ホンダF1山本MDが語る角田裕毅と松下信治。レッドブルのスタッフを盛り上げたバルセロナでの優勝争い
マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が2位表彰台に上がった2020年F1第6戦スペインGPでは、F1直下のカテゴリーFIA-F2選手権で日本人のふたりのドライバーも大活躍した。開幕以来ずっと苦しんできた松下信治(MPモータースポーツ)が、レース1で堂々の優勝。角田裕毅(カーリン)は2レース連続上位入賞を果たし、F1に必要なスーパーライセンスを取得できる選手権4位に躍進した。
ホンダの若手ドライバー育成の責任者でもあり、日本人F1ドライバーが再び誕生することを誰よりも強く願う山本雅史マネージングディレクターは、そんなふたりの今季の戦いをどう見ているのだろう。
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──まずは角田裕毅選手について、山本さんの印象を聞かせてください。第5戦のレース2で初優勝、第6戦で2戦続けて4位入賞と、ここに来て安定した結果を出すようになってきました。
山本雅史マネージングディレクター(以下、山本MD):1戦ごとに、新しいことを学んでいるという印象ですね。シリーズを通してどう戦うか、角田くん自身は選手権4位以内という明確な目標があるわけですが、そこに向けてしっかり意識を持っている感じです。シルバーストン、バルセロナと直近のレースで2大会続けて、2レースともにポイントを獲っていますしね。
レース内容で言えば、タイヤマネージメントも新人らしからぬ巧さを見せていますし、全体としていい戦いをしていますね。実はF2のレースはレッドブルのクリスチャン・ホーナー代表とヘルムート・マルコ博士(レッドブルのモータースポーツアドバイザー)と、3人で見ているんですよ。
──おお、そうなんですね。
山本MD:ええ。その際の彼らのコメントを聴いても、角田くんのレースは安心して見ていられるようですね。ただ僕がひとつ思ったのは、タイヤに関してはもう少しできることはなかったかという思いは残りました。
──というと?
山本MD:スペインでのレース2がまさにそうでしたが、本人にレース後に話を聴くと、「最後はタイヤがズルズルになっていた」と言っていました。だったらあそこまで待たず、もう1、2周早くプッシュしていてもよかったかなと。そうすればレース展開も、変わっていたかもしれません。
──そのあたりは、今後の経験でしょうか。
山本MD:そう思います。ルーキーとしては、本当に頑張っている。ただレースをずっと見てきた人間としては、もしかしたら(3位表彰台だった)ミック・シューマッハー(プレマ・レーシング)と、接近戦を戦えていたかもしれません。
──シューマッハーは、決してタイヤの使い方の巧いドライバーじゃないですしね。
山本MD:そうなんです。ただ去年から見ると、2年目は賢くなりましたね。プレマという、トップチームの恩恵も受けている。
──チーム力という点では、角田選手は今回予選で非常に苦戦したわけですが、その第一の原因はコースイン時のトラックポジションのまずさでした。これは、チーム側の問題ですよね。
山本MD:マルコさんも、そう言っていました。
──ただ渋滞に入った時も、タイヤをうまく温められるかどうかは、角田選手側の課題ではないですか?
山本MD:そうですね。まあそこは1年生として至らない点だと思いますが、これから確実に改善していくはずです。選手権でも暫定4位に上がり、3位とも数ポイント差ですし、一方で下とも僅差です。1戦ごとに、誰が入れ替わってもおかしくない。1位から7位くらいまでは、誰がどうなるか、まだまったくわからない。その意味でも次のスパ・フランコルシャンのレース1で、しっかり結果を残すのが重要だと思います。
──アルファタウリ・ホンダのフランツ・トスト代表が、「角田は遅かれ早かれ、アルファタウリを運転する」と発言しました。トストさん特有の気配りというか、リップサービス的要素が強いのかなと個人的には思いました。
山本MD:それはあったと思います。ただこの週末フランツと話した時には、「裕毅、凄くいいね」と言ってくれていた。フランツに限らずレッドブルとしては、角田くんはまだ20歳で、その若さであれだけの走りを見せる日本人は非常に魅力的だと、そう思っているようですね。
──それは、うれしいですね。
山本MD:本当ですよ。いい流れかなと思います。
──レッドブルジュニアのなかでは、今のところ角田くんが抜きんでているのでしょうか。
山本MD:そうですね。そこも角田くんが持っている運なのか、スーパーフォーミュラのユーリ・ビップス(TEAM MUGEN)は、まだひとつもレースできてない(註:次戦ベルギーから、急きょF2に参戦)。(リアム)ローソンはFIA-F3でいい走りをしていますが、すぐF1というわけじゃないですしね。その意味では、角田くんしかいない。本当に楽しみです。
──最後に松下信治選手について、話してもらえますか。今年はホンダの支援を離れていますし、もし差し支えがあれば個人的な印象でもけっこうです。
山本MD:いえ、問題ありません。レース1での優勝は、非常にうれしかったです。ノブにもすぐに、メールで「おめでとう」と送りました。今年はホンダドライバーではないのですが、日本人として君が代を現場で聴けるのは単純にうれしいことです。今年はずっと苦しんで、落ち込んでいましたけど、「これで立ち直れます」って、返事をくれました。実際にレース2も、いい走りをしていました。気持ちが切り替えられたんじゃないかな。
──ふたりの日本人が競い合って、上位入賞を重ねるといいですね。
山本MD:本当にそう思います。そうしたら、うれしいですねえ。そう思っているのは僕らだけじゃないみたいで、レース1をエンジニアリングルームで観ていたレッドブルのエンジニアたちは、すごく盛り上がってたそうです。一時トップと、3番手を走っていたでしょ。僕は隣の部屋でホーナー代表たちと観ていたのですが、エンジニアたちと一緒だった田辺(豊治テクニカルディレクター)が、「日本人が1、3番手だ」って、盛り上がってたと。いい話です。
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