期待の新鋭が天性のドライビング力で6位の快挙【今宮純のF1アゼルバイジャンGP採点】
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第4戦アゼルバイジャンGP編だ。
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☆ ルイス・ハミルトン
4冠王者になってから今季初めての勝利、通算63勝目でポイントリーダーへ。勝ち方にもいろいろある。あのミハエル・シューマッハーも2001年スペインGP、首位ミカ・ハッキネンが最終ラップにエンジンを破損、チェッカーを受けとった。「ミカには気の毒なレース、こんな形で勝ちたくはなかった」。まったく同じことを口にしたハミルトン、こういう勝ち方もあるのだ。
☆☆ ランス・ストロール
昨年予選で9番手フェリペ・マッサに先行する8番手、今年もセルゲイ・シロトキンを僅差で抑えて予選11番手。現時点のFW41は昨年のFW40より予選タイムが劣る情況だが乱戦を潜り抜け、8位入賞。セクター1に続く直角ターン攻略に自信あり。
☆☆ ピエール・ガスリー
危機回避能力を見た。土曜予選、14コーナーでスロー走行するハートレーをとっさの判断で右によけ、クラッシュを免れた。日曜決勝、20コーナー付近ですすり寄ってきたケビン・マグヌッセンに対し、ぎりぎり左側ラインを守った。この“2件”どちらもファイン・プレー。
☆☆☆ カルロス・サインツJr.
ローダウンフォース設定だけにハンドリングはシビア、PUエネルギー・マネージメントもそう。今年最も難しい条件のなか、ヒュルケンベルグ脱落後にルノー最高位の5位にまとめた。
☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
48周目の攻防、1コーナーでインサイド・ラインを突く攻撃はけして無謀ではない。勝負すべきところだった。それによってフラットスポットができても追走、ファイターらしさがこもっていた。
☆☆☆ ダニエル・リカルド
2台がぶつかった瞬間、ピットウオールにいたエイドリアン・ニューウェイは察知しただろう。車間距離ゼロ、後続マシンはダウンフォースを全く失い、減速できなくなる(リカルドのフロントがわずかに浮き上がった)。大事故に至らずに済み、先輩として自省する彼の態度をチーム側はどう受けとめるか。オーナーのディートリッヒ・マテシッツ氏は……?
☆☆☆ キミ・ライコネン
PPを取りこぼした予選Q3アタック、16コーナーの乱れは彼の100%ミスだったのか。エントリーはオーバーペースではなく、突然なテール・スライドには他の要因があったような気がする。あそこまでセクター・ベスト、完全にコントロールしていたからだ。
スタート後、エステバン・オコンとの接触によって追撃戦を強いられるもタイヤ状態をケアして、しっかりとリカバー。6番グリッドからの2位ゲットは14年以降初めて、小さな喜びだろう。
☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
満身創痍。1周目のシロトキンとの接触によってウイングを破損、フロアも小破し左側タイヤ2本だけとなったマシンをピットまで“帰還”させたプレー。まさに耐久レース、そこから7位まで這い上がる闘争心(しつこさ/失礼)。WECフル参戦を前にしてF1で戦う気概がはっきり見えた。勝利など望めない今はそれだけに燃えるアロンソ。
☆☆☆☆ セルジオ・ペレス
16年最初のバクー予選2番手、ギヤボックス交換による7番グリッドから3位へ。それを思い出させるFP1、SSタイヤで3番手発進はイニシャル・セットがまとまり、メルセデスPU設定も順調な証。スタートから混乱に巻き込まれても、マシンに自信があるときの彼はリヤタイヤを十分にケアしながら展開を読む。土壇場で得た3位ポジションをベッテルから守り抜き8度目の表彰台、よみがえったフォース・インディア。
☆☆☆☆☆ バルテリ・ボッタス
ここまで昨年モナコGPから18戦連続入賞、ハミルトン29戦記録には及ばなくても続けていた。それが首位走行中のパンクで止まった。デブリを前輪で踏むと、その突起部分が起き上がるようになって後輪に刺さる。
これは公道レースなどで過去にあった実例だ。まったく不運としか言いようがない。SSタイヤで40周をカバー、ハミルトンのようなロックアップもなくペースは完璧。SC解除されたとき、ベッテルの攻撃をセンター・ラインで反応してしのいだのも完璧。ただデブリという“小悪魔”に、4勝目を完全破壊された。
☆☆☆☆☆ シャルル・ルクレール
ドライバー・オブ・ザ・デイ、受賞の内訳は1位ルクレール16%、2位ボッタス11%、3位ベッテル10%で獲得。モナコ出身ドライバーとして50年モナコGPにルイ・シロン(50歳)がマセラーティで3位入賞、58年ぶりにルクレール(20歳)がアルファロメオ・ザウバーで6位に。
金曜から正しいラインをつかみ、昨年のザウバー・ベストタイムを2秒以上も短縮。これはPUの違いだけではない、彼自身のドライビング力だ。予選でもアロンソに0.055秒差の14番手、細かなデータだがセクター1(5コーナー手前46m)で8位の224.9KMHをマーク。
レッドブル勢より高い速度で突っ込んでいたのだ。トーイングも巧く使い、フィニッシュラインでは2位の338.8KMHマークをマーク。そして混乱レースでアロンソと競り合い、自力で6位入賞、モナコ育ちは公道コースに強いのか。来月の母国モナコGPを注視してみよう。
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