金正恩「聖地」で報復殺人…恐喝に性暴力も日常茶飯事
白頭山密営は、金日成主席率いる抗日パルチザン部隊が本拠地としていた場所で、実際は旧ソ連(現、ロシア)のハバロフスクまたはウスリースク近郊で生まれた金正日総書記も、北朝鮮の正史ではこの地で生まれたことになっている。
金正恩総書記につながる「白頭の血統」にとっては「聖地の中の聖地」であり、多くの国民が踏事(一種の巡礼)に訪れる。そこで、とんでもない事件が起きた。
両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、三池淵(サムジヨン)市安全部(警察署)所属の白頭山密営分駐所(派出所)の所長、キム少佐が今月初め、市安全部が招集した分駐所長クラスの責任者会議に参加するために家を出たのだが、帰宅せず、連絡も取れなくなってしまった。
心配した家族からの通報を受けた市安全部は、捜索を始めた。それから5日、キム少佐はひとけのないところで、変わり果てた姿となって発見された。自ら命を断ったように装われていたが、鑑識と解剖の結果、他殺と断定された。
市安全部は、恨みによる犯行と見て捜査に乗り出したが、今年3月まで市安全部の監察課に勤務していたキム少佐に、ひどい目に遭わされたという人は少なくないとのことだ。
安全員は取り締まりの権限を振りかざし、庶民からワイロを搾り取り、要求に応じなければ様々な言いがかりをつけて逮捕し、刑務所送りにすることもある。また、同様のやり方で濡れ衣を着せた女性に性行為を強要することも日常茶飯事であり、悪徳安全員に対する庶民の恨みは深い。そんな安全員が報復で殺される事件は以前から起きている。
非社会主義、反社会主義と呼ばれる風紀を乱す行為に対する取り締まりが強化され、処罰を受ける人が大幅に増加していると伝えられているが、コロナ鎖国でただでさえ生活が苦しい人々に言いがかりをつけ、タバコ1カートンなど金品を掠め取ろうとしている安全員、保衛員(秘密警察)が少なくないが、キム少佐もその中の一人だったようだ。
安全員、保衛員はそのあまりもの横暴な振る舞いで相当に恨みを買っており、今までも報復殺人のターゲットになるケースが少なくなかった。
決して不祥事の発生が許されない聖地中の聖地での報復殺人。犯人が捕まれば処刑を含めた重罰に処されることはもちろんだが、市安全部幹部のクビが飛ぶことも避けられないだろう。
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