【角田裕毅を海外F1ライターが斬る:第4戦】レッドブル育成プログラムの停滞と首脳陣の見込み違い
F1での4年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は、第4戦日本GPに焦点を当てた。
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最近私は、年老いたヘルムート・マルコが少し気の毒になり始めている。「珍しいですね! どこか悪いんじゃないですか?」って、そんなに心配しなくても大丈夫。今朝、ちゃんと薬を飲んだし、頭がぼんやりし始めたなんてこともなく、目もちゃんと見えている。君が一瞬見せた素っ頓狂な表情も見逃さなかったぐらいだ。
マルコが過去25年で150人ぐらいのドライバーの面倒を見て、そのほとんどを大成させることができず、レッドブルの金を無駄遣いし続けているのを見るのはとても面白かった。だが、どんなコメディもいつかは終わりを迎えなければならない。マルコが有能な若手ドライバーを見つけ出そうとしては失敗する姿が、少しもの悲しく見えてきたし、うんざりしている人も少なくないだろう。
昨年末にレッドブルがジュニアプログラムから外した4人のドライバーは、FIA F2で今、ランキング8位以内に入っている。ゼイン・マローニは選手権トップだし、デニス・ハウガーは3位だ。私の言いたいことは分かるだろう?
ええと、君はまた理解していないようだが、この注意深く練られた話は、最終的に角田裕毅の話題につながっていくので、どうか邪魔せずに、最後まで語らせてほしい。
マルコは、レッドブル・レーシングのシートに値するドライバーとして角田を見たことは一度もなかった。パートナーのホンダを喜ばせるために、2021年にBチームのシートを提供した後、他のジュニアドライバーと違って、昇進の対象とは考えてこなかったのだ。ところがそれも、マルコの見込み違いのひとつになりつつある。
角田は2021年には経験あるピエール・ガスリーに太刀打ちできなかったが、2022年後半には匹敵するパフォーマンスを見せ始めた。そして2023年にはニック・デ・フリースを簡単に打ち負かし、その後、チームに加入してきたリアム・ローソンとダニエル・リカルドよりも速さを見せた。
クリスチャン・ホーナーは、ファエンツァのBチーム(レーシング・ブルズだっけ、RBだっけ、いまだに呼び方が分からない)でリカルドを走らせて、今シーズンを通して評価をするつもりだった。しかし、状況が変わってきた。ここまでの4戦で角田がリカルドに予選で4勝し、チームのポイント7点すべてを稼いでいる。メルセデスのルイス・ハミルトンとのポイント差はたったの3点だ。素晴らしい形でシーズンのスタートを切ったと言うほかない。
実は私は、日本GP前に、オーストラリアのビーチリゾート、ポートダグラスでのんびり過ごしていたのだが、急きょ鈴鹿に行くことを決めた。週末を通して、日本のファンの前で走る角田に注目してみて、ずいぶん成長したものだと感心した。
角田はサーキットにいるときにはレース以外のことに無関心なばかりに、会見等でずれた答えをすることがあって、しばしば仲間のドライバーたちがそれを面白がっている。だが彼らはもちろん、コース上の角田をリスペクトしている。マックス・フェルスタッペンやセルジオ・ペレスは、同じレッドブル・グループの仲間として、角田の入賞を称賛した。
このように角田の力は周囲から認められつつあるが、それでもレッドブルへの昇格は難しいだろう。今年のペレスはチームが求める仕事を完璧にこなしているからだ。ペレスがフェルスタッペンのすぐ後ろの位置でフィニッシュすることで、チームはこの4戦で3回、ワンツーを達成した。この調子を維持すれば、ペレスの契約が再延長される可能性が高い。
一方、リカルドは、今シーズン末でRBを離れることになりそうだ。もしかするとシーズン中の解雇もあるかもしれない。結局レッドブルは、ファエンツァのチームに角田を残すために5年目の契約を結び、チームメイトにローソンを起用する以外にほとんど選択肢はないだろう。
来年の状況次第では、2026年にふたりのうちどちらかがレッドブルでフェルスタッペンのチームメイトに起用されるかもしれない。だが、2026年にはホンダとアストンマーティンのパートナーシップがスタートすることも忘れてはならない。ストロール氏はついに息子を外す決意を固めて、角田にシートを提供する気になるだろうか……。
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筆者エディ・エディントンについて
エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。
ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。
しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。
ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。
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