シューマッハーにアルファロメオ移籍の噂。話の発端はマゼピンとの確執
ミック・シューマッハーが来季、現在所属するハースを離れアルファロメオに移籍するという噂が立っている。ミック・シューマッハーは2020年に念願だったFIA-F2でのチャンピオンを獲得し、今季ハースからのF1デビューを果たした。彼はオーストリアGPまでの9戦を終えて、そのすべてを完走。うち8レースではチームメイトのニキータ・マゼピンを上回る成績を残している。
しかし、所属するハースのマシンの戦闘力不足により、これまでの獲得ポイントはゼロ。最高位もアゼルバイジャンGPでの13位にとどまるなど、全体的な成績で見れば苦戦を強いられているのが現状だ。
そんななか、ミックがハースとの複数年契約を打ち切って他チームに移籍するのでは、という噂が上がっているのだ。フェラーリの育成ドライバーであるミックの移籍先に上がっているのは、ハースと同じくフェラーリのパワーユニットを使用するアルファロメオだ。同チームには現在キミ・ライコネンとアントニオ・ジョビナッツィが所属しているが、今季限りでライコネンが引退し、そのシートにミックが納まるというのが海外メディアの予測するシナリオだ。ライコネンは現在41歳。毎年のように現役引退が囁かれる彼だが、ついに今年その時が来る可能性もありえる。
この話題に関して、F1関係者からは早くもミックの移籍の是非についての意見が飛び出している。ドイツのビルド紙のインタビューを受けたF1の元最高責任者バーニー・エクレストンは「ミックは自分の立ち位置を知るためにより速いチームメイトを必要だ」と移籍に賛成する一方、ミックの叔父にあたる元F1ドライバー、ラルフ・シューマッハーは「アルファロメオがより良い選択肢かどうかはわからない」と、スカイ・スポーツに寄せた自身のコラムで移籍の必要性に懐疑的な姿勢を示している。
ラルフの言う通り、キャリア面から言えばアルファロメオに移籍することが得策かどうかはわからない。ハースはフェラーリの本拠地マラネロに新たな拠点を構え、元フェラーリの人員を多く採用するなど、フェラーリとの結びつきを強めながら来季に向けた準備を着々と進めている。そもそも今季の不振も、車両レギュレーションが大幅に変わる来季に向けたマシンの開発にリソースを集中させるためだと明言されている。2022年にはハースがアルファロメオを上回る成績を残すことも十分に考えられるのだ。
■古いシャシーに不満なニキータ・マゼピン
そのため、ドイツの放送局シュポルト1はミックのアルファロメオ移籍の噂をハースのチーム内における不和から説明している。「ハースの雰囲気は険悪だ」と述べるシュポルト1は、ミックとマゼピンの間に生じたある騒動を取り上げている。
発端はマゼピンが自身が使用するシャシーがミックのものより古く、修理を重ねているため重くなっていることを明かしたことだ。これは事実のようで、先週のオーストリアGPに先立つ会見でハースのギュンター・シュタイナー代表も認めている。
しかし、事態はそれだけにとどまらない。シュポルト1の報道によれば、マゼピンの父であるドミトリー氏が、ドライバーふたりのシャシーを交換させるためにチームに金を払うことを申し出たというのだ。ドミトリー氏はハースのタイトルスポンサーである化学企業ウラルカリ社の共同オーナーであり、チームに対して強い発言権をもつ。シュタイナー代表は彼の申し出を拒否したが、この件はハースのチーム内での関係を表しているともいえる。
シュポルト1はミックがこうしたチーム内の『権力闘争』を感じ取った結果、アルファロメオへの移籍を望んでいるのではないかと推測する。もちろんこれはあくまで推測の域を出ていないが、より良い成績を求めての移籍、というよりは説明がつくのは確かだ。
いまのところミック自身は自らの考えを明かしていない。オーストリアGPでスカイ・スポーツの取材を受けた際にも短く「僕は今ここでのレースに集中している。来年どうなるかは数週間後にわかるだろう」と答えるにとどまった。彼が来季どのチームで走るか判明するのは8月の夏休み明けになるだろう。
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