数ヶ月に渡る断水と停電に苦しめられる北朝鮮国民
北朝鮮の北部山間部から北東部にかけては、冬の降水量が極めて少ない地域だ。韓国気象庁の統計によると、1月の平年降水量は羅先(ラソン)が5.3ミリ、清津(チョンジン)が12.7ミリだ。東京の48.6ミリ、札幌の113.6ミリと比べるといかに少ないかがわかる。
この冬は、そのわずかばかりの雨や雪すらほとんど降らなかったために、深刻な水不足が発生していると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じている。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、清津(チョンジン)市内では朝夕にバケツを持った人々の長い列ができる。初冬に水道管が破裂したのに、今に至るまで復旧されていないため、一般住民や工場労働者はもちろん、朝鮮労働党や行政機関の初級幹部ですら水を汲みに出なければならない状況なのだ。
郊外に住む人々は、市内を流れる輸城川(スソンチョン)まで数キロの道を行き来し、川の氷を割って水を汲む苦労を強いられている。
断水は清津市内のみならず北東部一帯で起きているが、当局は何ら対処しようとしない。中央政府の幹部が利用する高級ホテルは、発電機と給水車を使って給水しているが、それすらも時間制限があるほどだ。
別の情報筋は、断水に加え停電が数ヶ月間続いていると訴える。
「今年は雪が少なく、小規模水力発電所が稼働できずにいる。水道管破裂に電力難まで加わり、水道システムが完全に崩壊した」(情報筋)
この冬の電力難は、例年にもまして深刻な状況だ。当局は、政治的に特別な意味のある日に限っては住民にテレビを見せるために電力を供給していたが、今年はそれすらできなかった。北朝鮮では、水力発電の依存度が非常に高く、降水量の有無は電気供給に多大な影響を与えるのだ。
各家庭では発電機で電気を賄っているが、経済制裁による燃料価格の乱高下のせいか、小さな明かりを灯すので精一杯だという。一方で、カネのある幹部は、ワイロを渡して特級企業所と軍需工場に供給される電気を横流ししてもらっている。
特級企業所と軍需工場に務める一般労働者は、出勤時にバッテリーとバケツを持参し、電気と水を職場でもらえるだけもらって自宅に持ち帰る。今や羨望の的となっている。
それでも水道があるだけまだマシと言えよう。
国連人口基金(UNFPA)の2014年の調査によると、北朝鮮の人口の10.5%は井戸、4.1%は湧き水、2%は共同水道を利用している。つまり、5人に1人が自宅に水道がないため、屋外に汲みに出る生活を強いられているということだ。
平壌から南東に80キロほど離れた、黄海北道(ファンヘブクト)の遂安(スアン)、新渓(シンゲ)、谷山(コクサン)は、これまでの歴史で一度も上水道の恩恵を受けたことがないという。地域によっては、水汲みの往復8キロものの道のりを行き来することになる。それも、確保できるのは汚染された水だけだ。
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