巨人が見限った“キューバの超若手有望”だったガルシア 「2度の戦力外」を経て掴んだMLBでの絶大なる評価
強敵アストロズを前にとことん打ちまくったガルシア。覚醒した主砲はどうにも止まらなかった。(C)Getty Images
キューバの大砲は止まる気配がなかった。
現地10月23日に行われたメジャーリーグのアメリカン・リーグ優勝決定シリーズ最終第7戦で、レンジャーズは11-4でアストロズに大勝。上原浩治と建山義紀が在籍した2011年以来の栄冠を勝ち取った。
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昨季のワールドチャンピオンとの覇権争いで殊勲者となったのが、レンジャーズのアドリス・ガルシアだ。39本塁打、107打点としたレギュラーシーズンの勢いそのままに、キューバの主砲は打ちまくった。このシリーズでの打撃成績は打率.357、5本塁打、打点はシリーズ史上最多の15を記録した。
この最終戦は、とりわけ凄まじかった。チームが2点を先制した初回に追撃のタイムリーヒットを放ったガルシアは、2点差とされた4回には2試合連続となる特大の一発をマーク。これで勢いづいた30歳は“シリーズ男”は、さしものアストロズ投手陣でも止められなかった。チームが10-3と大幅にリードした終盤8回にはダメ押しとなるソロアーチをレフトスタンドへ。4安打、2本塁打、5打点の荒稼ぎで、敵地のファンを黙らせた。
試合後にシリーズMVPに選出されたガルシア。表彰セレモニーでは「ここにいるこのチームは家族だ。俺はチームメイトの愛がなければ何もできない」と叫んだ。それは彼が歩んできた紆余曲折のキャリアを考えると、まさに魂の叫びのようであった。
歩んできた道のりは平たんではない。2016年4月に「国内リーグで打点王となった超若手有望株」というキューバ政府の触れ込みとともに、鳴り物入りで巨人に入団したガルシアだが、23歳と若かった影響もあって“異国”日本には馴染めなかった。
1軍では7打数ノーヒットと鳴かず飛ばずで、目立ったのは素行の悪さ。寮生活と食文化も合わず、練習態度も真面目というわけではなかったという。その姿勢は堤辰佳GM(当時)が「総合的に見て育成できるか考えて、そこまでのポテンシャルはないと判断した」と厳しく断じたほどだった。
そして、わずか4か月で巨人を契約解除となったガルシアは、帰国の際に乗り換え地のフランス・パリでドミニカ共和国に亡命。2017年2月には海外アマチュア・フリーエージェントとしてセントルイス・カージナルスとマイナー契約を締結した。
ただ、野球の本場でもいち早く成果を上げたわけではなかった。メジャーデビュー後の2019年にDFA(事実上の戦力外通告)を告げられたガルシアは、トレードでレンジャーズへ移籍した20年も低調なパフォーマンスに終始した。
21年の春季キャンプ中には自身2度目となるDFAの憂き目に遭った。それでも買い手がつかずに、レンジャーズとマイナー契約を締結したキューバの原石は、昨季についに開化。レギュラーシーズンで27本塁打、101打点と地元メディアで「前代未聞だ」(米メディア『Beyond The Boxscore』)と評される望外の結果を残し、トップクラスのスラッガーとしての地位を確立した。
いわゆる優等生タイプのキャリアではない。日本では「ダメ助っ人」のレッテルも貼られた。それでもメジャーの頂が見えるところまでたどり着いた。このガルシアの活躍は、まさしくメジャー級のサプライズと言えるかもしれない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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