北朝鮮「植樹戦闘」用の苗木、安値で中国に輸出される
北朝鮮の首都・平壌の人民文化宮殿では今月14日、山林復旧および国土環境保護部門の活動家会議が開催された。国営の朝鮮中央通信によると、会議では昨年の山林復旧の状況、育苗場における苗木栽培の科学化、工業化、集約化の技術向上、山林造成、保護・管理活動、河川整理、環境保護、自然保護管理活動などについて話し合われた。
北朝鮮の山々は、金日成主席が進めた全国段々畑化計画に加え、燃料や食糧の確保のために畑を造成したことでハゲ山となり、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」の一因となった。
これに対して金正恩党委員長は2012年4月27日、党と内閣の幹部に対して「国土管理事業において革命的転換を引き起こそう」という演説を行い、10年以内に山林を元に戻すと宣言した。
植林事業は思うように進んでいないことは何度も指摘されてきたが、今度は、貴重な苗木が中国に売り払われているとの情報が伝わってきた。
両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、山に植えるために供給された苗木が、中国に輸出されている。それも密輸ではなく、正式な輸出だ。
「鉱石などの物資は中国の税関を通してもらえないことが多いが、木は一度たりとも妨害されることなく通してもらえる」(内部情報筋)
国連安全保障委員会は2016年、対北朝鮮制裁決議2270号を採択し、鉱物資源の北朝鮮からの輸出を禁じたが、木材に関しては輸出を制限する条項はない。そこで貿易会社は、国内の市場で1立米15ドル(約1670円)で売られているカラマツの苗を買い求め、中国に倍の値段で輸出している。植林事業で多大な損害を被ってきた地域住民からは怒りの声が上がっている。
当局は、住民が食料確保のために山を切り開いて作った個人耕作地をむりやり奪い、そこに木を植えさせる。それに腹を立てた人が植えたそばから木を引っこ抜いて捨てたり、新たに植え戻してあらたに植えたものとしてカウントしたりするなど、住民のサボタージュや抵抗に遭っている。
そんな思いをして植えた木も多くが枯れてしまう。植樹節の日にち設定がおかしいからだ。
金日成氏は、金正淑夫人とまだ幼子だった金正日氏を連れて平壌の牡丹峰(モランボン)に登り、戦時中の松脂取りや軍需用で乱伐されハゲ山になった森を見下ろした。そして「山と野に木を植えることについて」という指示を出した。それが1946年の3月2日だった。そのエピソードにちなみ、植樹節(みどりの日)を4月6日から3月2日に変更した。
しかし、平壌と違い北部国境地帯の3月の平均気温はまだ氷点下だ。木の苗を植えるには、固く凍った地面を掘らざるを得ないが、行き届かずに枯れてしまうのだ。
昨年6月には、せっかく山に植えた木を不足する外貨を補うために次々に切り倒し、中国に輸出してしまった。それを指示したのは他ならぬ金正恩氏だ。
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