらず。ボールはいわゆるルビー軸受(赤くないので実際には酸化アルミニウム)で保持されており、動きはスムーズ。他社でボールベアリング軸受けの製品があり、滑りはいいのですが「ゴロゴロ感」が少々気になっているので、定期的な掃除をするという前提でルビー軸受けはメリットに感じます。
注目ポイントの1つである静音クリックに関しては、好みが分かれそうです。押した手ごたえはソコソコあるものの、カキっとしたシャープさは従来のMX ERGOと比べスポイルされている感じがありました(それが「静音」ではありますが)。
静音スイッチはメインの右/左クリックのみで、ホイールの左右チルトなど他の部分のスイッチは今まで通りのようでカキカキ音がなります。上位機種なので、静音スイッチ使用と記載するなら全部変えて欲しかったところ。スイッチの耐久性に関しては問い合わせたところ「5Mのスイッチを使用している」との事で、個人的には少し物足りなくもありました。
新しいMX ERGO Sは従来製品の問題点を解決している良製品と言えますが、見た目はほとんど同じマイナーチェンジ的な製品となります。すでにMX ERGOを使用している人が即乗り換えるというよりも、今の製品が使えなくなったら、あるいはそろそろ壊れるかもしれず予備機が欲しいという人に向いていると思います。
個人的な希望としては、付属するUSB-AのレシーバーがそろそろUSB-C化する検討があるとうれしいです(ノートパソコンではUSB-Cのみという製品も出ているため)。あと、レシーバーが本体に格納できないので、これも格納できると助かるところ(マグネット板を底面に付けている関係で構造的に難しいのかもしれませんが)。さらに欲を言えばEasy Switchに対応しMagSpeed Smartshiftをサポートしてもらえると最高です。
最後に、この手のトラックボールマウスは、ハマれば長く愛用できすが、使い勝手に関してはクセがあるのも事実。
というのも先日、他社のトラックボール製品を買ったところ、微妙な大きさの差と滑り止め塗装により、手に余計な力が入る感じがありました。ちょっとの差とも言えますが毎日8時間使うという場合、疲労度に影響はでるでしょう。
MX ERGO Sの握り心地についても、個人的には外出先まで持ち歩くほど使い込んでいる愛用品ではありますが、実機が触れるショップでじっくり触って、手に合うかを確認してから購入されることをおススメします。

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