金正恩命令に参謀が「死の抵抗」…北朝鮮軍を待つ最悪の結末
韓国の情報機関、国家情報院は先月16日の国会情報委員会で、北朝鮮が兵役期間を男性は9〜10年から7〜8年に、女性は6〜7年から5年に短縮したとの情報を明らかにした。世界で最も長いと言われていた北朝鮮の兵役。依然長いとは言え、一時は13年に達していたことを考えると、かなりの短縮だ。
今年1月の第8回党大会で金正恩総書記が提示した「国家経済発展5カ年計画」の実行のための措置と見られるが、軍の一部からは反発が出たようだ。
デイリーNKの朝鮮人民軍(北朝鮮軍)内部の情報筋によると、1月の朝鮮労働党中央委員会第8期第1回総会が開かれる前、国防省(旧人民武力省)で討論が行われ、予定兵役期間の3分の2が経過した人員を早期に除隊させることについて話し合われた。
除隊させた人員を炭鉱や協同農場、建設現場に送り込むためだ。今までも、人が行きたがらない場所に兵役を終えた人員を送り込む「集団配置」が行われてきたが、この仕組みを活用して労働力を確保し、計画を達成しようということのようだ。
兵役短縮は朝鮮労働党が提示し、軍の高位幹部も同意したという。こうした軍事に関わる重大措置が金正恩氏の裁可なく取られるはずもなく、実質的には最高司令官命令も同様だ。ところが、人員の招集や配置、除隊など人事を司る隊列補充局の参謀長は反対の意を示した。
現状で兵力を減らせば軍の編成を保てず、新規入隊を拡大する策なしに実行すれば軍事力低下につながると主張。「党の意見を押し付けられても困る」と述べたようだ。
これに対して軍の高位幹部は当惑しつつも、党の意見には従うべきとの結論を下した。その上で、反対意見を示した参謀長を家族もろとも炭鉱に追放し、口を封じた。
また、参謀長の上官に当たる隊列補充局長と政治委員も、部下の政治思想教育を疎かにしたとの理由で、一階級降格処分を受けた。解任された参謀長のポストには、隊列補充局1部長が任命されたとのことだ。
重職を務めていた幹部が、討論の場で党に対して露骨に反対意見を示し処罰された事件を受けて、軍幹部の間では、「今後はいかなる状況でも異論を挟まないようにしよう」「党が政策を出せば、無条件で従おう」との話が出ている。合理的であるべき軍事組織の指揮官たちがこのような日和見主義に陥れば、軍事力の弱体化は避けられないのではないか。
また「党の政策に反対したら反逆者扱いされかねない」「党が軍の力を削ごうとしているのではないか」などと疑心暗鬼に駆られている模様だ。
一方、隊列補充局は、今年の春と秋の徴兵人員を増やす案を構想しているが、少子化の進む北朝鮮で、想定通りに徴兵が順調に行えるかは未知数だ。
また、誰も行きたがらない職場に送り込むという、兵役が形を変えて一生続くに等しい集団配置も、先行きが危ぶまれる。
行きたがらないのは、事故のリスクが高い、生活環境が劣悪、商売をするための市場がないなど、それなりの理由があるためだ。兵役短縮に反対した参謀長が罰として炭鉱送りにされたことを考えると、集団配置がどのように過酷なものかが想像できる。
それを嫌がって逃亡したり、ワイロで免除してもらったりする例が続出し、兵力も労働力も確保できない、最悪の状況に陥ることも考えられる。
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