「ニセ夫婦の不倫行為を根絶せよ」当局方針に北朝鮮国民も驚愕
北朝鮮の金正恩党委員長は、2017年12月23日の朝鮮労働党第5回細胞委員長大会で演説し、「非社会主義的現象の根絶」を訴えた。非社会主義現象とは、文字通り北朝鮮が標榜する社会主義の気風を乱すあらゆる行為を指す。
「サウナ不倫」が流行
北朝鮮当局はそれ以来、非社会主義的行為の取り締まり――要するに風紀取り締まりに力を入れている。その範囲は密輸、賭博、売買春、違法薬物の密売や乱用、ヤミ金融、宗教を含む迷信などに加え、韓国など外国のドラマ・映画・音楽の視聴など、当局が考える社会主義にそぐわない様々な行為に及ぶ。
庶民からは非難轟々だが、当局は一向にやめる気配がない。それどころか、その範囲がいっそう広がったと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。
平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋によると、数日前に「あらゆる反社会主義、非社会主義的な行為を徹底して叩き潰そう」という講演会が開かれた。
具体的な内容は次のようなものだった。
「社会主義秩序をびん乱させているニセ夫婦どもの不倫行為を強力犯罪として集中取り締まりを行い、処罰する」
ここで言われている「ニセ夫婦」には、いくつかの類型があるもようだ。
まずは、婚姻届を出さずに同棲しているカップルのことだ。
若者の間では、カップルで同棲したり、シェアハウスに住む人も少なくない。そこで覚せい剤などの薬物を使用したり、アダルトビデオを見たりする若者もいることから、当局は性びん乱の温床と見ているようだ。
次に「家庭を持ちながら愛人とみだらな関係」を持っているカップルのことだ。「革命的に恋愛、結婚し、革命的な家庭を築く」ことを国民に求める朝鮮労働党にとって、不倫は排撃すべき行為なのだ。もっとも、金正恩氏の父である金正日総書記こそ、そんな「倫理観」から大きく外れていたのだが。
講演会でもう一つ言及されたのは「同業者と長期間同行する男女の商人」だ。これについて情報筋は触れておらず、当局がどのような問題意識を持っているのかは不明だ。
さすがの北朝鮮当局も、重罰をちらつかせながら男女関係について言及することは前例がなく、「これには驚いた」と情報筋は語っている。
「家庭内暴力や夫婦間の殺人事件が横行しているので、それに悩んだ末の当局の措置と見られる」(情報筋)
しかし、拝金主義がはびこる最近の北朝鮮では、富裕層を中心に男女関係の退廃も進んでいるとされ、「サウナ不倫」などが流行しているとされる。
婚姻届を出していないとの理由でカップルを取り締まりの対象とするならば、いったいどれほど多くの人が対象になるか想像もつかない。情報筋は、それでも処罰するなら「女性トンジュ(金主、新興富裕層)の不正を見過ごしながら、痴情関係を結んでいる司法幹部が先だ」と訴えている。
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