「焼くには数が多すぎる」北朝鮮軍を襲った大量死の衝撃
北朝鮮の金正恩総書記は15日に開かれた朝鮮労働党中央委員会政治局の非常協議会で、新型コロナウイルスの感染を抑え込むため「人民軍(北朝鮮軍)の軍医部門の強力な力量を投入して平壌市内の医薬品供給活動を即時安定させること」に関する党中央軍事委員会の特別命令を下達した。
朝鮮中央通信によれば、金正恩氏は協議会の席上、「先鋭な防疫戦争で高度の緊張性と警戒心を堅持し、全ての事業を科学的に細密に作戦、指揮していささかの手落ちと盲点も許してはならない」と強調し、「活動家が実質的な活動、実質的な結果によって防疫闘争を主導していくべき」だと訴えたという。
北朝鮮は今月12日になって初めて、国内での新型コロナ感染者の発生を認めた。それ以降、感染が疑われる発熱患者の数は爆発的に増えている。
しかし実際のところ、新型コロナの世界的な感染拡大が始まった2020年の当初から、北朝鮮国内でも感染者の大量発生と思しき事象が観察されていた。そして、その最初の衝撃を受けたのはほかならぬ軍だった。
北朝鮮の軍内部では物資の横流しや虐待が横行し、栄養失調の兵士も少なくない。免疫力も低下していると見られる。
北朝鮮軍のデイリーNK内部情報筋が伝えたところによると、軍医局は同年3月3日、1〜2月に180人が死亡し、3700人を隔離しているとの情報を最高司令部に報告した。死者は、中国と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)、慈江道(チャガンド)、両江道(リャンガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)に駐屯する国境警備隊に集中していた。
北朝鮮の保健当局は当時、新型コロナウイルスで死亡したと思われる人の遺体については火葬するよう指示を下していたが、軍当局はこの事態を受け、火葬ではなく「遺体を徹底的に消毒せよ」との指示を下した。
これについて情報筋は「あまりに死者の数が多すぎて、火葬が難しかった。また隠したい情報が漏れるかもしれないとの懸念があった」ためだと述べた。軍病院では従来、遺体を火葬しておらず、急に多くの遺体を火葬すれば「軍で何かが起きた」と気づかれる可能性があると考えたようだ。
金正恩氏は最近の感染拡大を受け、地区の封鎖などに軍を大量動員する方針を打ち出しているが、兵士の栄養不足は現在でも解消していない。免疫力の低下した兵士らが防疫の最前線に立たされれば、軍はさらなるコロナショックに見舞われるかもしれない。
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