“第二の祖国”発言が話題のグリーズマン、ウルグアイとの大一番を迎える
サッカーキング2018年7月6日(金)13時4分
フランス代表のグリーズマン [写真]=Getty Images
「ウルグアイは、僕の第二の祖国だ」。フランス代表FWアントワーヌ・グリーズマンが発したこの言葉が、ちょっとした話題になっている。
フランス代表は、6日に行われる2018 FIFAワールドカップ ロシアの準々決勝でウルグアイ代表と対戦する。この一戦に先駆けて、FIFAはグリーズマンに焦点を当てた特別記事を公式サイトに掲載。冒頭の発言は、その記事の中にあったものだ。
グリーズマンが生まれたのは、フランス第二の都市リヨンの郊外にある街、マコン。祖父はポルトガル人で彼もまたサッカー選手だが、ウルグアイとは縁もゆかりもない。むしろ、13歳でスペインのバスク地方に移住して以降、すべてのキャリアをイベリア半島の国に捧げてきた。昨夏に結婚した妻エリカさんもバスク生まれのスペイン人だ。
しかし、「僕が愛する国と人々であり、あそこには多くの友人がいる」と語ったように、ブラジルとアルゼンチンに挟まれた“南米の小国”ウルグアイは、グリーズマンの人生に大きな影響を与えてきた。
“ウルグアイ愛”が芽生えるキッカケとなったのは、今から9年前のこと。グリーズマンは2009年9月にレアル・ソシエダでトップチームデビューを果たす。当時の指揮官が、ウルグアイ出身のマルティン・ラサルテだった。バスク地方をルーツに持つラサルテは、グリーズマンにとって「プロのサッカー選手になる」という夢を叶えてくれた恩師であり、父親のような存在でもあったという。
さらに、チームメイトにはウルグアイ代表歴を持つFWカルロス・ブエノがいた。ラサルテが“父親”なら、11歳年上のブエノは“兄貴”。グリーズマンは彼からシュート技術だけでなく、ウルグアイ人の国民的飲料であるマテ茶の飲み方も教わったという。その後も、ウルグアイ人選手が新たなチームメイトとなる度に彼らと交流を図り、遠く離れた異国の文化を吸収していった。
アトレティコ・マドリードとフランス代表のエースへと成長を果たした今でも、グリーズマンがウルグアイに注ぐ愛情は半端ではない。ウルグアイの国内リーグの試合を視聴するだけでなく、強豪ペニャロールのサポーターとなって彼らが歌うチャントも習得。自身のトレードマークである“背番号7”が入ったユニフォームまで所有しているという。さらに、エンツォ・フランチェスコリやアルバロ・レコバ、1950年のブラジルW杯優勝メンバーであるフアン・アルベルト・スキアフィーノなど、ウルグアイサッカー界のレジェンドたちの名前も覚えているそうだ。ウルグアイ好きが高じて、彼らが使う独特のスペイン語を操ることもできるようになった。
また昨年10月には、ある行動が話題となった。アトレティコ・マドリードの同僚であるディエゴ・ゴディンとホセ・ヒメネスのウルグアイ代表コンビがロシアW杯の本大会出場権を確保してスペインへと帰国した際、グリーズマンはマドリードの空港で彼らを出迎えたのだ。しかも、ウルグアイ代表の水色のユニフォームを身にまとい、片手にはマテ茶セット(茶器と水筒)を抱えていた。“ザ・ウルグアイ・スタイル”と言うべき格好で撮影したその時の写真は、SNS上で瞬く間に拡散。ウルグアイ国民の間で大きな反響があったのは言うまでもない。
「生粋のウルグアイ人以上にウルグアイ人らしい」と評されることもあるグリーズマンは、だからこそ今回の試合の難しさを理解している。中でも、ウルグアイサッカーの根底に流れる“ガーラ・チャルーア”の精神を警戒しているという。
ウルグアイの先住民チャルーア族から引き継がれたとされる“ガーラ”は、勇敢さと不屈の精神力を表す。単に闘志を指すのではなく、失敗や厳しい状況に直面しても諦めずに戦い続けることを意味する。そしてそれは、アトレティコ・マドリードの戦い方に通じるとグリーズマンは話す。
「彼らはチームメイトのために、全員が一丸となってプレーする。僕もアトレティコでそれを常に体感しているし、素晴らしいことだ。そういうスピリットは大好きだ」
