「個人としては0点」…神村学園の全2得点を演出も、主将・西丸道人は“エース”として進化を誓う
サッカーキング2023年12月31日(日)21時58分
神村学園のキャプテンを務める西丸道人(13番) [写真]=兼子愼一郎
「個人としては0点でした」
本気で日本一を目指しているからこそ、神村学園(鹿児島)のキャプテンを務めるFW西丸道人は敢えて厳しい言葉を口にした。
第102回全国高校サッカー選手権大会の2回戦が12月31日に行われ、神村学園は松本国際(長野)を2-0で下した。腕章を巻いてフル出場した西丸は、8分に右サイドへのランニングでMF名和田我空の先制点をアシスト。2点目のシーンでも、敵陣中央で西丸が出したスルーパスから、右サイドをMF大成健人が抜け出し、クロスボールのこぼれ球をDF有馬康汰が押し込んだ。
試合後に有村圭一郎監督が「ちょっと昨日まで体調が悪かった」と明かしていたことから、恐らく万全のコンディションではなかったはずだ。その中で2得点に絡む活躍を見せたが、西丸は「個人としては1番と言っていいくらい最悪な試合でした」と、自身に対して厳しい言葉を発した。
厳しい自己評価を下した背景には、前回大会の苦い経験もあるのかもしれない。西丸は2年生ながら主力として全試合にフル出場。2回戦の山梨学院戦で3-2の勝利に繋がる決勝ゴールを挙げ、準々決勝の青森山田戦でも1点ビハインドの状況で同点ゴールを記録。その後チームはFW福田師王(現:ボルシアMG)の得点で2-1と逆転勝利した。だが、続く準決勝の岡山学芸館戦ではノーゴール。PK戦では2人目のキッカーを務めながら失敗し、チームも過去の最高成績であるベスト4の壁を越えられなかった。
MF大迫塁(現:セレッソ大阪→いわきFC)からキャプテンマークを、福田から背番号13を受け継いだからこそ、中途半端な気持ちで選手権の舞台に立つわけにはいかないのだろう。松本国際戦を振り返って「チームとしては立ち上がりの時間帯に、悪くない形で点を取れたのは良かったです」と一定の評価を下しつつも、続けて「要所要所で負けている部分が多かったです。最後もずっと苦しい展開になりました。試合全体を通して良くはなかったという印象です」と課題も口にしている。厳しい言葉はチームよりも自身に向けたものが多かった。「味方との擦り合わせの部分や、ゴール前での動きの工夫などが必要だったかなと思っています」と、個人としての具体的な反省点にも言及した。
一方で、有村監督は「今日はすごくチームのために頑張ってくれました」と、西丸を評価するコメントを発している。「本当は点を取りたいんでしょうけど、1点目のアシストもしてくれました」と続けると、「他にも決まっていてもおかしくないような場面もいくつかありました。ただ、今日はボールが返ってこなかった。次の試合ではボールが返ってくることもあるはずなので、献身的に続けてもらえれば」と称賛していた。
もちろん、西丸が最優先しているのはチームの勝利だ。「負けたら次もないので、自分の得点も大事ですが、その前にチームが勝つことが1番だと思っています。今日に関しては、個人としては良くなかったですが、チームとして勝利できたことは良かったことだと思っています」と語る。だが、自身のゴールがチームを勝たせることに繋がるとも自負している。神村学園の“エースストライカー”として、次のような言葉で得点へのこだわりを強調した。
「自分がチームのためにできることの中には、今日みたいに献身的に動き続けたり、守備で貢献するというところがあります。ですが、FWなので点を取ることが1番チームのためになると思っています。点が取れなかったということは、チームのためになれたとは言えないのではないかと思っています」
このような考え方だからこそ、無得点で終わった松本国際戦のパフォーマンスに納得するわけにはいかない。チームを優勝へ導くために、個人としては「得点王を狙っています。初戦からハットトリックしている選手もいますし、負けられないと思う部分もたくさんあります。とにかく結果を残していきたい」と力強く宣言。この「初戦からハットトリックしている選手」とは市立船橋(千葉)のFW郡司璃来のことだろう。清水エスパルス加入が内定している郡司は、1回戦の高川学園(山口)戦でハットトリックを記録。2024シーズンからのベガルタ仙台加入が内定している西丸にとって、Jリーグ入りが内定している選手の活躍は大きな刺激になっている。
「負けたくないと強く思います。今日は勝つことができたので、次はしっかりと自分のゴールでチームを勝利へ導き、まずは得点数で追いつけるように頑張っていきたいです」
そして、この選手権という舞台が「神村学園の西丸道人」としてチームメイトともにピッチに立つことのできる最後の舞台だ。「プロに行く前に高校生としてサッカーができるのはこれが最後です」と語った西丸は、キャプテンとして「本当に楽しむことを忘れずに、明後日は楽しんでプレーできればと思っています」と話した。
自分には厳しさを追求しながら、ピッチ上ではチームメイトと楽しむ姿勢を忘れない。西丸が自身の“理想”に近づき、進化を遂げた時、神村学園にとって初となる選手権の優勝が待っているはずだ。
