MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptがいよいよスーパー耐久に登場。初戦はまず完走目指す
11月26〜27日に三重県の鈴鹿サーキットで開催されるENEOS スーパー耐久シリーズ2022 Powered by Hankook 第7戦『SUZUKA S耐』。今季最終戦ということもあり、チャンピオン争いに焦点が集まるレースだが、一方で注目のニューマシンもデビューする。その一台であるST-QクラスのMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptについて、チーム代表を務めるマツダの前田育男シニアフェローに聞いた。
MAZDA SPIRIT RACINGは、2021年第6戦岡山から、次世代バイオディーゼル燃料であるユーグレナ社のサステオを使ったMAZDA SPIRIT RACING Bio concept DEMIOを投入。2022年第1戦からはベース車をマツダ2に変更し、MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio conceptでST-Qクラスを戦ってきた。
そんなMAZDA SPIRIT RACINGの挑戦について、第1戦鈴鹿の際にマツダの丸本明社長兼CEOがサプライズで2.2リッターエンジンを積む新たな車両の存在を明かしていた。その車両こそが、今回デビューするMAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptだ。
この車両開発に向けては、これまでマツダ2で培ってきた技術やノウハウが活かし、ゼロから作り上げられてきたという。モータースポーツを専門にしたファクトリーの手を借りれば、レーシングカーとしては早く完成し熟成できるが、こうした手法は採らなかった。
「レースに対する知見がない社員たちがプロの意見から学び、いろんなクルマを見ながら作ってきました。時間もかかりますし、熟成も遅いかもしれません。しかし、こうすることで人は育つんです」と前田シニアフェローは語った。
「マツダは30年間レースをやってきませんでしたから、レースができる人がいないんです。あるスピードで、過酷な環境でクルマを鍛えると、いろんな経験、知見を得ることができます。それを実際に商品にフィードバックするのをやらなければならない。それをようやくやれるようになってきたんです」
設計については、マツダの若手エンジニアたちが希望して携わり、ほぼ内製で作られた。外観では空力パーツはそこまでアグレッシブな印象はないが、「私はマツダ3を手がけた張本人ですが、レーシングカーとして迫力を出しつつも、きれいさを壊さないバランスをとっています」という。もちろん速さを出すためには今後さらなる改良はあるかもしれないが、マッシブなフェンダーでボリュームを出しつつ、クラシックさも感じられる「ああいうデザインが大好きなんです(笑)」という美しいルックスにまとめられた。
そんなボディには、もちろん最新技術も採り入れられている。CFRPと天然繊維を使ったハイブリッド材をボンネットとルーフに使っており、カーボンニュートラルと軽量化を両立する技術を採用した。また足回り等の形式は市販のものを踏襲し、内装も市販車の部分を多く活かしてある。
また注目のパワーユニットについては、公約どおり2.2リッター直4直噴ディーゼルターボのSKYACTIV-Dエンジンを搭載。これを次世代バイオディーゼル燃料であるサステオ100で動かしている。
ただ今回のデビュー戦では、ディーゼルのシングルターボであるためトルクの立ち上がりが急なこともあり、ミッション等にトラブルが起きる懸念を払拭すべく、今回は出力はやや抑えめで走っているという。ただ、最大トルクは通常の軽油での2.2リッターディーゼルと同じレベルが出ているのだとか。
すでに岡山等でも走っているが、今回のレースウイークでは、11月24日の特別スポーツ走行から本格的な走行を開始。初日こそ軽微なトラブルが出たものの、金曜までは安定してラップを重ねている。丸本社長兼CEOが第1戦の際に「GR86とBRZの戦いに入っていきたい」とニューマシン投入について語っていたが、まだ2台との争いは目指さず、「ST-4車両のうしろくらいのタイムで走り、まずは完走を目指したい」と前田シニアフェローは今回の目標について語った。実際、この2日間でST-4に近いタイムが出ている。
そして、自らドライバーとしてステアリングを握った感想を聞くと「マツダ2で一年間戦ってきましたが、速さを出していこうとすると、かなりエキセントリックなセッティングになってしまいました。タイムは出るけれど、かなり乗りにくいクルマになっていたんです。それに対し、マツダ3は非常に乗りやすいです」という。
「マツダ2はフロントに1.8リッターエンジンを積んでいたので、前のめりな姿勢になってしまう。沈みすぎていたので、車高を上げるセッティングになっていました。それに対しマツダ3は重量バランスが良くなっていますし、ホイールベースも長い。安定しています。クルマの出来としては悪くないと思いますね」
来季以降に向けては、今後順次発表されていくはずだが、「走りはじめたばかりですし、目標をどこに置くかが重要です」と前田シニアフェローは語った。MAZDA SPIRIT RACINGとして2021年から始まった挑戦が、MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptという新たな武器とともに、人とクルマを鍛えるさらなる挑戦に進み出していく。
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