MotoGP第3戦アンダルシアGP:初日総合14番手のクアルタラロがFP2で刻んだ安定感

AUTOSPORT web2020年7月25日(土)13時18分

 MotoGP第3戦アンダルシアGPは、前戦スペインGPと同地、スペインのヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで行われている。2週連続、同じサーキットでの開催は多かれ少なかれ、ライダーに影響をもたらしているようだ。初日セッション後、ライダーたちがリモートでの取材に答えた。


 最初に注目したいのは、クラス唯一の日本人ライダーである中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)。中上はスペインGPのレースウイーク、セクター4で苦戦し、さらに決勝レースでは、大きく変わったフロントタイヤのフィーリングに苦しんだ。しかし一転、このアンダルシアGP初日は、フリー走行1回目で8番手、続くフリー走行2回目ではトップ。自身としてMotoGPクラスで初めて、フリー走行セッションのトップタイムを記録した。


 中上はアンダルシアGPのレースウイーク前までにチームとのミーティングを重ね、決勝レースで苦戦した原因が、タイヤの空気圧の高さにあったことを確認。また、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)のデータと比較したという。


「違いがはっきりとわかりました。(マルケス兄と自分の)セッティングがかなり違っていたんです。それで、マルクのセッティングに少し近づけてみました。これが功を奏しましたね」


 こうした同じサーキットにおけるデータの比較と、その改善案を即座に投入できるのも、2週連続同地開催ならではだろう。全体としてもタイムは上がっており、特にレースの時間帯としてライダーたちがシミュレーションを重ねるフリー走行2回目では、スペインGPのトップ、フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)の1分38秒125に対し、中上は1分37秒715を記録した。


■アンダルシアGPの路面状況とタイヤ選択


 スペインGPの決勝レースでは、まったく異なった路面状況に苦しんだライダーが多かった。ヘレスではアンダルシアGPのレースウイークを迎える前、火曜日には雨が降ったという。「それで路面状況が変わったのだと思います。フリー走行1回目ではグリップがいつもより低かったのですが、フリー走行2回目にはラバーが載って、グリップがよくなりました」と語るのは中上だ。


 ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)は、午前のセッションでは確かに少し難しかったという見解を示しつつ「今日は風があったけど、グリップは先週よりもよかったよ」と語った。


 そして、2戦目のヘレスという状況に加え、これらはタイヤ選択にも影響を及ぼしているようだ。アンダルシアGPの特にフリー走行2回目では、リヤにミディアムという選択が見られた。スペインGPの決勝レースでは、フロントにハード、リヤにソフトという組み合わせが大多数だったところである。


 今回、フリー走行2回目の序盤からミディアムを選択していたのはマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)、クアルタラロなどのヤマハライダーが主だったが、セッション終盤になるころには半数近くのライダーがリヤにミディアムを履いて走行した。ロッシはこれに「今週末、路面状況はよくなっている。だから、リヤタイヤについてソフトとミディアムという選択肢が広がったんじゃないかな」という見解を示した。


 金曜時点の状況を踏まえると、ほぼ画一的だったタイヤ選択に幅が生まれている。今週末、こうしたリヤタイヤの判断も、一つのポイントになりそうだ。


■初日総合14番手クアルタラロの安定感


 初日のフリー走行1回目と2回目で、それぞれ上位につけたのはヤマハライダーである。初日総合としては、ビニャーレスがトップ、ロッシが2番手に続き、モルビデリが4番手。クアルタラロが14番手だった。


 スペインGPのレースウイークから好調のビニャーレスは「先週からリズムがよくなったよ。フロントのハードタイヤもうまく機能しているし、先週と今週の金曜を比べると、今回の方がいい感じだ」と、変わらぬいい流れをキープ。ロッシは「セッティングを変更したらフィーリングがよくなった」と、低迷した前戦から巻き返しのきっかけをつかんだ様子。


 一方、クアルタラロと言えば、前述のようにポジションとしては総合14番手。しかしラップタイムを確認すると、浮かび上がってくるのはコンスタントに刻まれたラップタイムだ。


 特にフロントにハード、リヤにミディアムを履いたフリー走行2回目では、トラックリミットオーバーにより非公式となったタイムを交えると、周回した半数以上のラップが1分38秒前半を記録している。そして、約20周走ったユーズドタイヤで1分38秒161を記録。レースを見据えたシミュレーションとして安定感は間違いない。


 2戦連続への勝利に向け、確実に準備を進めているように見えるクアルタラロ。なお、クアルタラロは「タイヤを比べて、どれをレースで使うのかフリー走行4回目で確認する必要がある。でも、リヤにミディアムを履いてペースがいいのは間違いないよ」と、このときのタイヤ選択について語っている。


■KTMが見せる躍進の可能性


 2020年シーズン、KTMは躍進が期待されるマニュファクチャーと言えるだろう。スペインGPでは、レッドブル・KTM・ファクトリーレーシングのポル・エスパルガロが6位、ブラッド・ビンダーが13位フィニッシュ。ビンダーは序盤、7番手付近を走行しながらも7周目にコースアウト、という展開だった。


 そしてアンダルシアGPの初日総合、3番手のビンダーはトップから0.307秒差。ポル・エスパルガロはトップから0.379秒差の5番手。さらにサテライトチームのミゲール・オリベイラ(レッドブルKTMテック3)は6番手につけた。


 スペインGP後、「ヘレスではいつも苦戦するから、7位フィニッシュでもうれしい」と語っていたポル・エスパルガロは、今回のフリー走行2回目でユーズドタイヤでの走行に集中しながら、セッション3番手タイムをマークしている。


 ルーキーながらアンダルシアGPの初日総合で3番手につけたビンダーは、KTMのバイクの強みについて「コーナー進入のブレーキングはすばらしいよ」と語った。ただし、立ち上がりの加速は改善の余地があるという。


 アンダルシアGPはアレックス・リンス(チーム・スズキ・エクスター)の負傷を抱えての参戦により、スズキの苦戦は否めない。KTMがホンダ、ヤマハ、そしてドゥカティとともに表彰台争いを展開する一角となることができるだろうか。


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