通学路の見守りで「あいつさえ事故にあわなければいい」と…利己的でつまらない夫だと思った瞬間
All About2024年5月12日(日)22時5分
夫は心配性だ。一時が万事心配で、というタイプではない。「うちさえよければいい」という利己的な考えに基づいているので、行動や発言がちぐはぐなのだ。結婚当初は気が付かなかったが長年生活してわかり、うんざりしている。
人生観は人それぞれ違うもの。だがあまりにかけ離れていると、会話は弾まない。ましてその相手が夫となると、子育てにも大きく影響する可能性がある。
アイカさん(42歳)は、少し苦笑しながらそう言った。結婚10年、3歳年上の夫との間に8歳と5歳の子がいる。
結婚後も共働きを続けてきたが、ここ数年はリモートワークができるようになり、週2回の出社で効率的に仕事も家事もこなせるようになった。
彼女自身が子どもや家の中について以前より気を配れるようになった分、子どもたちが小さいころ、家の中の危険をできる限り排除しようとしてくれた夫に感謝もしていた。
「電源コードをきれいにまとめたり、子どもが口に入れそうなものは下に置かないなど、本当にきめ細やかだった。心配するだけではなく、行動してくれたから。だけど、だんだんそれが過剰になってきたんですよ」
8歳の長男は、かなりやんちゃな性格。なんでも自分でやってみようとトライするのはいいのだが、そのせいで生傷が絶えない。
「長男は好奇心が旺盛すぎる。一例ですが、たとえば滑り台は逆から上ろうとするし、下手したら上から飛び降りたりするんです。ただ、周りの子のことは視野に入っているようで、人に迷惑をかけない範囲で好奇心を満たそうとしているようですが」
それが気になって、アイカさんも長男とは密に話をするようにしている。だが夫は話を聞こうとせず、顔をしかめて「ケガしたらどうするんだ」「二度とやるな」としか言わない。
「それはちょっと違うと思うんです。子どもの好奇心は大事にしながら、それを安全な方向に導いていくのが親の務めじゃないかと。でも夫は好奇心自体を潰そうとする。
先日は『もっと無難に生きる方法を身につけさせなければいけないよな』と言うので、私はそれには反対だと返して大ゲンカになりました」
そのときから、アイカさんは夫のさまざまな言動を注視するようになった。
「その話を夫にしたら、夫が『巻き込まれなくてよかったね。でも、そこに行くのは考え直したら?』と言ったんです。私、その言葉に違和感があった。私が巻き込まれなくてよかったという発想はなかったから。
それより今後の対策を考えたほうがいいわけだし、実際、ジムは対策をとっているところ。ジムに限らず、どんな場所でも起こりうる事態でしょ。それを自分目線でしか語れない夫に、つまんねえやつだなあと思ってしまったんです(笑)」
子育てにおいても同じようなことが目につくようになってきた。
例えば下の子の通学路問題。信号のない道路を渡らなければならず、もちろん保護者が交代で注意を呼びかけてはいるのだが、学校や行政が積極的に対策をとってくれないかとアイカさんは他の保護者とともに活動を続けている。
「だけど夫は、うちの子さえ危ない目にあわなければいいと思ってる。あるとき夫が平日に代休をとって息子を送っていったことがあるんです。
夫の帰宅後、『通学路問題、どうしたらいいのかしらね』と話をふったら、『大丈夫だよ。ちゃんと見届けてきたから』と。
いや、うちの子だけの問題じゃないでしょと言うと、『あいつさえ事故にあわなければいい』って。
みんなの問題、地域の問題という意識がまったくないんですよね。この人、会社でも自分さえよければいいと思っているのかもしれないと感じました」
「大人として親として社会人としてどうなのよ、とつっこみたくなることばかりです。心配性というと繊細な人というイメージがあるけど、夫の場合は利己的であるがゆえの心配性ですからね、単に自分勝手と受け取られてもしかたがない」
子どもたちに父親のそうした考え方が伝播するのが、今のアイカさんの不安だ。やんちゃでもいいけど周りをよく見て考えてから行動すること、危ないと思ったらやめる勇気も大事だからねと伝えている。
子どもの可能性を狭めたくないアイカさんと、無難な人生を送るための土台を作ってほしいと願う夫、どちらが正しいというわけではなく、本人たちの生き方の違いなのかもしれない。
(文:亀山 早苗(フリーライター))
もともと心配性の夫だったけど
「うちの夫は心配性なんです。付き合っているときや新婚当初は、私のことを気遣ってくれてありがたいと思っていた。でも、子どもが大きくなるにつれ、この人の心配性は人のやる気を削ぐかもしれないと感じるようになってきたんです」アイカさん(42歳)は、少し苦笑しながらそう言った。結婚10年、3歳年上の夫との間に8歳と5歳の子がいる。
結婚後も共働きを続けてきたが、ここ数年はリモートワークができるようになり、週2回の出社で効率的に仕事も家事もこなせるようになった。
彼女自身が子どもや家の中について以前より気を配れるようになった分、子どもたちが小さいころ、家の中の危険をできる限り排除しようとしてくれた夫に感謝もしていた。
