レッドブル・ホンダ密着:“フェルスタッペンの最後尾スタート”がプレッシャーを誘発か。ハミルトンはポール獲得ならず
土曜日の朝、大雨のなかサーキットに到着するとセキュリティゲートを過ぎたところで、レッドブルのテクニカルディレクターを務めるピエール・ワシェと出くわした。歩きながら雑談したなかでひとつ気になることを語ってくれた。それはイギリスGP以降のメルセデスのストレートスピードの向上についてだ。
ワシェいわく「よりハードにエンジンを回しているのではないか?」と言う。
現在のF1は昨年のシーズン途中から発行された技術司令によって、予選とレースで同じモードを使用しなければならない。エンジン(ICE)は年間3基しか許されていないため、基本的にはレースモードで予選を走らせることになる。
ところが、メルセデスはそれを少し予選よりにしたモードでレースを戦っているのではないかというのだ。これはワシェだけでなく、メディアの間でも囁かれている噂だ。もちろん、それはレッドブル・ホンダ対策だ。つまり、いまのメルセデスはそこまでしないとレッドブル・ホンダと互角に戦えないという状況にあるとも言える。
そのことを如実に示したのが、この日の予選だった。
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、すでに4基目のICEをはじめとする新品のパワーユニットに交換し、ロシアGPでは最後尾からスタートすることが決定している。ライバルから見たら、メルセデスは余裕の戦いができる状況なのだが、逆にそれがメルセデスにとって「絶対に落とすことができない」というプレッシャーになっていたのではないか。
もうひとつ、メルセデス陣営がプレッシャーとなっているのは、エンジンの耐久性だ。冒頭に触れたように、メルセデスは例年以上にエンジンを酷使しているという話が事実であれば、耐久性は年間3基ではもたない。それを示すかのように、前戦のバルテリ・ボッタス(メルセデス)をはじめ、このロシアGPではメルセデスPUユーザーのニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)も4基目のエンジンを投入した。
つまり、彼らにもいずれどこかのレースで4基目を投入する可能性が高く、したがってこのロシアGPは是が非でもポール・トゥ・ウインをしたかった。しかし、濡れた路面に足をすくわれ、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は予選Q3でピットロードでバリアに衝突。さらにドライタイヤに履き替えた直後にスピンを喫して、またもバリアに接触するという珍しいミスを立て続けに犯した。
「ピットレーンでのミスは完全に自分のせい。かなり落ち込んでいる」(ハミルトン)
すでに最後尾スタートが決定していたフェルスタッペンは、Q1でアウトラップとインラップを走っただけで予選を終了。ハミルトンが自滅する瞬間をモニターで見ていた。
「明日は最後尾スタートが決まっているので、予選ではアクシデントなどのリスクを考え、あまり多くの周回を走らないと決めていた。チームは素晴らしい仕事ぶりで、セットアップの判断については自信がある。明日のことを考えると、中団勢が上位勢に接近しているために、簡単なレースにはならないと思うけど、できるだけ多くのポイントを獲得するために全力で臨む。面白いレースができればいいね!」
エンジン交換でグリッドペナルティを科せられたのはフェルスタッペンだが、プレッシャーを背負うことになったのは、じつはメルセデスとハミルトンのほうだったのかもしれない。
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