大水害が北朝鮮の人々の「商魂」に火を付ける
先月末の大雨で甚大な被害を受けた北朝鮮の鴨緑江沿いの地域では、正確な数は不明だが、多くの人が家を失った。
被災地では珍しい商売が登場した。そのうちの一つが「火屋」だ。はたしてどのようなものか。平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
火屋とは、七輪を持って避難所を周り、ご飯を代わりに炊く商売だ。
北朝鮮の地方で一般的な燃料は練炭または薪だが、いずれも水に濡れてしまい使えなくなってしまった。以前なら被災者は、被災していない家のかまどを借りて煮炊きをするものだったが、皆が皆、生活が苦しくなりそれも難しくなった。
平安南道(ピョンアンナムド)价川(ケチョン)在住のリさんは先月27日、着火炭を仕入れて遠く離れた被災地まで出かけ、「火屋」の商売を始めた。被害を受けていない家を訪ね、利益の3割をかまどの使用料として支払うと話を付けて、被災者の煮炊きにかまどを貸し出す。
飯炊きは1500北朝鮮ウォン(約15円)、スープを煮る場合には1200北朝鮮ウォン(約12円)で、コメやトウモロコシなど現物での支払いも可能だ。
リさんは5年前から、国境沿いの農村で酒の行商を行っていたが、梅雨時に薪が濡れて困っていた人々を相手に「火屋」商売を本格的に始めた。当時はまだ競争相手が少なかったが、今では「火屋」に手を出す人が増えた。
被災者の反応は賛否両論だ。カネを払ってでも煮炊きができて食事にありつけるのはいいという人もいれば、「洪水で家をなくした被災者相手に商売をするのか」と批判する人もいる。
しかし、結局は皆が温かいごはんを食べたがっているため、火屋は儲かることになるという。
当局は、商売そのものを非社会主義、つまり社会主義にそぐわない行為として取り締まりの対象としている。ましてや今回は、災害で困っている人からカネを取るというものであり、遠からずして取り締まりに踏み切る可能性が高い。
だが、国が被災者に対して手厚いケアをしていないから、このような商売が発生するのだ。また、過去30年間に進んだ市場主義経済で、北朝鮮の人々のマインドが代わり、商売になるようなものがあれば、すぐに飛びつく。
毎年恒例の「堆肥戦闘」、つまり肥料にする人糞を集めて供出するキャンペーンの時期に合わせて、ノルマが達成できずに困っている人相手に、人糞を売る商売人が登場するのは、その最たる例と言えよう。
いくら思想と取り締まりで縛り上げようとしても、需要があるところに供給を行うという自然な人間の営みを止めることはできないのだ。
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