ニュル24時間:スバル、“想定外”のアクシデントが頻発し予選レースはリタイア
通算5度目のSP3Tクラス制覇を目指し、2018年もニュルブルクリンク24時間レースに挑むスバルテクニカインターナショナル(STI)は4月15日、ドイツ・ニュルブルクリンクで行われた予選レースに参戦するも、マシントラブルによりリタイアを喫した。
今年2月に富士スピードウェイでシェイクダウンが行われ、先月ドイツに渡ったSTIのニュル24時間参戦車両、『スバルWRX STI』。14日(土)から始まった予選レースでは同マシンのドライバーとしてカルロ・バンダムとティム・シュリックのコンビがエントリーし、6時間レースに臨んだ。
チームメイトの山内英輝、井口卓人は16日(月)から鈴鹿サーキットで行われるスーパーGT公式テストを優先するため今レースを欠場している。
そんなスバル陣営には今戦、さまざまな試練が待ち受けていたが、まずチームを驚かせたのがエキゾーストの音量が規定の130dbを超過していた点だ。スバルWRX STIのエキゾーストシステムは2017年仕様から変更されておらず、STIの辰己英治監督も「さすがに予想していませんでしたね」と語っている。
走行前にオフィシャルからこの点を指摘されたチームは、エンジンのシフトアップポイントを300回転分下げることで対応していくが、ピークパワーの面で不利となるのは避けられず。目標としていた9分を切るラップタイムには公式予選のアタックでも約7秒届かなかった。
「新しいギヤボックスはローギアード設定としているので、エンジンの改善と合わせて音量が増した可能性はあります」と辰己監督。
「今後は全開走行ができるよう、テールパイプに触媒を追加することで音量を下げる対策を打ちます。通気抵抗はやや増えるでしょうが、タイムロスするほどの影響はないと見ています」
■改善点がトラブルの引き金に……。
雨上がりのレース日となった15日(日)は朝までフルウエットだったものの、その後は晴天に恵まれ、スタート時には路面もドライコンディションに変わっていた。
音量規制という予期せぬハンデを負いながらも総合34番手/SP3Tクラス1番手(出走2台)で6時間レースのスタートを迎えたスバルだったが、レースではタイヤの偏磨耗に苦しむこととに。
富士のシェイクダウンで表れなかったこの現象は、“ノルドシュライフェ”を走行してきたマシンのタイヤ内側だけが摩耗し、外側はまったく減らないというもの。ドライバーのバンダムは「アンダーステアがとても強かった」と振り返り、コーナーリング時に適切なグリップを得られていなかったことを窺わせた。
日本での事前テストを担当した山内と井口からはそのような報告はなかったことから、辰己監督も驚きを隠せないながらも原因について次のように語っている。
「これまでとまったく違うインプレッションだったので驚きました。原因として思い当たったのは、ブレーキを強化するためトレッドを広げたことですね。これによって、サスペンションの上下動に影響が出て、さらにはギアボックスやAWDシステムにまで影響がおよび、いままでになかったような挙動に変わっていったと思われます」
「そうすると、カルロ(・バンダム)のコメントや起きている現象すべてに合点がいきます。予想外のタイヤのダメージは、タイヤ本体の問題ではなくクルマ側のセッティングの問題であることがはっきりしました」
その後、アンダーステアに悩まされながらも走行を続けたスバルだが、レース中盤には今年新しく導入したトランスミッションにトラブルが発生。20周、距離にして約490kmを走ったところで無念のリタイアを喫することとなった。
2018年型マシンに搭載されたギヤボックスは操作性の改善、ならびにシフトショックの低減を狙った設計がなされた新仕様のものだったが、辰己監督は「どうもその改善点がトラブルの原因を導いていそうです」と分析。
また、今後のテストや本戦については、実績のある2017年型のトランスミッションが使われることを示唆するとともに、今回の予選レース出たトラブルは「どれも予想していなかったものでしたが、それが今回発見できたことが最大の収穫でした」と総括した。
予選レースをリタイアという結果で終えたスバルは、4月20日にニュルブルクリンクで実施されるテストデーに参加予定。朝から夕方まで、長い走行枠が設けられる同テストでマシンの最終チェックを行なっていくが、ドライバーには予選レースを欠席した山内と井口が起用される予定だ。
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