習近平訪朝のウラで…中国がつぶした金正恩の「ドル箱」ビジネス
北朝鮮と中国は17日、習近平国家主席が金正恩党委員長の招請を受け、20日から21日まで訪朝すると発表した。関係の親密さを強調し、非核化や貿易摩擦で対峙する米国をけん制する狙いがあるのは明らかだ。
実際、両国は様々な面で協力を深めている。中国の公安当局は脱北者の取り締まりを強化しており、摘発した人々を強制送還している。送り返された人々には虐待が待ち受けており、国際社会からの批判が強いにも関わらずだ。
だが、中国がすべての面において、北朝鮮に協力的であるわけではない。中国当局は最近、自国内にいる北朝鮮労働者の送還に本腰を入れ始めたとされる。美貌のウェイトレスを看板に、外貨稼ぎの柱のひとつだった北朝鮮レストランもその対象だ。
さらに、中国と国境を接する北朝鮮の新義州(シニジュ)市では、ある重要プロジェクトが中国からの圧力でつぶされたことがわかった。
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙・労働新聞は6日、「マンション建設現場に出て作戦と指揮を覇気ありげに行う平安北道人民委員会のイルクン(幹部)たち」といういうキャプションを付けた2枚の画像を公開した。1枚は建設中の建物の近影、もう1枚は「マンション建設戦闘場」「新義州26−8、9、10号棟マンション全景図」と書かれたマンションの完成予想図を背にして、イルクン(幹部)たちが図面と建物を見比べている構図のものだ。
デイリーNKの内部情報筋によれば、このマンションは当初、ギャンブル好きの中国人客を当て込んだ30階建てのカジノホテルとして建設が始まった。ところが、中国政府からの圧力で工事が中断してしまった。高官が多額の公金を横領してカジノにつぎ込むなど、ギャンブル絡みのトラブルが多発している中国の立場からすると、目と鼻の先にカジノを建設するなどとんでもないことと、激しく抗議したからだ。
その後、通常のホテルを建設するとして工事が再開されたが、最終的には一般向けのマンションに変更になったようだ。
観光は、国連安全保障理事会の制裁決議でも対象とされておらず、北朝鮮の貴重な外貨収入源になっており、金正恩氏は国民に多大な犠牲を強いながら、観光リゾート整備を進めている。
また、中国では北朝鮮観光ブームが起きており、毎日1000人以上の中国人観光客が北朝鮮に入国している。一部では交通手段、宿泊施設の不足が報じられているほどだ。ここでカジノを開業すれば、相当な「ドル箱」になったかもしれない。
ただ、北朝鮮当局は当初、世界各国からの投資を当て込んで、新義州で20階建て以上の高級ホテル10棟とカジノを建設することを計画していたもようだが、国連安全保障理事会の制裁決議は北朝鮮との合弁企業、新規投資、既存の企業の事業拡大など北朝鮮への投資を禁じている。また、高級ホテルに備え付けられる贅沢品も、輸出が禁じられている。
それでも建設を進めたのは、米朝首脳会談で合意に至れば制裁が緩和されるだろうと当て込んでのことだと思われるが、今年2月のベトナム・ハノイでの会談は物別れに終わり、投資が全く期待できない状況となった。
建設会社は、マンションに変更して売却することで建設資金を取り戻そうとしているのだろうが、北朝鮮の不動産市場は深刻な不況に襲われ、価格は暴落、取り引きも成立しないような状況となっている。
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