F1 Topic:順位入れ替えを知らなかったメルセデスと、「伝えた」と主張するマシ/サウジアラビアGPの疑問(3)
波乱に次ぐ波乱となった2021年F1第21戦サウジアラビアGPのなかでも最大の波乱は、37周目のマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)とルイス・ハミルトン(メルセデス)の追突事故だろう。
伏線は同じ37周目の1コーナーでの攻防にあった。DRSを利用してオーバーテイクしようとしたハミルトンに対して、トップを走行していたフェルスタッペンはサイド・バイ・サイドのまま、譲らなかった。
しかし、ブレーキを遅らせすぎたフェルスタッペンは、1コーナーを曲がりきれずにオーバーラン。2コーナーをショートカットしてハミルトンの前でコースに復帰した。
1回目の赤旗再開後のスタートと似た状況だ。ただし、今回は直後に赤旗が出なかったため、レッドブルはFIAと話し合い、チームはフェルスタッペンに対してトップのポジションをハミルトンに譲るよう無線で指示を出した。そこで、フェルスタッペンは最もダメージが少ないバックストレートで譲ることにした。なぜなら、バックストレートエンドに3つ目のDRS区間の検知ポイントがあり、その直前でハミルトンを前に出せば、次のDRS区間で今度は自分がDRSを利用して抜き返せるからだ。
ところが、そのことを知らされていないハミルトンは、バックストレートで突然減速し始めたフェルスタッペンの行為に戸惑い追突した。
その後、メルセデスのロン・メドウズとレースディレクターのマイケル・マシのやりとりが公開され、メルセデスがポジションを入れ替えることについて知らされていなかったことが判明した。しかし、マシは「別のチャンネルで伝えている」と語っている。
この問題にはモータースポーツがほかのスポーツと異なる性質が大きく関係している。それは、ほかの多くのスポーツはリプレイ検証を行う場合、プレーを一旦止めた状態でビデオ検証することができるが、モータースポーツではそれはできない。
そうなると今後考えなければならないのは、インシデントが発生したことを確認し、どうすべきかを判断し、その連絡をスチュワードおよびチームに行う業務をレースディレクターのマシひとりに任せっきりでいいのかということだ。
今回のドタバタぶりで、マシをかつてのレースディレクターであるチャーリー・ホワイティングと比較する者がいるが、それはフェアではない。なぜなら、ホワイティングにはハービー・ブラッシュ(当時FIAオブザーバー)という右腕がいたからだ。チームのエンジニアやストラテジスト級の賢明なスタッフをマシの補佐として雇わないと、今後もこのようなドタバタが繰り返されるかもしれない。
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