金を払わされジャガイモを押し売りされる北朝鮮国民
北朝鮮北部の両江道(リャンガンド)では、気候の関係でコメがほとんど取れないため、配給はジャガイモでなされる。麺やチヂミにしたり、コメに混ぜて炊いて食べる。
配給とは言っても、行政機関などで配られるのではなく、受け取る本人が協同農場に行って収穫する方式がここ10年は取られている。
内閣の収買糧政省は先月16日、両江道の住民に対して2ヶ月分のジャガイモを配給するよう指示を下したが、これに対して国営の糧穀販売所での販売価格を支払うよう条件をつけた。これに対する不満が非常に大きい。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
現地の情報筋によると、工場、企業所の労働者、社会保障対象者(生活保障受給者)、老齢保障対象者(年金受給者)は、コメの配給規定量の1人あたり1カ月13.5キロの4倍にあたる54キロ、その2カ月分の108キロより若干少ない量のジャガイモを受け取っている。量が増やされているのは、ジャガイモは穀物ではなく、野菜扱いされるからだ。
市場では現在、1キロ1000北朝鮮ウォン(約17円)で販売されているが、国営の糧穀販売所ではその半額で売られている。今回の配給対象者に対して、この金額を払った上で、ジャガイモを掘り出すように指示された。既に掘り出して家に持ち帰った分に対しても代金を支払えとのことだ。
ジャガイモの運送費や収穫の手間などを、配給を受け取る者に一部転嫁させるのが、当局の意図だと情報筋は説明した。
このやり方だが、非常に評判が悪い。
代金を払って農場に行って掘り出すよりも、市場で買った方がマシだと別の情報筋は語った。
「市場ではジャガイモを自由に選んで値段交渉できるが、協同農場の畑ではジャガイモを選ぶことも 、値段交渉もできない」(情報筋)
また、輸送費もかなりの負担となっている。
車両を使うとなれば、距離1キロあたり3000北朝鮮ウォン(約51円)に加え、ガソリンを距離1キロに1キログラム(約1.34リットル)をドライバーに渡す必要がある。こちらの価格は1万2000北朝鮮ウォン(約204円)だ。
普天(ポチョン)郡の佳林(カリム)協同農場から、恵山市内までの距離は20キロで、ドライバーには6万北朝鮮ウォン(約1020円)の運賃と、24万北朝鮮ウォン(4080円)相当のガソリンを渡さなければならない。
ジャガイモの代金は、たとえば100キロなら5万北朝鮮ウォン(約850円)で、市場で買うとその倍の10万ウォンになる。しかし、農場で掘り出すとなると輸送費まで含めて35万北朝鮮ウォン(約5950円)の出費がかかり、市場で買うのと比べて3.5倍になる。
わざわざ苦労を買おうとする者などいるわけもなく、力のある工場、企業所は、ジャガイモの配給を敬遠している。それでも朝鮮労働党の各地区の委員会が無理矢理この方法を押し付けてくるので、工場、企業所もいやいや受け入れている。
一方、ジャガイモを輸送する余力のない高齢者や栄誉軍人(傷痍軍人)は、結局何ももらえないことになる。双方とも口々に不満を吐き出しているとのことだ。
地方当局は、中央から住民の食糧問題の解決を丸投げされた。しかし、その余裕がないため、負担を住民に押し付けているのだろう。これでは押し売りと変わらない。
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