【新連載】F1歴史アーカイブス:レッドブルとタッグを組み、いよいよ真価が問われるホンダ。かつての黄金時代再来なるか
様々なF1データをひも解きながら、現在と過去の歴史を読み解くコラムをF1速報webで新連載。初回はオートスポーツWEBでも全文を掲載。今回はいよいよ動き始めそうなホンダの数字と記録についてモータースポーツライターの林信次氏が語る。
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ホンダのF1GPでの活躍がいよいよ現実味を帯びてきた。
2015年に名門マクラーレンと組んで復帰して以来、しばらく苦戦が続いていたが、2019年にレッドブルと新たなコンビを組んでからは、開幕戦オーストラリアGPでエースのマックス・フェルスタッペンが一時トップを走行した後に3位表彰台を獲得、第2戦バーレーンGPから第4戦アゼルバイジャンGPまで3戦連続で4位に入賞した。また第3戦中国GPでは新鋭ピエール・ガスリーがレース中の最速ラップを記録するとともに、得点圏内である10位以内にトロロッソ・ホンダを含めた3台が食い込んだのだ。
ホンダ製パワーユニット(PU/エンジン)を搭載し始めて2年目となるトロロッソも元々レッドブルのジュニアチームなので、両陣営が一致団結して臨めば、揃って戦績向上も夢ではない。
開幕戦の3位表彰台は2008年イギリスGPのルーベンス・バリチェロ(ホンダRA108)以来11年ぶり。中国GPの得点圏内3台入賞は1991年日本GP以来、実に28年ぶりの快挙ということになる(当時は6位までが入賞)。
1991年の日本GPは、最終ラップの最終コーナーで首位アイルトン・セナ(マクラーレンMP4/6・ホンダV12)が減速して僚友ゲルハルト・ベルガーに優勝をプレゼントした衝撃の一戦だった。6位にステファノ・モデーナ(ティレル020・ホンダV10)が食い込んだこのレースは、もう一台のティレル・ホンダに乗る日本人初のF1レギュラー中嶋悟にとっての引退一戦前の晴れ舞台でもあった。
年季の入ったファンにとっては、つい先日のことのように鮮明な記憶だが、いま28歳未満のファンであれば生まれてもいない。つまり、ホンダの黄金時代を知らないファンが増えている現在、今後訪れるだろうホンダの活躍ぶりは、懐かしいというよりは初めての体験となっていくことになる。
F1GPの歴史は長い。第3戦中国GPは、1950年に世界選手権F1GPが始まって以来、通算1000戦目に相当する記念大会だった。
ホンダが日本車として初めてF1GPにデビューした1964年ドイツGPは、通算127戦目に相当し、難コースとして知られたニュルブルクリング北コースが舞台だった。今から55年も前、東京オリンピック開催の2カ月前の出来事だ。
エンジンもシャシーも自製した日の丸カラーのマシンは、翌1965年メキシコGPと1967年イタリアGPで優勝を遂げ、日本の自動車業界を大いに鼓舞すると同時に、高度成長真只中で急増するカーマニアたちを熱狂させた。しかしホンダは1968年末に一旦F1活動を休止する。ここまでが第一期活動となる。
通算1000GPのうち、ホンダが参戦したのは今や425戦を数えるが、そのうちの88戦はシャシーも自製する『コンストラクター』としての参戦だった。
1983年に始まったホンダ第二期F1活動は、ウイリアムズやロータスやマクラーレンといったイギリスの強豪チームにエンジンを供給する形で行なわれた。1000馬力を優に超すV6ターボエンジン全盛期に登場し、1986〜1987年とウイリアムズがコンストラクターズ・チャンピオンに輝き、1988〜1991年はマクラーレンがタイトルを引き継ぎ、ホンダエンジン搭載車が6年連続でチャンピオンとなった。
F1GPにはエンジン選手権は存在しないので、エンジン供給メーカーはいかに強力なコンストラクター(≒チーム)と組めるかが重要になる。そしてホンダは1992年末に活動休止した。
その後、ホンダの関連会社である『無限』がF1活動を続けたが、再度ホンダとしてF1GP復帰を果たしたのは、新興チームのBARと組んだ2000年から。2006年には同陣営を引き取って『ホンダ』としての活動に改まるが、世界的な金融危機リーマンショックのあおりを受けて2008年末に再度活動休止。
第三期活動中での勝利は2006年ハンガリーGP優勝(ジェンソン・バトン)のみにとどまった。そしてF1技術規定が大変革された2014年以降、従来のエンジンと回生エネルギーシステムを併用するハイブリッド新時代到来となるや、ホンダも一年遅れで参入。2015年〜2017年はマクラーレンとタッグを組み苦戦したものの、2018年はトロロッソ、そして今年はレッドブルとタッグを組みタイトル争いを目指しているところだ。メルセデス、フェラーリ、ルノーという強豪を相手に、ホンダの真価がいよいよ問われることになる。
ホンダ・エンジン車によるF1GP勝利はこれまでに72勝、ポールポジション(予選1位)は77回。これらの数字がまた増え始めるのは、それほど遠い将来ではなさそうだ。もし4台のホンダ・エンジン車が決勝レースの上位4位までを独占したら、それは1987年イギリスGP以来のこととなる。いつやってくるだろう。
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