新型コロナ拡大で「就職氷河期」が再び訪れたら... 自分から苦境を伝えに行く「受援力」を持とう
現在、日本では景気が急速に悪化している。19年10〜12月期の国内総生産(GDP)は年率換算では6.3%減。そこに、新型コロナウイルスの世界的流行が襲い、日経平均株価も急落している。識者の中には「リーマンショック級」と見る向きもある。
そんな中、早くも20年卒採用者の内定取り消しや、4月施行の改正労働者派遣法で同一労働同一賃金になるのを前に、派遣切りにあったという報告がネット上で挙がっている。このような動きは、就職氷河期やリーマンショックの始まりと重なる部分もある。
悲劇を繰り返さないためには、どうすればいいのか。改めて心構えを考えてみたい。(文:ふじいりょう)
自分からSOSを出す"力"を備えることが大切
内定取り消しの過去の判例をみると、企業側には「客観的に合理的に認められ社会通念上相当として是認することができるもの」が理由として求められている。したがって、企業の一方的な「赤字になった」「採用の余裕がない」といった理由では認められない可能性が高い。
一方、契約期間満了で更新をしない派遣労働者の雇い止めは、原則として適法。だが、例外的に「契約自体が実質的に無期雇用者と変わらないような場合」「契約更新に合理的な期待が生じているような場合」では無効になった判例もある。
つまり、長期に渡って契約が更新されており、業務内容が正社員と同じならば、雇い止めも回避できる可能性がある。当時、こうした知識を持たずに泣き寝入りをした人が多かったのは事実で、ある意味では就職氷河期世代の反省点と言えるかもしれない。
とはいえ、内定取り消しや雇い止めに遭っても「相談する人がいない」というケースもあるだろう。NPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏は、『アラフォー・クライシス』(新潮社)で助けを求めて受け入れる"受援力"という言葉を使っている。
藤田氏は「生活が苦しい場合は役所に相談しよう」と促し、支援をただ待つのではなく、自分から苦境を伝えに行く"力"を備えることが大切だと説く。
そのために必要なのは、法律や都道府県の支援制度を知っていることだ。就職氷河期の頃と違い、今ではネットで検索すれば簡単に調べることができる。もし、自分自身が困っていなくても、親族や知人が困窮した時に、救いの手を伸ばすためにも"調べる力"を養っておくことが大事だ。
公的支援を待つだけでなく、自分から「ゆるいつながり」を作る
一方、同時に求められるのが、セーフティーネットの拡充だ。東京大学社会科学研究所の玄田有史教授が取りまとめた連合総研『新たな就職氷河期世代を生まないために』(2016年)では、以下の7つの提言を出している。
1、青少年雇用情報の提供対象の拡充
2、「若年齢雇用者型訓練」助成金制度の創設
3、地方自治体と連携した地域企業グループによる人材育成
4、能力開発・キャリア形成有給休暇の推奨
5、有給休暇取得推進に向けた環境整備
6、生活・就労困難者に対する多様な支援人材の育成強化
7、自立支援コンソーシアムの設立
働き方改革により有給取得のハードルが下がっていたり、ひきこもりを支援する団体が活発化していたりと、提言が出た当時と比べて、改善されている部分もある。また、政府や地方自治体が就職氷河期世代に対象を限定した採用活動をするなどと国も無策ではないが、まだ十分とは言えないだろう。
そのさなかで起きた新型コロナウイルスの感染拡大のため、公的支援の整備を待っている間に、状況がどんどん悪化する可能性も否定できない。
筆者としては、個々が意識しておくべきなのは「ゆるいつながり」を作っていくことだと考える。前述の玄田氏は「自分と全然バックグラウンドが違うけれど、たまに会うと信頼できる人間関係が大事」と強調する。家族や会社の同僚といった親しい間柄でなくとも「自分と違う世界の人たちとゆるくつながる」ことが希望を見つけるヒントになるかもしれない。
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