王者カーガイ、フェラーリ296から488に“戻して”復帰「スマホは使いこなさないと意味がない」/GTWCアジア
7月21日、栃木県のモビリティリゾートもてぎでは、週末のシリーズ第7・8戦に向け、ファナテックGTワールドチャレンジ・アジア・パワード・バイ・AWSのオフィシャルプラクティスが始まった。
事前に発表されたエントリーリストのとおり、前ラウンドを欠場した昨年王者のカーガイ・レーシングがこのもてぎ戦では復帰しているが、その車両は6月の富士ラウンドでデビューしたフェラーリ296 GT3ではなく、昨年までのマシンである488 GT3へと戻されていた。
最新型の296でエントリーしない理由は、どこにあるのか。金曜午前のプラクティスを終えた木村武史に話を聞いた。
タイのブリラム、富士、鈴鹿と転戦してきた2023年のGTWCアジアは、もてぎが第4ラウンド。前戦鈴鹿ラウンドは、木村がポール・リカールでのELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに、パートナーのケイ・コッツォリーノがELMS併催のミシュラン・ル・マン・カップに出場するため、カーナンバー1は欠場となっていた。
「あれ、バレました? (296と)同じデザインにしたんですけどね(笑)。まぁ、クルマはいっぱいあるので、使ってあげないといけないですから」と冗談めかす木村。本当のところは、富士で走らせた296に“足りない部分”があるから、ということのようだ。
「富士で走らせてみて、まだ現時点では、488の方に分がある感じでしたね。実際、今回は上位に来られましたが(プラクティス1回目で3位)、296ではそうはいきませんでしたから。それを見ても、まだ488にアドバンテージがあるのではないか、と」
シリーズが始まってしまうとテストが規制されるため、新車296のセットアップを詰めるための時間が圧倒的に足りない。富士で木村は「ガラケーとスマホくらい違う」と296の車両としての進化を認めていたが、「スマホはいろいろとインストールして使いこなさないと意味がない。現状では最初からいろいろと備わっているガラケーの方が実戦は強い、みたいな感じですね」と笑う。
また、現状ではBoP(性能調整)の面でも、296で戦うのは苦しいようだ。とりわけ、エンジンパワーの面で木村は劣勢に感じているという。「コーナーとブレーキは速いクルマなのですが、とにかくパワーですよね。パワーがないです」と木村。
「あと50馬力あれば、という感じですが、そうすると2秒くらい速くなってしまいますから(BoPを設定する側も)難しいのではないかと思います」
8月に控えるジャパンカップ最終ラウンドの岡山については、どちらのマシンで臨むか決めかねているようだ。
「岡山は……たぶん488で行くんじゃないですかねぇ。ただ、私たちは全戦出られているわけでじゃないですし、シリーズタイトルどうこうという立場ではないですから、クルマを走らせるという意味では、296もありかもしれませんね」
マシンはさておき、1号車としての復帰ラウンドとなるもてぎでは、王者の意地を見せたいところ。木村はもてぎラウンドの戦い方ついて、次のように具体的なイメージを描いている。
「目標としては、私が予選で総合6番手までに入りたい。(ライバルには)プロもいますので。ケイはポール。土曜日のレースでは私がポジションをキープ、そしてケイが追い上げて3位。そうすると(サクセス・タイムハンデが)5秒になるので、日曜日はケイがポールから逃げて6秒のマージンを作る。そして私が逃げて優勝、というプランです。どうしてもこのレースは(前戦のトップ3に)サクセスハンデがあるので、それをどう跳ね返すかがポイントなのですが、そんな形で2レースとも表彰台に登れればベストかなと思っています」
前述のとおりすでにタイトル戦線からは外れているカーナンバー1だが、このレースの戦い方を知る王者ならではの“輝き”を放つことはできるだろうか。
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