「美女洗車」に給油所増設…制裁下の北朝鮮でカービジネス拡大
国連安全保障理事会が2017年12月に採択した制裁決議2397号は、北朝鮮への石油製品の輸出を50万バレル以下に制限することを定めている。
一時期はガソリン不足に陥ったと伝えられていたが、今年に入って不足していることを示す兆候はない。価格も今年に入って下落傾向にあり、1万5000北朝鮮ウォン(約195円)台に達していたガソリン1キロ(1.34リットル)の価格だが、今では8000から9000北朝鮮ウォン(約104〜117円)で落ち着いている。おそらく、ロシアや中国から入ってきているからだろう。
ガソリンが不足するどころか、ガソリンスタンドが増設され、国と民間業者の間で競争となっていると、両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。
両江道の道庁所在地、恵山(ヘサン)には、少なくとも両江道の恵山には、少なくとも4ヶ所の燃油販売所、つまりガソリンスタンドがある。松峯洞(ソンボンドン)、恵興洞(ヘフンドン)に各1ヶ所、郊外の国道沿いの劔山里(コムサンリ)に2ヶ所、合わせて4ヶ所だ。
いくら合法・非合法の中朝貿易で賑わう恵山とは言え、人口が20万人に過ぎないことや自動車の少なさを考えると、オーバーストア気味と言えよう。ところが、松峯二洞(ソンボンイドン)と蓮峯洞(リョンボンドン)にガソリンスタンドが新たに2ヶ所オープンするというのだ。
北朝鮮では近年、自動車の増加とともに、「美女洗車」などクルマ関係のビジネスが拡大している。
情報筋は「市内では車も増えて流通も活発なのでガソリンスタンドが増えるのは当たり前」と伝えつつも、個人業者はガソリンスタンドの新規開業の動きに神経を尖らせているとも伝えた。
ガソリン商人は、得意先との良好な関係を維持し、配達に応じるなどきめ細やかなサービスで、国が運営するスタンドに客を奪われまいと必死だ。
しかし、消費者はどうやらガソリンスタンドの方を好むようだ。それはこんな理由からだ。
「市民は信用度の面で、ガソリンスタンド(での給油)を好む。民家でガソリンを売る商人たちは、商売上がったりだろう。彼らが安くてニセモノが混じっていないガソリンを売るのなら、わざわざガソリンスタンドに行く必要はない」(情報筋)
つまり、今までガソリン商人は、混ぜものをアコギな商売をしてきたしっぺ返しを消費者から受けているということだ。「真面目に商売していては手元にあまり残らない」(情報筋)という、致し方ない理由があるとは言え、消費者の立場からすると、価格に見合った良質なものを選ぶのは当然の選択だろう。
ガソリン商売は、他のビジネスに比べて楽なものだったが、ガソリンスタンドの相次ぐオープンで商人たちは苦境に立たされている。取り扱う品目を変える動きも出ているが、そう簡単なことでもないため、ガソリン商人の間では不安が広がっているという。
北朝鮮では、トンジュ(金主、新興富裕層)が主導してきた経済を、国の手に取り戻そうとする流れが起きている。その中で、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)もガソリンスタンドの経営に乗り出している。
国から予算を支給されず、自力更生、つまり自分たちで賄うことを要求されている各機関は、系列の貿易会社などフロント企業を使って、有利な条件で民間人から利権を奪おうとしている。これが国家主導の「計画経済への復帰」につながるか、単なる「利権の強奪」に終わるかは、今のところ判然としない。
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