「149億円の性的搾取」いまも売られる北朝鮮女性たち
米国とアルバニア、日本の要請に基づき、国連の安全保障理事会が17日、北朝鮮における人権侵害を議論する公開会合を6年ぶりに開催する見通しだと伝えられている。
北朝鮮は人権侵害の事例が多すぎて、1回や2回の会合ではとても議論しきれない。また、北朝鮮の人権状況の改善をめぐり、課題を突き付けられる国も複数ある。
その筆頭は何といっても中国だ。2019年から脱北女性の人権問題を調査しているオランダの国際法律事務所「グローバル・ライツ・コンプライアンス」は4月23日、人身売買の被害に遭った脱北女性に関する報告書を発表した。
報告書は、中朝国境沿いの地域にいる脱北女性は数十万人に達し、その7〜8割が人身売買の被害者であるとした。1人あたり数百ドルで売られた脱北女性は、中国人男性に買われ、強制結婚させられたり、性売買を強制されたりしている。
報告書は、人身売買により犯罪組織が手に入れるカネは、年間1億500万ドル(約149億円)に達すると推定している。
こうした状況があるにもかかわらず、脱北者は中国において何の法的保護も受けられず、むしろ生命の危険にさらされている。中国は原則として、国内で摘発された脱北者を、北朝鮮に強制送還している。送還すれば、彼らの生命に危険が及ぶのを承知の上でだ。
国連などはこれまでも、中国に対して脱北者の強制送還をやめるよう説得を続けてきた。中国は北朝鮮との間で結んだ犯罪人引渡に関する条約を強制送還の根拠としている。しかし中国は「難民の地位に関する条約」と「拷問禁止条約」に加入しており、それらの条約は、国内法に優先して難民の強制送還禁止を順守すべきことを定めているのだ。
だが、中国は頑として脱北者を難民と認めず、「政治難民ではなく経済的な移民で、違法越境者」と主張し続けている。
安保理の会合でこの問題を取り上げたとしても、中国がそれに対処する可能性は限りなくゼロに近い。
ただ、国際情勢は時とともに変わるものだ。ほんの数年前まで、中国は国連で米国に同調し、北朝鮮の核開発に対する制裁決議にも反対しなかった。
それに脱北者の強制送還は、中国にとって死活的に重要な問題ではない。事実、中国は自国に友好的だった韓国の朴槿恵政権の求めに応じ、数百人の脱北者を飛行機に乗せ、一度に韓国へ送ったこともあったという。
米中関係が近い将来、劇的に改善する可能性は低いとしても、何らかの「取引」が行われる場面くらいは訪れるだろう。その際、米国にとって対北圧迫が重要であるならば、中国が妥協しやすい「脱北者カード」を今から仕込んで置くというのは、米国や関係国にとって、悪くない選択ではないだろうか。
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