「電源コードをきれいにまとめたり、子どもが口に入れそうなものは下に置かないなど、本当にきめ細やかだった。心配するだけではなく、行動してくれたから。だけど、だんだんそれが過剰になってきたんですよ」
8歳の長男は、かなりやんちゃな性格。なんでも自分でやってみようとトライするのはいいのだが、そのせいで生傷が絶えない。
「長男は好奇心が旺盛すぎる。一例ですが、たとえば滑り台は逆から上ろうとするし、下手したら上から飛び降りたりするんです。ただ、周りの子のことは視野に入っているようで、人に迷惑をかけない範囲で好奇心を満たそうとしているようですが」
子どもの好奇心を潰そうとする夫
遠足で川に行くと好奇心から足を入れてみる、木があれば登ってみる。子どもらしいといえばいえるのだが、今の世の中では「無謀」と受け止められかねない。それが気になって、アイカさんも長男とは密に話をするようにしている。だが夫は話を聞こうとせず、顔をしかめて「ケガしたらどうするんだ」「二度とやるな」としか言わない。
「それはちょっと違うと思うんです。子どもの好奇心は大事にしながら、それを安全な方向に導いていくのが親の務めじゃないかと。でも夫は好奇心自体を潰そうとする。
先日は『もっと無難に生きる方法を身につけさせなければいけないよな』と言うので、私はそれには反対だと返して大ゲンカになりました」
そのときから、アイカさんは夫のさまざまな言動を注視するようになった。
無難が最高だと思っている夫
通勤時間が減ったため、アイカさんはこの2年ほど近所のスポーツジムに通っている。半年前、運動していた高齢女性がよろめいて他の女性ともども軽いケガをする事故が起こった。「その話を夫にしたら、夫が『巻き込まれなくてよかったね。でも、そこに行くのは考え直したら?』と言ったんです。私、その言葉に違和感があった。私が巻き込まれなくてよかったという発想はなかったから。
それより今後の対策を考えたほうがいいわけだし、実際、ジムは対策をとっているところ。ジムに限らず、どんな場所でも起こりうる事態でしょ。それを自分目線でしか語れない夫に、つまんねえやつだなあと思ってしまったんです(笑)」
子育てにおいても同じようなことが目につくようになってきた。
例えば下の子の通学路問題。信号のない道路を渡らなければならず、もちろん保護者が交代で注意を呼びかけてはいるのだが、学校や行政が積極的に対策をとってくれないかとアイカさんは他の保護者とともに活動を続けている。
「だけど夫は、うちの子さえ危ない目にあわなければいいと思ってる。あるとき夫が平日に代休をとって息子を送っていったことがあるんです。
夫の帰宅後、『通学路問題、どうしたらいいのかしらね』と話をふったら、『大丈夫だよ。ちゃんと見届けてきたから』と。
いや、うちの子だけの問題じゃないでしょと言うと、『あいつさえ事故にあわなければいい』って。
みんなの問題、地域の問題という意識がまったくないんですよね。この人、会社でも自分さえよければいいと思っているのかもしれないと感じました」
自分勝手な心配性
視野を広げてみればすぐにでもわかりそうなことを、夫は気付こうとしない。すべての問題を「自分とわが家」でしか考えていないと、アイカさんは感じている。「大人として親として社会人としてどうなのよ、とつっこみたくなることばかりです。心配性というと繊細な人というイメージがあるけど、夫の場合は利己的であるがゆえの心配性ですからね、単に自分勝手と受け取られてもしかたがない」
子どもたちに父親のそうした考え方が伝播するのが、今のアイカさんの不安だ。やんちゃでもいいけど周りをよく見て考えてから行動すること、危ないと思ったらやめる勇気も大事だからねと伝えている。
子どもの可能性を狭めたくないアイカさんと、無難な人生を送るための土台を作ってほしいと願う夫、どちらが正しいというわけではなく、本人たちの生き方の違いなのかもしれない。
亀山 早苗プロフィール
明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。(文:亀山 早苗(フリーライター))
©All About, Inc.
「通学路」をもっと詳しく
「通学路」のニュース
-
通学路の交通安全、7万6,404か所のうち88.1%対策済み12月18日13時45分
-
通学路における交通安全、全体の8割が対策済4月6日19時15分
-
マップル「通学路安全支援システム」事故データ連携へ4月21日11時45分
-
運転時の視界の悪さや通学路に不安…交通安全に関する意識調査3月2日13時15分
-
子供を犯罪者から守るため、今夜「通学路のあの花は咲いてる?」と聞くべき意外な理由1月8日17時0分
-
「小学生だった私に、タダでデコポンをくれた果物屋のおっちゃん。後ろめたさを感じ、母に相談すると...」(京都府・20代男性)12月9日11時0分
-
<通学路での被災も>大地震発生時「家・路上・街」にいる子が“自分で命を守る”には? 家族再会のためにできること10月11日19時45分
-
埼玉県戸田市、300か所に見守り防犯カメラ設置6月8日15時45分
-
パスカル・プリッソン監督最新作『GOGO 94歳の小学生』12月日本公開決定10月20日19時30分
-
昭文社「通学路安全支援システム」地図上で可視化2月13日9時45分