金正恩氏は「サウナ不倫」を止められるか
北朝鮮メディアは17日、金正恩党委員長が北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)で経済各部門を集中的に視察したことを伝えた。
今回の視察先は発電所やホテルの建設現場、造船所、温泉施設など8カ所だ。このうち、金正恩氏が発電所の建設現場で幹部らにカミナリを落としたことは昨日の本欄で言及した。過去には同様に叱責された幹部が処刑された例もあり、担当者らは戦々恐々としていることだろう。
金正恩氏が不満を表明したのは、発電所の建設現場だけではない。ホテルの建設現場とかばん工場、そして温泉施設である温堡休養所でも怒りを露わにした。朝鮮中央通信によれば、深夜に同施設を訪れた金正恩氏は、浴場を見て回り「管理をよくしていないので温泉治療の浴槽が汚く、薄暗くて非衛生的だ。最近の養魚場の水槽よりもひどい。このような環境で治療になるのか、本当に汚い」と指摘したという。
同通信によれば、同休養所は金正恩氏の祖父・金日成主席と父・金正日総書記も何度か訪れた重要施設だ。それだけに、金正恩氏の怒りも大きかったと思われる。
しかし、慢性的な経済難に加え、国連安全保障理事会による経済制裁まで受けている現況下においては、こうした施設の管理がおろそかになるのは、ある程度は必然だろう。
もっとも、何事もお役所仕事で営業努力に欠ける国営施設と比べ、民営のサウナやスーパー銭湯は比較的繁盛しているようだ。また、民営サウナには「夫婦湯」と呼ばれるVIPルームがある。利用料は1時間6万北朝鮮ウォン(約720円)で一般料金の10倍。庶民はとても手が出ない。
本来、夫婦湯は夫婦であることを示す公民証(身分証明書)を提示しなければ入れないが、幹部やトンジュ(金主、新興富裕層)はカネに物を言わせて愛人との逢瀬に利用しており、これには庶民から批判の声も出ているという。
北朝鮮では最近、金正恩氏の号令の下、「非社会主義的現象」の一掃と称して風紀取り締まりキャンペーンが行われてきたが、当局は庶民の服装など細かい点にケチをつけながらも、上記のような「サウナ不倫」の蔓延にメスを入れたとの話は聞かない。
もっとも、権力者や金持ちの「やりたい放題」は、北朝鮮でも昔からあることだ。
金正恩氏は温泉施設の浴槽の汚れに目くじらを立てる前に、そのような社会のゆがみから正すべきではないのか。
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