「まったく中身がない」北朝鮮の農民、金正恩の政策を酷評
年初からミサイル発射を来る返し、対外的には武力示威を続けている北朝鮮。しかし金正恩総書記の頭の中は、内政上の難題でいっぱいなのかもしれない。
金正恩氏は昨年12月に開かれた朝鮮労働党中央委員会第8期第4回総会で様々な案件に言及したが、半分近くを農業問題に割いた。北朝鮮と金正恩氏が農業問題をいかに重要に捉えているかがよく表れている。
それに対する農民や農業関係者の反応は、「失望した」というものだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
金正恩氏も言及した北朝鮮随一の穀倉地帯、黄海南道(ファンヘナムド)の農業関連の幹部は、総会で示された方針の貫徹のために、道内の各共同農場では決起大会が開かれていると伝える一方で、農民は今回示された農村発展戦略課題に失望を示しているとも伝えた。
これは10年かけて、段階的に農業生産を増大させ、食糧問題を完全に解決するというものだ。北朝鮮の慢性的な食糧難は、すでに限界に来ている。
当初農民の間では、総会で食糧問題解決のための画期的な対策が金正恩氏により示されるとの予告を聞いて、歓迎するムードが広がっていた。だが実際には、肥料や営農資材の供給、農民へのインセンティブなど、農業振興に欠かせない案件についてはまったく言及がなく、「中身のない案だ」との声が上がっているという。
「農場員たちは、今回の農業発展戦略に営農資材の供給、農民に対する穀物の分配増加など実質的な対策が抜け落ち、農民の思想、技術、文化の3大革命を穀物生産の重要な課題として取り上げたことに失望している」(幹部)
彼らは、「自分たちの思想がなっていないから食糧増産ができていないということか」などと反論しているとのことだ。
平安北道(ピョンアンブクト)の農業関連の幹部も、農民は総会で、農業の主体を欠いた集団農業や不完全な実施に終わった圃田担当制(インセンティブ制度)など、失敗した農業制度を脱して、革新的な制度が示されるものと期待していたが、実際に示された案に対して失望が広がっていると伝えた。
また、トウモロコシの代わりに小麦栽培に力を入れ、人民の食生活を改善、米食と同時に小麦粉を使った食生活に変えていくとの方針に、「現実味のない無謀な政策だ」と失望しているとのことだ。そして農業生産に必要なのは、農民の思想改造や食文化の改善ではなく、農業に必要な肥料や営農資材、農民への分配を保証するなど、実質的な対策が必要との声が上がったと述べた。
一方、黄海南道のデイリーNK内部情報筋は、総会後に中央党(朝鮮労働党中央委員会)から10人の集中指導小組が派遣され、総会での決定事項を貫徹させるための指揮に当たっていると伝えた。
まともに稼働できていない道内の農業機械工場を、全国の工場からの支援を受けて役割を高める、土壌を強化し種子を改良するために道内に10あまりの農業科学院の分院を設立する、経験主義にこだわっている協同農場の責任者を、実務に明るく実力のある者に交替させる、といった内容だ。また、協同農場が国に返済できていないすべての借金を免除するとの措置が含まれている。
これに対して情報筋は、農民から歓迎の声が上がっている一方で、「国の買取価格の現実化が必要だ」との要求も出ていると説明している。平安南道(ピョンアンナムド)の別の情報筋は、国定価格で農産物の買取が行われれば、農民はまた大きな負債をかかえることになると口々に言っていると伝えている。
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