完璧に仕事を遂行したフェルスタッペンの“大人の走り”【今宮純のF1シンガポールGPドライバー採点】
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、20人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。今回は第15戦シンガポールGP編だ。
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☆ ストフェル・バンドーン
2018年シーズン限りでマクラーレンの離脱が決定したが、このところフリー走行1回目でいきなりトラブル続きだ。ベルギーGPは13周、イタリアGPでは9周、そしてシンガポールGPでも11周、不運な連続20番手。フェルナンド・アロンソと同じマシン仕様でなく、パーツテストも行うが周回数があまりに少ない。自分が好むセッティングにはもっていけない。そんな境遇で予選18番手から決勝12位の“アップ・レース”は善戦している。
☆ ピエール・ガスリー
最初から最後までシャシーバランスに苦しみ、トラクションを得られず大苦戦。「我慢のレース」を13位でまとめた。トロロッソ・ホンダの得意コースでなぜこうなったのか、教訓にせねば……。
☆☆ ランス・ストロール
最後尾からグリップ感のないソフトタイヤで全力疾走、集中心を切らさず14位は“敢闘賞レース”。昨年も予選18番手→8位、ストリートコースではカナダGP、そしてアゼルバイジャンGPでものし上がってくる(モナコGPは別だが)。
☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
10番グリッドは厳しい。予選使用済みハイパーソフトでスタート、後方からの新品のウルトラソフトタイヤ勢に攻略された。それでも自身150戦目に1点、ポイントを確実に取りこみ依然ドライバーズランキング7位(トップ3チームを除いた“Bリーグ”勢の首位堅持)。
■らしくない週末をすごしたセバスチャン・ベッテル
☆☆ セバスチャン・ベッテル
ひとこと、「彼らしくない週末」だった。FP2のアタック練習ラップにミス、21コーナーで壁を直撃。ここを“寸止め”でかすめるのが得意なシンガポール・マイスターが、やってしまった。本人は「週末の流れには影響しない」と強気発言、がその裏に相当プレッシャーがかかっていると感じた。
ライコネンの去就が発表されてからベッテルの心境は揺れ、表情がこわばって見える。決勝では予選3番手からスタートですぐ2番手に上がり、最速ポールポジションスタートのルイス・ハミルトンに挑もうとアグレッシブな戦略に出たが失敗。気落ちしたのか大差39.945秒遅れの3位、元気だせよ、セブ……。
☆☆☆ シャルル・ルクレール
学習モードから徐々にペースを上げ、決勝9番手まで上がっていた25周目、12コーナー出口で右側をヒット。このミスから学びやや慎重なラインワークに修正、しっかり先を見据えてレースへ。中盤のガスリーとの接近戦では落ち着いて、相手がロックアップするのをウオッチ、抜くべきタイミングでパス。新人ながらうまい“実戦遂行力”をまた見せつけた。
☆☆☆ カルロス・サインツJr.
昨年トロロッソで自己最高ベストレース4位、このコースには自信があり初日トップ7内をキープ。予選で急にリヤのグリップを失い12番手、そこからアロンソと“スパニッシュ・バトル”の末に8位。2018年リタイアはたった一度きり、一貫したレース安定性が際立つ。
■ラストラン・シンガポールで力走のフェルナンド・アロンソ
☆☆☆ キミ・ライコネン
FP2トップタイム、フェラーリに来てからシンガポールでは初めてだ。危なげないクリーンな走りで順調に進めていたのに予選で狂った。コースイン・タイミングの影響か、前後タイヤ温度が整わないままアタックに。セクター3で強いオーバーステア症状に陥り5番手、この予選がすべてだった……。ベルギーGP以降しばしばベッテルに先行、いま乗れているキミ。
☆☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
Q2アタックを10番手で終え、最後にヒュルケンベルグに抜かれて11番手に。これを狙っていたかのようにタイヤ選択自由なメリットを得る。スタート後3コーナー出口で“フォース・インディア2台”が接触、その寸前に予測したかのように左へ回避。右前輪がデブリを踏みそうになるのもさばいて9番手を確保、実にあざやかなリアクションプレー。44周目時点での最速ラップも出し、11戦ぶりに7位、『ラストラン・シンガポール』を飾る。目に焼き付けておきたい、あと6レース。
☆☆☆☆ ルイス・ハミルトン
ヒーローインタビューで最速王はマシンの前にしゃがみ込み、心地よい“疲労感にひたっているかのようだった。マラソンタイムに近い長時間61周レース、その最後までペースを保ったのが素晴らしい。個人的にはルイスが5冠に向け、レースごとに老けていっていくような気がする。
☆☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
ただの予選2番手ではない。土曜日はエンジン・ドライバビリティの変調を何度も訴えながら、完璧なドライビングでハミルトンとの差をわずか0.3秒にしたのは信じられない結果だ。23コーナーもあり、ギヤシフト84回(ルノー・データ)のこのコースだけに至難の技だ。
決勝ではトップのハミルトンが中盤、周回遅れ集団に行く手を阻まれたときは強引に仕掛けず、むしろフェアに控えた。いままでとは違う『大人のレース』を見た気がする。付け加えるとレッドブル9年連続表彰台、もう少しパワーユニットのパワーがあったならマックス対ルイス、どうなっていたことか。今回のレースは彼に5星を授けたい——。
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