北朝鮮「アフリカ豚コレラ検疫所」が風俗業に変身した理由
韓国で猛威を振っている家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」(日本で発生している「豚コレラ」とは別のもの)。北朝鮮に面した地域で既に14例の感染が報告されている。また、この地域で見つかった野生のイノシシからアフリカ豚コレラのウイルスが発見されたことから、韓国軍はイノシシ駆除に乗り出している。
確認はされていないが、ウイルスは中国から北朝鮮を経て、イノシシが媒介となり韓国で広がっているものと思われる。
一方の北朝鮮。首都・平壌に病原菌が侵入することを防ぐ行政機関が、あろうことか風俗業に乗り出していたことが発覚、摘発されたと、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。
摘発されたのは、自動車衛生管理所だ。地方と首都・平壌を結ぶ道の途中に検問所を設置し、病原菌が平壌に持ち込まれるのを防ぐ役割をする一種の検疫所だ。同時に、汚れた車両が平壌に入り、美観を乱すことも防ぐ役割を果たしている。
検問所では、トラックの検疫と同時に、洗車を行っているが、その費用は車両1台あたり4ドル(約430円)だ。ところが、1円でも節約したいトラックドライバーは、平壌に入る前に車を停めて洗車してから検問所を通過するようになった。困ったのは自動車衛生管理所だ。
北朝鮮当局は、多くの機関に対して運営予算を交付せず、各機関が自力で予算を調達することを求めている。そればかりか、年間に一定額以上の上納金を納めることを要求している。当局が自動車衛生管理所に納めるよう指示したのは、年間2000ドル(約21万7000円)。
困った自動車衛生管理所の所長が考え出した商売が売春だったというわけだ。若い女性を雇入れ、検問所を通過するトラックドライバーに声をかけて、20ドル(約2170円)から30ドル(約3250円)を受け取って売春行為を行っていた。
ちなみに、平壌郊外にある間里(カルリ)駅の周辺には、数多くの売春宿が立ち並んでいるが、これは市内中心部とは異なり、取り締まりがゆるいことを利用したものだ。自動車衛生管理所も立地条件は似通っている。
自動車衛生管理所の売上がいかほどだったか、情報筋は言及していないが、やがて市民の間で「あそこは売春をしているらしい」との噂が広がったことを考えると、相当儲かっていたのだろう。
ところがどういうわけか、保安署(警察署)はそんな噂を聞きつけても、なかなか動こうとしなかったという。市民の間で悪い評判がさらに広がったことで、ようやく地元の党委員会が検閲(監査)を行った。所長は自己批判書を書かされたらしいが、それ以上の処罰を受けたかどうかは確認されていない。
郊外とは言え、平壌でイリーガルなビジネスを行うには、それなりの財力とコネが必要だ。この所長もおそらく、高官とのコネを使って、もみ消しを図ったものと思われるが、詳しいことは今のところわかっていない。
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