北朝鮮の工場で大規模爆発…原因は「党の押し付け」
「どこそこの工場が、自力更生で独自技術を発揮して新たな生産設備を開発、生産量が飛躍的に伸びている」というのは、北朝鮮の国営メディアの定番ネタだ。
だが、独自技術とやらには、チュチェ(主体)鉄に代表されるように、眉唾ものが多いようで、後続の報道がなければ、質や実用性、或いは技術そのものに問題があったのであろうと読み解ける。また、称賛され続けたとしても、実は問題だらけであることが、脱北者や北朝鮮国内の情報筋の話からわかるようになっている。
だが、ほぼ国是扱いの自力更生を止めることは許されず、ないないづくしの環境の中でなんとか成果を得ようとした結果、事故につながる例も少なくない。咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、清津(チョンジン)繊維化学工場の工業技術所で起きた深刻な事故について伝えている。
工業技術所は朝鮮労働党の自力更生、国家経済発展5カ年計画の初年である今年の末までに、原料と試薬を輸入に頼る「輸入病」の打破のため、技術革新案を出せとの指示に基づき、実験を行っていた。
先月19日正午ごろ、工場の技術課、研究組、生産現場の担当者が集まって、実験を行っていたところ、突如として試験炉が爆発した。その場にいた2人が重体、5人が軽傷を負った爆発は非常に大きく、近隣の住宅地にも爆発音が響き渡った。
工場の労働者たちは、工場の党委員会からの「技術革新案を出せ」と執拗に迫られ、急ぎでプロジェクトを進めていた結果、事故が起きたと党委員会を批判している。北朝鮮の工場は、党が主導的役割を担い、技術より思想が優先される構造となっており、技術者が技術的に難しいなどと口にすれば、「敗北主義者」などと激しく批判される。
実際、工場の技術者たちは、事故のリスクがあるとして、より詳しく研究を進めた上で実験を行うように党委員会のイルクン(幹部)を説得しようとしていた。彼らは、消費者が韓国製などの外国製品を買い求めるようになった今、質の悪い国内製の服を誰が買うのかと、自力更生、国産化政策そのものに批判的だったという。しかし、党委員会の要求に抗しきれず、性急な実験を進めた結果は最悪なものとなってしまった。
工場の技術者と労働者は、党が命令すれば現実に合わないことであってもともかくやらせて、事故が起きてようやく気が済むと言わんばかりの党委員会を裏で批判しつつ、「党はこんな実態を知らないことが残念だ」とため息をついていると情報筋は伝えた。
北朝鮮でこの手の事故が起きたのは、一度や二度のことではない。技術の現実と限界を知る技術者、経営を知る専門経営者が工場の運営に当たるべきだが、上述の通り、技術より思想を優先する党が工場を支配する構造となっており、金正恩総書記はそれをさらに強化する方針を示している。
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