女性兵士への「性上納」強要だけじゃない…北朝鮮軍の末期症状
韓国のニュースサイト、リバティ・コリア・ポスト(LKP)によれば、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)のある部隊で1月1日、末端の兵士たちが部隊指揮官の将校たちを襲撃し、メッタ打ちにする事件が発生したという。
北朝鮮軍ではかねてから、食糧の横流しや女性兵士に対する性上納の強要など、軍紀のびん乱が進行していた。しかしそれらでさえも、上意下達が徹底された組織内で、上官が部下に対して権威を振りかざすことで発生蔓延してきたものだ。
兵士が指揮官に集団暴行を加えるとは、軍事組織として末期症状と言えるかもしれない。
LKPにことの顛末を語った現地情報筋によれば、事件が起きたのは中国との国境に面した両江道(リャンガンド)に駐屯する第26国境警備旅団のある中隊だ。北朝鮮軍では12月30日、金正恩党委員長の指示により、新年の贈り物として兵士1人当たり酒1瓶、食用油250グラム、タバコ1箱、砂糖と菓子1キロ、キムチと味噌を500グラムずつ、唐辛子200グラムと餅600グラム、豆腐1丁、リンゴ2個ずつが配られた。
日本の基準で見ると素朴なものだが、食糧横流しのせいで飢えに苦しんでいる兵士たちにとっては、目が飛び出るほどのごちそうである。もっとも、これは国家や軍が準備したものではない。駐屯地域の住民にノルマを与え、軍に「差し入れ」をさせているのだ。
いずれにしても、ごちそうを目の前にした兵士たちは喜んだ。ところが受け取ったそばから、それらはすべて指揮官に没収されてしまった。そして元旦の朝、兵士たちに出された食事は餅と豆腐のおかずが少々に、部隊に供給されたハタハタ1尾、肉の切れ端すらほとんど入っていない豚汁がすべてだった。その一方、指揮官らは朝から豚肉を肴に、酔いつぶれるまで酒を飲んでいた。
指揮官たちが酔いつぶれると、兵士たちは連れ立って、駐屯地の外へ憂さ晴らしの酒を飲みに行った。そして駐屯地に戻ると、良いから覚めた1人の小隊長が、無断外出をとがめて兵士たちを殴打。これで兵士らの怒りが爆発し、指揮官たちに対する集団暴行に発展したというわけだ。
騒ぎは、駆け付けた大隊兵士らによってほどなく鎮圧された。問題は、事件の後始末をどうするかだ。ことの経緯が上層部に知れたら、処罰されるのは兵士たちだけでは済まない。贈り物は、金正恩氏の命令で配られたものだ。それを横領するのは同氏の権威を傷つけることになり、万死に値する罪となる。
つまりは暴れた末端兵士から管理責任を問われる大隊と連隊の指揮官たちまでが、まとめて粛清される可能性があるということだ。
そのせいか、現場では事件を部隊内部で静かに処理し、配置転換などで済ませようとする雰囲気だと情報筋は語っている。しかしそうなると、軍内の自浄作用はまったく働かない。かくして、金正恩氏の軍隊はいっそう落ちぶれていくのだ。
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