北朝鮮製「新型コロナ診断キット」に集まる疑惑
北朝鮮は、新型コロナウイルスの感染を診断するキットを開発し、各地域の医療現場に配布したと伝えられている。しかし、その信頼性には疑問が持たれている。
デイリーNKの北朝鮮内部の高位情報筋によると、当局は、平壌市を含めた13の道と直轄市に開設された非常防疫指揮所に、国内で開発されたと主張している新型コロナウイルス診断キットを供給した。
まずい情報
これは、海外に派遣されている貿易機関の職員や国家保衛省(秘密警察)の要員を総動員して、何らかの秘密の活動を行った上で、相手国の貿易業者を通じて大量に確保した材料を使って完成させたものだという。「われわれ式(朝鮮式)の診断キットを開発した」と宣伝してはいるが、実際はラベルを貼り替えるなどの「産地偽装」を行ったに過ぎないと思われる。
そして10日、中央党(朝鮮労働党中央委員会)の幹部、護衛司令部、平壌赤十字病院、金万有(キムマニュ)病院、各地域の保健関連機関など医療現場に配布された。
診断キットや試薬を中国大使館など外交チャンネルを使って確保しなかったのは、情報流出などを恐れたためと情報筋は見ている。
「診断キットの開発はわが党(朝鮮労働党)の予防医学の能力を見せつけるものなのに、中国駐在の公館など外交チャンネルを使えば噂が立ちかねない。外部勢力につけ込むスキを与えるもので、情報を統制できる秘密のチャンネルを使って物品を確保した」(情報筋)
情報筋は、流出してはまずい情報がいかなるものかについて言及していない。
米財務省は、米国と国際支援団体の北朝鮮への支援をサポートしていると明らかにしたが、朝鮮労働党は自国で診断キットを開発したとの理由を挙げ、支援を受け取らない方針を定めたと情報筋は伝えている。
しかし、北朝鮮製診断キットに対しては「本当にウイルスを検出できるのか」との疑問の声が上がっている。上部は「われわれ自身が独自開発した診断キットを信じればいい」という言葉を繰り返しているとのことだ。「鰯の頭も信心から」ということだろう。
一方で同党は、治療薬やワクチンについては米国ではなく国際機関を通じて支援を受けるとの考えを持っているとのことだ。実際、UNICEFは18日、北朝鮮の保健省からコロナウイルス予防用の個人保護用品の支援要請を受けたと明らかにしている。
北朝鮮保健省のソン・インボム局長は2日、朝鮮中央テレビに出演し「わが国で新型コロナウイルスによる感染症は発生していない」と述べている。今の時点で、北朝鮮において新型コロナウイルスの感染者が発生したとの発表はないが、原因不明の高熱で死者が出るなど、ウイルス上陸が疑われる情報が伝えられている。
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