F1 Topic:グランプリ前から決まっていた予選でのタイヤ戦略を成功させたフェルスタッペン
開幕4連勝していたメルセデスの勢いを、5戦目の70周年記念GPで止めた直接の理由は、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が語っているように「ハードタイヤを履いてQ2を突破するという決断をし、それを成功させて、ハードタイヤでレースをスタートする権利を得たこと」だった。
しかし、その決断だけが勝因ではないことは、敗れたバルテリ・ボッタス(メルセデス)の敗因の弁からもわかる。
「もし、僕たちが予選のQ2でハードを選択していたら、結果は変わっていたかって? だぶん、結果は変わらなかったと思う。だって、僕たちはレースで履き替えたハードでもブリスターを起こしていたんだから」
確かにボッタスだけでなく、チームメートのルイス・ハミルトンも履き替えたハードタイヤにブリスターを抱えていた。これに対して、フェルスタッペンはより燃料が重い第1スティントでもブリスターを発生させることはなかった。したがって、もしメルセデスがハードを装着してQ2を突破するという戦略を採っていたとしても、結果は変わらなかっただろう。
そもそもQ2をミディアムで突破しようしていたメルセデスが、急にハードを履いてもうまくいかなかったはずだ。それはレッドブル・ホンダですら、Q2をハードで突破するのはフェルスタッペンだけで、チームメートのアレクサンダー・アルボンは最初からミディアムで突破しようとしていたことでもわかる。
マシンのセッティングというのは、タイヤに合わせて行われる。レースでは、ドライコンディションなら最低でも2種類使用しなければならず、予選で最も軟らかいタイヤを履くことも想定しなければならない。そのため、3種類のうちどれか1種類のタイヤだけに照準を合わせることはできないものの、レースでメインで使用するタイヤに合わせるというが一般的だ。
したがって、予選開始の段階でフェルスタッペンはハードタイヤに合わせたセッティングとなっており、メルセデスはミディアムとなっていたはずだ。
セッティングはQ1で最初にコースインした瞬間から変更することはできないので、タイヤ戦略は、渋滞やミスによって突破できないかもしれないという緊急事態を除いては、予選中に変更することは基本的にない。
フェルスタッペンがいかにハードタイヤ寄りのセッティングにしていたかは、予選Q3でソフトに履き替えたとき、「Q3では風向きが変わったことも関係していたのかもしれないけれど、少しバランスが悪くなった」と語っていたことにも表れている。
フェルスタッペンがハード寄りに合わせてセットアップしていたのに対して、ソフト寄りにしていたと思われるのが、レーシングポイントの2台とダニエル・リカルド(ルノー)、ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)の4人だ。
ニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)はQ3でフェルスタッペンより速い予選3番手を獲得。リカルド(予選5番手)、ランス・ストロール(レーシングポイント/予選6番手)、ガスリー(予選7番手)の3人はフェルスタッペンに肉薄するタイムをソフトタイヤで叩き出していた。
だが、レースではヒュルケンベルグ、ストロール、ガスリーがハードタイヤのペースに苦しみ、リカルドはハードではなく、ミディアムをレースでメインタイヤにしたものの、ポイント圏外でレースを終えた。
マシンのセットアップ作業は、グランプリが始まる前のファクトリーでのシミュレーションからスタートする。そして金曜日のフリー走行で確認し、ライバルの状況や週末の天候などを考慮して、金曜日の夜に修正を入れて最終的に決定する。その修正は小さければ小さいほど、セットアップはより的確なものとなり、ドライバーは自信を持ってマシンを走らせることができる。
フェルスタッペンとレッドブル・ホンダはこのセットアップにおいて、70周年記念GPが始まる前からハードタイヤに合わせる方向で戦うことを決断し、週末を通してブレずに作業を進め、早い段階でセットアップ作業は完了していた。
そのことは金曜日のフリー走行2回目で、ライバル勢が20周以上走行していたなか、15周で終えていたにもかかわらずフェルスタッペンが「今日はやりたかったことを全部できたから、満足している。セットアップでいくつかのことを試してみて、方向性は固まった」と言っていたことでもわかる。
今回のフェルスタッペンとレッドブル・ホンダの優勝は、70周年記念GPが始まる前から、すでに約束されていたのかもしれない。
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