「ウルグアイはアトレティコのように戦うだろう。うまく時間を使い、倒れ、審判に圧力をかけるはずだ。僕らはそういった戦い方に慣れないといけない。試合は退屈なものになるだろうし、彼らは意図してそういう試合に持ち込もうとするだろうからね」
もちろん、娘ミアちゃんの名付け親でもあるゴディンやヒメネスとの“同僚対決”を楽しみにしている。準々決勝でウルグアイと対戦することが決まると、大量のメッセージを送ったという。その一方で、フランス代表のチームメイトには2人の攻略法を伝授したそうだ。
「ゴディンのおかげで、僕はアトレティコへ移籍したいと思うようになった。彼はベストフレンドだよ。僕らは練習場でも、プライベードでも、いつも一緒だ。友人と対戦するのは他の試合よりも大変だね。僕が彼のことを知っているように、彼も僕のすべてを把握しているからね。それにヒメネスもアトレティコで一緒にプレーしている」
“ウルグアイ愛”をアピールし過ぎたためか、ルイス・スアレスからは「半分ウルグアイ人とは言っても、彼はフランス人だし、ウルグアイ人の真の感情は分からない」と釘を刺される一幕もあった。それでもグリーズマンにとって、今回の一戦が特別なものであることに変わりはない。
フランス代表とウルグアイ代表が最後に対戦したのは、2013年6月のこと。国際親善試合で、ウルグアイ代表が1-0の勝利を飾った。この時、グリーズマンは代表デビューを果たしていなかった。第二の祖国、そして盟友との真剣勝負の場に立ち会うのは、今回が初めてのことになる。さらに勝利を収めれば、自身初のW杯ベスト4進出が決まるのだ。
今大会はここまでPKで2ゴールを奪っているものの、“チームプレー”に徹している印象があるグリーズマン。キリアン・ムバッペやポール・ポグバなど個性派揃いのフランス代表にあって、あえて“ウルグアイらしさ(アトレティコらしさ)”を発揮しているようにも見える。だが、6日に戦う相手は“本家”ウルグアイ代表だ。
果たして、ニジニ・ノヴゴロド・スタジアムではどんなプレーを見せてくれるのか。背番号7には、フランス国民だけでなく、ウルグアイ国民からも熱い視線が注がれることだろう。
(記事/Footmedia)
フランス代表は、6日に行われる2018 FIFAワールドカップ ロシアの準々決勝でウルグアイ代表と対戦する。この一戦に先駆けて、FIFAはグリーズマンに焦点を当てた特別記事を公式サイトに掲載。冒頭の発言は、その記事の中にあったものだ。
グリーズマンが生まれたのは、フランス第二の都市リヨンの郊外にある街、マコン。祖父はポルトガル人で彼もまたサッカー選手だが、ウルグアイとは縁もゆかりもない。むしろ、13歳でスペインのバスク地方に移住して以降、すべてのキャリアをイベリア半島の国に捧げてきた。昨夏に結婚した妻エリカさんもバスク生まれのスペイン人だ。
しかし、「僕が愛する国と人々であり、あそこには多くの友人がいる」と語ったように、ブラジルとアルゼンチンに挟まれた“南米の小国”ウルグアイは、グリーズマンの人生に大きな影響を与えてきた。
“ウルグアイ愛”が芽生えるキッカケとなったのは、今から9年前のこと。グリーズマンは2009年9月にレアル・ソシエダでトップチームデビューを果たす。当時の指揮官が、ウルグアイ出身のマルティン・ラサルテだった。バスク地方をルーツに持つラサルテは、グリーズマンにとって「プロのサッカー選手になる」という夢を叶えてくれた恩師であり、父親のような存在でもあったという。
さらに、チームメイトにはウルグアイ代表歴を持つFWカルロス・ブエノがいた。ラサルテが“父親”なら、11歳年上のブエノは“兄貴”。グリーズマンは彼からシュート技術だけでなく、ウルグアイ人の国民的飲料であるマテ茶の飲み方も教わったという。その後も、ウルグアイ人選手が新たなチームメイトとなる度に彼らと交流を図り、遠く離れた異国の文化を吸収していった。