取材・文=榊原拓海
本気で日本一を目指しているからこそ、神村学園(鹿児島)のキャプテンを務めるFW西丸道人は敢えて厳しい言葉を口にした。
第102回全国高校サッカー選手権大会の2回戦が12月31日に行われ、神村学園は松本国際(長野)を2-0で下した。腕章を巻いてフル出場した西丸は、8分に右サイドへのランニングでMF名和田我空の先制点をアシスト。2点目のシーンでも、敵陣中央で西丸が出したスルーパスから、右サイドをMF大成健人が抜け出し、クロスボールのこぼれ球をDF有馬康汰が押し込んだ。
試合後に有村圭一郎監督が「ちょっと昨日まで体調が悪かった」と明かしていたことから、恐らく万全のコンディションではなかったはずだ。その中で2得点に絡む活躍を見せたが、西丸は「個人としては1番と言っていいくらい最悪な試合でした」と、自身に対して厳しい言葉を発した。
厳しい自己評価を下した背景には、前回大会の苦い経験もあるのかもしれない。西丸は2年生ながら主力として全試合にフル出場。2回戦の山梨学院戦で3-2の勝利に繋がる決勝ゴールを挙げ、準々決勝の青森山田戦でも1点ビハインドの状況で同点ゴールを記録。その後チームはFW福田師王(現:ボルシアMG)の得点で2-1と逆転勝利した。だが、続く準決勝の岡山学芸館戦ではノーゴール。PK戦では2人目のキッカーを務めながら失敗し、チームも過去の最高成績であるベスト4の壁を越えられなかった。
MF大迫塁(現:セレッソ大阪→いわきFC)からキャプテンマークを、福田から背番号13を受け継いだからこそ、中途半端な気持ちで選手権の舞台に立つわけにはいかないのだろう。松本国際戦を振り返って「チームとしては立ち上がりの時間帯に、悪くない形で点を取れたのは良かったです」と一定の評価を下しつつも、続けて「要所要所で負けている部分が多かったです。最後もずっと苦しい展開になりました。試合全体を通して良くはなかったという印象です」と課題も口にしている。厳しい言葉はチームよりも自身に向けたものが多かった。「味方との擦り合わせの部分や、ゴール前での動きの工夫などが必要だったかなと思っています」と、個人としての具体的な反省点にも言及した。
一方で、有村監督は「今日はすごくチームのために頑張ってくれました」と、西丸を評価するコメントを発している。「本当は点を取りたいんでしょうけど、1点目のアシストもしてくれました」と続けると、「他にも決まっていてもおかしくないような場面もいくつかありました。ただ、今日はボールが返ってこなかった。次の試合ではボールが返ってくることもあるはずなので、献身的に続けてもらえれば」と称賛していた。
もちろん、西丸が最優先しているのはチームの勝利だ。「負けたら次もないので、自分の得点も大事ですが、その前にチームが勝つことが1番だと思っています。今日に関しては、個人としては良くなかったですが、チームとして勝利できたことは良かったことだと思っています」と語る。だが、自身のゴールがチームを勝たせることに繋がるとも自負している。神村学園の“エースストライカー”として、次のような言葉で得点へのこだわりを強調した。
「自分がチームのためにできることの中には、今日みたいに献身的に動き続けたり、守備で貢献するというところがあります。ですが、FWなので点を取ることが1番チームのためになると思っています。点が取れなかったということは、チームのためになれたとは言えないのではないかと思っています」
このような考え方だからこそ、無得点で終わった松本国際戦のパフォーマンスに納得するわけにはいかない。チームを優勝へ導くために、個人としては「得点王を狙っています。初戦からハットトリックしている選手もいますし、負けられないと思う部分もたくさんあります。とにかく結果を残していきたい」と力強く宣言。この「初戦からハットトリックしている選手」とは市立船橋(千葉)のFW郡司璃来のことだろう。清水エスパルス加入が内定している郡司は、1回戦の高川学園(山口)戦でハットトリックを記録。2024シーズンからのベガルタ仙台加入が内定している西丸にとって、Jリーグ入りが内定している選手の活躍は大きな刺激になっている。
「負けたくないと強く思います。今日は勝つことができたので、次はしっかりと自分のゴールでチームを勝利へ導き、まずは得点数で追いつけるように頑張っていきたいです」
そして、この選手権という舞台が「神村学園の西丸道人」としてチームメイトともにピッチに立つことのできる最後の舞台だ。「プロに行く前に高校生としてサッカーができるのはこれが最後です」と語った西丸は、キャプテンとして「本当に楽しむことを忘れずに、明後日は楽しんでプレーできればと思っています」と話した。
自分には厳しさを追求しながら、ピッチ上ではチームメイトと楽しむ姿勢を忘れない。西丸が自身の“理想”に近づき、進化を遂げた時、神村学園にとって初となる選手権の優勝が待っているはずだ。
取材・文=榊原拓海
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