爪に火を灯す耐乏生活でコロナ禍を生き抜く北朝鮮の人々
2年以上に及ぶコロナ鎖国、密輸の徹底したブロックにより、北朝鮮の物価は上昇し続けている。さらにはコロナ対策の移動統制、ロックダウンなどで、市場での商業活動が萎縮し、収入が減った人々の購買力が下がっている。そんな中、人々は一度に買う量を減らすことで、生活防衛を図っている。
デイリーNK内部情報筋からの情報によると、かつては中国製の大豆油の場合、1キロ入りのものを購入するのが一般的だったが、今では100グラム単位で量り売りするようになった。地域ごとに事情は異なるものの50グラム単位での販売を行っているところもある。
ちなみに平壌の市場では、今月3日の時点で、大豆油100グラムが3500北朝鮮ウォン(約70円)で売られている。1キロで買うと3万北朝鮮ウォン(約600円)前後なので、かなり割高だが、一度に大量購入する経済的余裕がなく、少量の量り売りが好まれる状況だ。
砂糖も同じで、100グラム、200グラム、中には50グラム単位で売られている。ちなみに価格は、100グラムで2800北朝鮮ウォン(約56円)。1キロで買うともっと安く購入できるのは、大豆油と同じだ。
一方、胡椒、ごま、ごま油など、コロナ鎖国以降見かけなくなっていたものも最近では出回るようになっているが、やはり少量購入がトレンドだ。同様の現象は、平城(ピョンソン)や新義州(シニジュ)でも起きているとのことだ。
人々の購買力が弱くなったことで、数年前から見向きもされなかったような質の悪いものも売られるようになっている。
北朝鮮で「人造肉」と呼ばれるソイミート。原料は大豆カスだが、その製造過程でさらに絞りカスが出る。そこに水を混ぜて圧力をかけて絞り出した「人造肉生産油」なるものが市場で売られるようになった。油として使えた代物ではないが、それでも安いために、買い求める人が少なくないとのことだ。
情報筋は「コロナで密輸ができなくなり国境封鎖が続いていることで、衣食住がひどいことになっている」としつつも、人々がそれなりに知恵を絞り出して、「自力更生」でなんとか生き抜こうとしていると伝えた。
今まで何度もの経済危機、食糧難を経験してきた北朝鮮の人々だけあって、その生活力の強さには驚かされるが、密輸の本格的な再開の目処は立たず、農業不振などの原因で食糧難の長期化が予想され、彼らにとっては厳しい時期が続きそうだ。
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