歴代7番目の最年少王者記録を打ち立てたジョアン・ミル/MotoGP第14戦バレンシアGPレビュー
MotoGP第14戦バレンシアGPでジョアン・ミル(チーム・スズキ・エクスター)がMotoGPクラスのチャンピオンを獲得した。
ミルは、スペインのマヨルカ島出身の23歳。スペイン出身の最高峰クラスチャンピオンとしては、アレックス・クリビエ(1999年/500cc)、ホルヘ・ロレンソ(2010年、2012年、2015年/MotoGP)、マルク・マルケス(2013年-2014年、2016年-2019年/MotoGP)に続いて4人目。23歳と75日での最高峰クラスチャンピオン獲得は歴代7番目の記録となる。
世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今シーズンのMotoGPクラスは全14戦での開催となり、シーズン再開第1戦目のスペインGPで絶対王者のマルク・マルケスが転倒負傷。マルケスは緊急手術を受けて2戦目のアンダルシアGPで復帰したものの、2日目を走って参戦を断念。以後のレースを欠場することになった。
2020年シーズンは王者マルケス不在の中、ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)が2連勝を飾り、チャンピオンシップ前半戦をリード。クアルタラロは9戦目のカタルニアGPでシーズン3勝目を記録してチャンピオン候補の最右翼と見られていたが、シーズン終盤に失速。12戦目のテルエルGPまでに8人のウイナーが誕生する混戦となった。
ミルは序盤の3戦までに2度のノーポイントレースを喫しながら、その後、コンスタントに上位に入賞。アラゴンGPで3位に入賞しランキングトップに立つと、続くテルエルGPでも3位に入賞し、ヨーロッパGPではMotoGPクラス初優勝を達成して9人目のウイナーとなり、タイトルに王手をかけた。
「こんなシーズンになるとは思っていなかった。シーズン序盤は苦戦したし、何度か表彰台に立てればいいと思っていたんだ」と、バレンシアGPを前にミル自身は語っていた。
チャンピオンを争ったライダーの中で最もコンスタントな結果を残したことが、タイトル獲得の要因ではあるが、23歳、MotoGPクラス参戦2年目のライダーとしては、ミルは落ち着いてレースに取り組んでいた。
予選でのポールポジション獲得経験が、グランプリ通算でも2回しかなく、MotoGPクラスではバレンシアGPまでポールポジションを獲得したことがない。フロントロウからのスタートもザルコのペナルティで3番グリッドに繰り上がったスティリアGPのみ。こうした記録からも一発の速さではなく、決勝での強さを第一に考えてミルがレースウイークに取り組んでいたことがうかがえる。
■プレッシャーのある中、自分のレースに集中
ミルは、Moto3クラスレギュラー参戦1年目のミルはKTMのマシンで1勝を記録しランキング5位を得たが、2年目のMoto3クラスに向けて、チームに対してホンダのマシンにスイッチすることを求めたという。これは体格的にコンパクトなKTMのマシンよりもホンダのマシンのほうが自分に合っているということが理由の一つだったようだが、希望どおりにホンダのマシンで参戦した2017年シーズン、通算10勝トータル13回表彰台に立って、2年目でチャンピオンを獲得した。そして、Moto2クラスでも1年目からマシンの乗り換えに順応し、勝利まであと一歩という活躍を収めたものの、Moto2のタイトルにこだわることなく、1年で最高峰クラスへの昇格を決めた。
ターニングポイントで適格な判断を下してきたことや、そのときの環境や状況に合わせることができるのもミルの能力の一つと言えるだろう。タイトル獲得のかかったバレンシアGPでも、ミルは落ち着いてレースに取り組んでいた。
「チャンピオンシップのリードを持っているが、まだ何も決まっていない。仕事に集中することが重要で、いつものような週末を過ごし、チェッカーフラッグが振られるときに何が起こるのか見てみよう」とウイークが始まる前にこう語っていたミル。
初日に転倒を喫するアクシデントに見舞われたものの、幸いダメージはなく、予選は「ベストなフィーリングを見つけることができず、速いラップタイムを記録することができなかった。それでも、昨日失っていたこと、いくつかの発見があった。レースペースには自信があるから、いいスタートを切り、ポジションを挽回できれば、そこにいることができると思う。他のライダーたちやライバルたちのことを考えず、自分のレースに集中したい」と12番グリッドからのスタートとなったが、決勝ではこの言葉どおり、7位でチェッカーを受け、最終戦を待たずにタイトルを確定させた。
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