北朝鮮が「男女の不倫関係」を摘発…あるジャガイモ農場での出来事
北朝鮮当局は昨年初めから、非社会主義的行為の取り締まり――要するに風紀取り締まりに力を入れているが、その対象は男女の不倫関係にも及んでいる。
最近、取り締まりの舞台となったのは、北朝鮮の北部山間地にある両江道(リャンガンド)の白岩(ペガム)郡だ。平均海抜は1550メートルで朝鮮半島全体で最も高く、冬は極寒の地だ。農耕に適しておらず、住民は長らく極貧生活を強いられていた。
そんな地を大きく変えたのは、金正日総書記が提唱した「ジャガイモ革命」だ。ジャガイモの一大産地となった両江道(リャンガンド)大紅湍(テホンダン)だ。稲作ができない荒れた土地が広がっていたこの地を開墾、ジャガイモ農場を作らせ、大成功させたというものだ。
国際社会の制裁で食糧不足が伝えられ、ジャガイモの重要性が増す中、北朝鮮当局は高級幹部を農場に送り込んだ。ジャガイモ栽培の陣頭指揮を取るのが目的だ。農業のことを農民に任せず、中央の官僚が指揮を取るのは、ソ連型の計画経済システムの名残りだが、幹部は仕事そっちのけで贅沢三昧にひたり、挙句の果てには不倫をしていたことが判明し問題になっていると、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
高級幹部らが農場にやってきたのは今年春のことだ。当局は、農場に負担がかからないようにと彼らに食糧を配給したが、幹部らは農場に豚肉、魚、卵を出せと要求した。そればかりか、宿舎には管理人を置き、掃除と洗濯をさせろとの要求も突きつけた。
情報筋は詳細に触れていないが、仕事そっちのけで毎晩毎晩宴会を繰り広げていたのだろう。農場はあいつぐ台風の襲来で被害を受けているが、その復旧で忙しいのに幹部の接待に農民を動員せざるを得ない状況だったという。
仕事もせずに農場に迷惑をかけるばかりの幹部に対して当然のことながら批判の声が上がったが、そんな中で中央党(朝鮮労働党中央委員会)による調査が始まった。それも、身内からの密告によるものだった。
農場に派遣されたある幹部は、半年に及ぶ派遣期間の間、一度たりとも平壌の自宅に戻らず、電話一本入れなかった。やがて不倫をしているのではないかという噂が立ち始めた。それを聞きつけた妻は、離婚を決心した上で、中央党に信訴(通報)の手紙を送ったという。
調査の結果、この幹部は農場で働く20代女性と不倫関係にあることが判明した。北朝鮮当局は、「家族は革命的であれ」などと言った高邁な理想を掲げてはいるものの、実際には不倫や、上下関係を利用して女性に性上納を強いる行為などが横行している。
中央党は訴えを受けて、現地で幹部の行動を調査した上で、批判書の作成を指示した。今後、思想闘争(集団批判を受けるなどの厳しい思想教育)を受けるものと思われる。また、近日中に更迭されるとのことだ。
平壌の機関に勤める幹部が問題を起こした場合、更迭された上で平壌から追放され、山奥の農場などの閑職に追いやられる。問題が政治的なものであれば、収容所に入れられることもある。妻は、自分自身や子ども、実家に累が及ぶのを避けて離婚するのが一般的だ。中には、当局から離婚を勧められることもあるという。
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