今季J1で最も「期待に応えた」クラブは?識者がトップ3を独自選定!”選手層の薄さ”を乗り越えた神戸、野心的だった福岡を高く評価
神戸は悲願の初優勝を成し遂げ、ファンに歓喜を届けた(C)Getty Images
神戸の初優勝で幕を閉じた今季のJ1リーグ。サポーターに歓喜を届けられたクラブもあれば、逆に失望を買ってしまったクラブもあるだろう。ここでは、前者にスポットを当て、今季のJ1で「期待に応えた」クラブのトップ3をサッカーライターの清水英斗氏に選出してもらった。
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◆1位:神戸
開幕前に神戸を優勝候補に推す人は少なかったが、高強度のハイプレスとショートカウンター、徹底したサイド攻撃を柱とする堅実なチーム作りで、今季は序盤から首位を走った。
高年俸揃いのチーム人件費を踏まえれば妥当な結果ではあるが、これまで投資に見合った成績は残していない。2022年もJ1で13位に低迷するなど苦しんだが、今季、神戸はついに”期待に応えたクラブ”になった。
優勝を目指す上での障壁は、選手層の薄さだった。各クラブがサブ組主体で臨むルヴァンカップのグループステージは2勝4敗の最下位で敗退。その事実が示すように、神戸は主力と控えの差が大きく、今季神戸の戦い方を保証できるメンバーが限られていた。
元々が高強度のチームスタイルだけに、選手層の薄さは、やがてコンディションやアクシデントへの耐性問題につながる。6月から夏場を迎え、固定したレギュラー選手の疲労が濃くなると、勝ち点ペースは鈍化した。主力のコンディション悪化から、一旦は首位を横浜に明け渡すことに。
それでも必死に食らいつく神戸だが、追い打ちをかけるアクシデントも発生。8月16日の柏戦、中盤の強度を支えてきた齊藤未月が今季絶望の怪我を負ってしまった。この時期、ライバルも同時に勝ち点を落としたため、順位で水を開けられることはなかったが、神戸の勝ち点ペースは一層鈍った。
このままでは例年通りの結果だが、転機になったのは、28節のC大阪戦だ。4−3−3の左ウイングに君臨した汰木康也を外し、佐々木大樹、井出遥也、扇原貴宏をスタメンに並べる新布陣へ変更。齊藤が抜けた守備力を扇原がそのままカバーするのは不可能だが、組み替えた4−4−2の守備ブロックで佐々木と井手が強度を高め、集団でカバーする。それにより、扇原のビルドアップ能力も生かされる格好だ。
この最後のチューニングが効き、終盤の神戸は7戦を6勝1分けと圧倒。横浜の追撃を振り切り、優勝にたどり着いた。不安要素と見られた選手層が、最後にぎりぎり、チームを救う。大きな分かれ目だった。
もっとも、層の問題が完全に解決されたわけではない。来季は終盤にACLがある。神戸は2019年に天皇杯優勝を果たし、ACLに出場した2020年はリーグ戦が14位に低迷。2021年はリーグ3位に躍進したものの、ACL出場権を得た2022年は再びリーグ13位に沈んだ。そして、ACLに出場せず、リーグ戦に集中できた今季、悲願のリーグ優勝を果たしている。
ACLの負担からリーグ戦で調子を落とすのは、どのクラブも抱える問題だが、選手層に弱みがある神戸の場合は特に顕著だ。一方、終盤のような戦術チューニングが通常になれば、来季は違う傾向が見られるかもしれない。注目のポイントだ。
◆2位:福岡
昨季J1の14位から大きく順位を上げ、7位へ躍進。ルヴァンカップ優勝というクラブ史上初のタイトルも獲得した。
元々、堅守を武器とするチームであり、シーズン序盤は1点差ゲームを勝負強く戦い、勝ち点を積み重ねたが、中盤以降はポゼッションの精度も光った。6月から本格稼働した井手口陽介と前寛之は、J屈指のダブルボランチであり、彼らの貢献は大きい。
前線では点を取れる9.5番タイプのFW山岸祐也が君臨。このタイプのFWと言えば大迫勇也が第一人者だが、山岸はそれに次ぐ活躍を見せた。この山岸を軸に、背後のスペースを陥れる紺野和也や金森健志らが躍動し、堅守・福岡は過去の特徴に縛られない、新たな次元に足を踏み入れた。初タイトルも納得の野心的なシーズンだった。
◆3位:新潟
昇格組ながら、リーグ10位でのフィニッシュは見事。狭さと広さを相互的に生かす新潟のポゼッションは、J1で対戦したチームの選手や監督を唸らせた。終盤はほぼ残留が確実だったが、”中位病”に陥ることなく、9月の26節から最終節まで9戦無敗(4勝5分け)。結果の重みに左右されず、サッカーそのものを喜び、スタイルを貫いて戦うチームの芯を感じた。
選手個々でインパクトがあったのは、GK小島亨介だ。被決定機のセービングも素晴らしかったが、やはりポゼッション、相手のプレスを剥がせる箇所を見極めてボールを運ぶ眼が印象的だった。
横浜に1勝1分け、川崎に2勝と強豪に対しても堂々の成績を残した。反面、強度を武器とするチームに対しては、最後の1ゴールを割れなかったり、カウンターを受けたりと苦戦も見られたが、これは来季の課題か。シーズン途中に伊藤涼太郎を失った攻撃陣のスケールアップ、補強が待たれる。
[文:清水英斗]
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