ニスモZのワン・ツーも優勝3号車Niterraと2位23号車MOTULの大きなギャップ。今季のGT500の難しさが垣間見えた富士戦
スーパーGT第2戦富士スピードウェイ、GT500クラスの決勝は3号車Niterra MOTUL Zが独走で今季初優勝、2位には23号車MOTUL AUTECH Zが入り、ニスモがワン・ツーを飾る結果となった。今季からブリヂストンタイヤに変わったニスモ陣営が早くも高いパフォーマンスを見せたレースとなったが、気になるのが3号車Niterraと23号車MOTULが一時、約30秒ものギャップが空いてしまったことだ。2台にはどのような違いがあり、そして、大きなギャップを生むことになったのか。レース後の取材を進めていく中で、今季のタイヤの持ち込みセット数、そしてタイヤ選択の難しさが浮上してきた。
今回の3号車Niterraのサクセスウエイト(SW)は10kg、23号車MOTULはSW12kgと、ほぼ同じ条件で望んだ第2戦富士。予選結果も2番手3号車Niterraと3番手23号車MOTULの合算タイムの差は、わずか0.02秒差という、ぼぼ同パフォーマンスで決勝に臨んでいた。
ところが、決勝では2台の違いが大きく出る内容となった。第1スティントで3号車Niterraの高星明誠がスタート直後の1コーナーでトップの17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTをアウトからかわすと、そのまま後続を引き離して周回を重ねていく。23号車MOTULの千代勝正も23周目に17号車Astemoをパスするも、その時点で2台には3.9秒の差がついていた。
その後のピットストップで23号車MOTULは千代からロニー・クインタレッリに変わるが、ピットの制止時間が長くなってしまったこともあり、1回目のピットストップを終えた時点でトップの3号車Niterraと23号車MOTULの差は約12秒に。そこから、ペースの上がらない23号車MOTULは17号車Astemoに交わされ、8号車ARTA MUGEN NSX-GTとバトルをしたこともあり、第2スティントの終わりには、トップの3号車Niterraと3番手MOTULの差は約30秒になっていた。
第2スティントの内容について、レース後、担当した23号車のクインタレッリが振り返る。
「最初はそんなに悪くなかったのですけど、その後のGT300の処理でラインを外したところでピックアップがついてしまいました。それと、タイヤ的に硬い方向だったので、ピックアップがなくてもスライドが大きかった。今回のコンディションに合ったタイヤは2セットしかなかった。ここに来る前に(この時期の)ブリヂストンのデータはないので、ブリヂストンと相談しながら実績のあるタイヤを選んできましたけど、走ってみたら、もう一種類の方が、路面にどんどんラバーが乗ってきた時に合っていたという結果ですね」
このコメントからも、23号車の今回のタイヤ選択が、いわゆる『外してしまった』状態だったことが伺える。今季のスーパーGTの規定変更でタイヤの持ち込みセット数が減り、今回の3時間レースでは6セットのタイヤ使用(通常のレースは4セット)が認められていた。
その内訳は本命タイヤが4セット、バックアップ/セカンドセレクト的なタイヤが2セットの組み合わせがセオリーとして考えられ、今回の23号車はコンディションに合った『当たり』のタイヤは2セットしかなかった模様。そのタイヤで予選〜決勝第1スティント(千代)、第2スティントのクインタレッリは『コンディションに外れた』タイヤで走行しなければならない状態になってしまったのだ。
第1スティント、そして第3スティントを担当した千代が、苦しい状況が予想された第2スティントを担当したクインタレッリに、感謝を述べる。
「ロニーさんに(第1、第3スティントと)同じタイヤがなくて、ロニーさんには苦しいスティントを任せてしまった。逆にロニーさんじゃなかったら、あそこまで耐えられなかったと思います。ちょっと辛い役目をロニーさんには受け持ってもらって、17号車、8号車ともバトルも粘り強く戦ってくれて、本当に感謝しています」と、レース後に話す千代。
一方の3号車Niterraは、第1スティントの高星がそのまま第2スティントを走るダブルスティント戦略を採用、第3スティントを三宅淳詞が担当した。3号車Niterraの島田次郎監督は「タイヤはよかったんじゃないですかね。3スティント目のタイヤは少しピックアップがありましたけど、よかったです。(23号者との違いは?)そこは言えないです。ご想像にお任せします」と、ひとまず3号車は『当たり』だったことが伺える。
3号車Niterra:高星ー高星ー三宅
23号車MOTUL:千代ークインタレッリー千代
今回の3号車Niterraと23号車MOTULはそれぞれ戦略も異なり、タイヤ選択も異なっていた。そして、最後の第3スティントは2番手の23号車千代がトップとの差を13秒差まで詰めたことからも、ドライバーごとにタイヤの種類も異なっていたことが推測される。いずれにしても、タイヤ選択、持ち込み数やその種類が、今のGT500の戦いは大きな影響を及ぼすことを改めて感じさせる内容となった。3号車の千代が今回のレースを振り返る。
「悔しいけど、僕たちの持っているものの中ではベストを尽くせたし、3号車とは今回、タイヤの選択が違ったので、ドライバーではどうにもできない部分があった。ここから学んで、僕らはまた強くなればいいと思っています。でも、ニッサン/ニスモとして今年、僕も先頭に立って開発に参加させてもらって、ニッサンZ NISMO GT500がしっかりと富士で他車を寄せ付けないパフォーマンスを見せられたということは、開発陣と進めてきたことの強さが証明できてよかったと思います。23号車チームとしては、まずは3号車の優勝を祝福して、僕らはまだまだ次があるので、ここから上を目指していければいいかなと思っています」
今回、苦しいレースになってしまったクインタレッリも、今後に期待を寄せる。
「今年は持ち込めるタイヤのセット数が減ったことで、結局なんとか、最低限の周回数をチームとしてはできた。まあ、ニスモとしてブリヂストンに変わって、2戦目でワン・ツーになって表彰台にも上がれたし、シーズンはまだ始まったばかしですし、23号車としては岡山でも富士でもしっかりポイントを取れた。富士は夏にもう1回あるので、すごくいい週末だったんじゃないかなと思います」
もちろん、2位になったとはいえ、ニッサンのエース車両である23号車MOTULが同じZに負けたことには、悔しさも残る。23号車MOTULの中島健監督が今回のレースを総括する。
「そりゃあ、悔しいに決まっているじゃないですか。タイヤは3号車とは違いましたね。まあ、その差が大きかったのかなというのもまだわからないくらい、(ブリヂストンタイヤの)経験値が少ないです。ロニーが履いたタイヤ、あのタイヤが大丈夫だったはずなのに……ちょっと厳しかったですね。タイヤについては、まだまだお勉強中なところです。我々としても、あえてひとつの方向に行かずに、いろいろ試しています。今回も対3号車で見たら良くないレース展開に見えたかもしれないですけど、対17号車、8号車で見たら前で走ることができたので、そういう意味では、何が正解だったかはわからない状況じゃないですかね」
タイヤの持ち込みセット数が減ったことで、各チームのタイヤ選択は昨年に比べて、大きなプレッシャーと慎重さが求められることになった。そして、同じタイヤメーカーであっても、ここまでのペースの違いになることからも、今シーズンのGT500の戦いは、当日のコンディションとのマッチングがますます重要になる、予測が極めて難しい展開になることが確実なようだ。
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