アトレティコ・マドリードとフランス代表のエースへと成長を果たした今でも、グリーズマンがウルグアイに注ぐ愛情は半端ではない。ウルグアイの国内リーグの試合を視聴するだけでなく、強豪ペニャロールのサポーターとなって彼らが歌うチャントも習得。自身のトレードマークである“背番号7”が入ったユニフォームまで所有しているという。さらに、エンツォ・フランチェスコリやアルバロ・レコバ、1950年のブラジルW杯優勝メンバーであるフアン・アルベルト・スキアフィーノなど、ウルグアイサッカー界のレジェンドたちの名前も覚えているそうだ。ウルグアイ好きが高じて、彼らが使う独特のスペイン語を操ることもできるようになった。
また昨年10月には、ある行動が話題となった。アトレティコ・マドリードの同僚であるディエゴ・ゴディンとホセ・ヒメネスのウルグアイ代表コンビがロシアW杯の本大会出場権を確保してスペインへと帰国した際、グリーズマンはマドリードの空港で彼らを出迎えたのだ。しかも、ウルグアイ代表の水色のユニフォームを身にまとい、片手にはマテ茶セット(茶器と水筒)を抱えていた。“ザ・ウルグアイ・スタイル”と言うべき格好で撮影したその時の写真は、SNS上で瞬く間に拡散。ウルグアイ国民の間で大きな反響があったのは言うまでもない。
「生粋のウルグアイ人以上にウルグアイ人らしい」と評されることもあるグリーズマンは、だからこそ今回の試合の難しさを理解している。中でも、ウルグアイサッカーの根底に流れる“ガーラ・チャルーア”の精神を警戒しているという。
ウルグアイの先住民チャルーア族から引き継がれたとされる“ガーラ”は、勇敢さと不屈の精神力を表す。単に闘志を指すのではなく、失敗や厳しい状況に直面しても諦めずに戦い続けることを意味する。そしてそれは、アトレティコ・マドリードの戦い方に通じるとグリーズマンは話す。
「彼らはチームメイトのために、全員が一丸となってプレーする。僕もアトレティコでそれを常に体感しているし、素晴らしいことだ。そういうスピリットは大好きだ」
「ウルグアイはアトレティコのように戦うだろう。うまく時間を使い、倒れ、審判に圧力をかけるはずだ。僕らはそういった戦い方に慣れないといけない。試合は退屈なものになるだろうし、彼らは意図してそういう試合に持ち込もうとするだろうからね」
もちろん、娘ミアちゃんの名付け親でもあるゴディンやヒメネスとの“同僚対決”を楽しみにしている。準々決勝でウルグアイと対戦することが決まると、大量のメッセージを送ったという。その一方で、フランス代表のチームメイトには2人の攻略法を伝授したそうだ。
「ゴディンのおかげで、僕はアトレティコへ移籍したいと思うようになった。彼はベストフレンドだよ。僕らは練習場でも、プライベードでも、いつも一緒だ。友人と対戦するのは他の試合よりも大変だね。僕が彼のことを知っているように、彼も僕のすべてを把握しているからね。それにヒメネスもアトレティコで一緒にプレーしている」
“ウルグアイ愛”をアピールし過ぎたためか、ルイス・スアレスからは「半分ウルグアイ人とは言っても、彼はフランス人だし、ウルグアイ人の真の感情は分からない」と釘を刺される一幕もあった。それでもグリーズマンにとって、今回の一戦が特別なものであることに変わりはない。
フランス代表とウルグアイ代表が最後に対戦したのは、2013年6月のこと。国際親善試合で、ウルグアイ代表が1-0の勝利を飾った。この時、グリーズマンは代表デビューを果たしていなかった。第二の祖国、そして盟友との真剣勝負の場に立ち会うのは、今回が初めてのことになる。さらに勝利を収めれば、自身初のW杯ベスト4進出が決まるのだ。
今大会はここまでPKで2ゴールを奪っているものの、“チームプレー”に徹している印象があるグリーズマン。キリアン・ムバッペやポール・ポグバなど個性派揃いのフランス代表にあって、あえて“ウルグアイらしさ(アトレティコらしさ)”を発揮しているようにも見える。だが、6日に戦う相手は“本家”ウルグアイ代表だ。
果たして、ニジニ・ノヴゴロド・スタジアムではどんなプレーを見せてくれるのか。背番号7には、フランス国民だけでなく、ウルグアイ国民からも熱い視線が注がれることだろう。
(記事/Footmedia)
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