金正恩氏の「デリケート情報」が洩れて10人が処刑の危機
中朝国境に面した北朝鮮の両江道(リャンガンド)一帯では現在、国家保衛省(秘密警察)などが国内情報を外部に流出させる行為に対する大々的な摘発を行っているという。きっかけとなったのは先月中旬、金正恩党委員長が道内の三池淵(サムジヨン)郡を視察したことだ。
このとき、金正恩氏が直接参加する「1号行事」の情報が事前に外部に漏れたとして、現地で大騒ぎになっているのだ。
普通のトイレを使えない
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が先月末、両江道(リャンガンド)の幹部消息筋の話として伝えたところでは、「1号行事に関する情報の漏えい元を解明するため、国家保衛省が大々的な検閲に乗り出している。その結果、行事の秘密情報が違法携帯電話によって外部に送信された形跡が浮かんだ」という。
違法携帯電話とは、主として中国キャリアの携帯電話機だ。国境をまたいで中国との通話が可能であるだけでなく、韓国などに国際電話をかけることもできる。そのため北朝鮮当局は従来から厳しく取り締まっており、摘発されればスパイ扱いされて厳罰を受けることもある。
そして、現地のデイリーNK内部情報筋が今月4日時点の情報として伝えたところでは、これまでに10人余りが保衛省によって逮捕されたという。
「道保衛部は令状も持たずに家々に踏み込み、捜索を行っている。現場で見つかった中国の携帯電話が多数押収され、韓国の映像ファイルが記録されたUSBメモリもいくつも見つかった」
また、道保衛部は最高指導者の身辺の安全と直接関わる問題だけに、今回の事案を迅速に処理する姿勢を見せているとのことで、通常なら6カ月程度を要する捜査観察、予審、裁判などの手続きを大幅に短縮する可能性があるという。
金正恩氏は普通の人と同じトイレを使えない事情もあり、代用品を持ち歩いているとの説もあるが、米国のある軍事専門家が以前、北朝鮮の核兵器開発をけん制するために「金正恩専用トイレを爆撃せよ」と提案したこともあった。それだけに、北朝鮮当局にとって1号行事の情報管理は、何より気を使うデリケートな情報なのだ。
一方、現地の人々の間では「捕まった人たちは外部に情報を流した犯人ではない」との声が上がっているという。それでも、保衛部にとってはその辺の事実関係より、誰かに責任を負わせることを急ぐ雰囲気があるとのことで、逮捕者が処刑されてしまう危険性を危惧しているという。
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