休校中の学習時間に親以外の人との関わりが影響、立教大学 中原淳研究室調査
リセマム2020年6月22日(月)13時45分
立教大学・中原淳研究室では、新型コロナ感染拡大が進むなか、学校の休校中の子どもや保護者に何が起こったのかを定量的・定性的に調査。第1弾の成果報告会を2020年6月14日にオンラインで実施した。イベントには日本全国のみならず、海外からの参加者も含め460名が集まった。
必要なのは先生・友人とのコミュニケーション
成果報告会「そのとき学びに何が起こったか:新型コロナ感染拡大による学習環境の変化に関する調査報告会」はオンラインにて2部制で開催。開催の目的は、「4月~5月と日本全国の学校が『とまって(休校)』しまったとき、子ども、保護者、教員に『何』が起こったのかを調査で把握し、迫り来る第2波・第3波に備えて、何を今からしておかなくてはならないのかについての「作戦会議」をすること」。調査は多くの学校が臨時休校に追い込まれた2020年4月~5月の間に、立教大学の中原淳教授の研究室メンバーによって実施された。
休校措置中の高校生の「実態:学習時間」について調べたところ、普段の休日は「ほぼしない」47%、「3時間未満」40%、「3時間以上」13%だったのに対し、休校中は「ほぼしない」29%、「3時間未満」42%、「3時間以上」29%。学習時間を確保できている人とできていない人の差が開いていることが明らかとなった。
「学校の休校中の取組みと学習時間の関係」では、提出必須の課題が「出されている」場合の学習時間が2時間12分だったのに対し、「出されていない」群の学習時間は1時間38分で34分の差があった一方、受講必須の配信授業(オンライン授業)が「配信されている」群は2時間9分、「配信されていない」群は2時間11分と、統計的に優位な差はみられなかったという。このことから、オンライン支援よりも「やること」の明確化が、学習時間の確保に影響しているとした。
調査では「学校のICT化の状況と休校中の学習時間」の関連性ついても迫っている。統計的に優位な差として現れたのは、「学校関係者用デジタル連絡網」に取り組んでいるか否か。取り組んでいない群に対し、取り組んでいる群の学習時間が25分多いという差がみられ、学校からの情報発信が学習時間確保に影響していることがわかった。
また、学校生活を「楽しんでいる」は2時間17分に対し、「楽しんでいない」は1時間49分、学校での他者との関係を「築けている」2時間22分に対し、「築けていない」は1時間25分、休校中の教員とのコミュニケーションが「とれている」2時間22分に対し、「とれていない」が1時間54分と、3項目それぞれで学習時間が大きく差が開くという結果に。学校での居場所があることや、友人や教員とのコミュニケーションが取れていることが、休校中の学習時間に影響していることが明らかとなった。
親の働きかけは学習時間に影響ある?
一方で、親とのかかわりと学習時間についても調査が行われている。中でも興味深いのは、休校中に親に勧められた学習コンテンツに取り組んだかどうかと学習時間の関係について聞いた項目だ。これによると「取り組んだ」が2時間9分、「取り組んでいない」が2時間10分で、親が教材を勧めても学習時間が長くなるというわけではないという結果に。むしろ、親に勧められた学習コンテンツに取り組んだ群と取り組んでいない群では、ストレスによるものと考えられる反応が前者のほうが高くなったことがわかった。
こうした結果を踏まえ、高校生の学習や生活は「人とのつながり」に支えられているとした。また、見ず知らずの大人でもなく、かといって親ほど身近でもない距離にいて自分のことを見て理解してくれる「先生」とのかかわりが、学習時間を確保するのに重要であるとも言及。そして「学校や家庭に限らず、社会の幅広いアクターや領域で学びを支えていくことが必要なのではないか」として、第1部は締められた。
他者とかかわることの重要性
第2部は対談。カタリバの今村久美氏と加賀大資氏、都立日野台高等学校 教諭の佐々木宏氏、N高等学校 3年生の片野優氏、立教大学 教授の中原淳氏が登壇しそれぞれの立場からの意見が交わされた。
カタリバの2人は、休校中のオンラインでの「居場所」づくりについて。今後の子どもの「居場所」の可能性が示された内容だった。また、現役の高校教諭の佐々木氏からは、休校中の生徒たちの学びが「社会の中で他者とのかかわりから得る学び」から完全に断絶しており、学びの範囲が狭くなっていることについて言及し、問題を提起。
また、現役の高校3年生の片野氏は、休校期間にスクーリングが重なってしまい、AO入試に必要な要件を満たすことができるのかどうか不安という話や、自発的にZoomを使用した「自習室」を設定し、仲間とつながりながら学びを続けたという話を披露。高校生ならではの工夫や新たな視点に、参加者のチャットも盛り上がり多くの反応があがっていた。特に「Zoom自習室」の話題は、第1部の調査報告を裏付けるものでもあり、今後に備え、準備をしておきたい「施策」につながるのではないかと感じた。
第2波3波に備えて
第1部の報告と第2部の対談で浮き彫りになったのは、休校期間で社会や人とのつながりを感じにくい中で学習を続けることは、多くの子ども(高校生)にとっては難しいものであり、だからこそ、人と人がつながる「場」が、教育には必要だということ。
今後、来るべき新型コロナの第2波3波に備え、今回の休校期間でどんなことが起こったのかを総括し、子どもたちの学びを止めないためには何が必要なのか、何をするべきなのかを幅広い業種・立場の大人のひとりひとりが考え、行動する必要性を、改めて認識するイベントであった。
必要なのは先生・友人とのコミュニケーション
成果報告会「そのとき学びに何が起こったか:新型コロナ感染拡大による学習環境の変化に関する調査報告会」はオンラインにて2部制で開催。開催の目的は、「4月~5月と日本全国の学校が『とまって(休校)』しまったとき、子ども、保護者、教員に『何』が起こったのかを調査で把握し、迫り来る第2波・第3波に備えて、何を今からしておかなくてはならないのかについての「作戦会議」をすること」。調査は多くの学校が臨時休校に追い込まれた2020年4月~5月の間に、立教大学の中原淳教授の研究室メンバーによって実施された。
休校措置中の高校生の「実態:学習時間」について調べたところ、普段の休日は「ほぼしない」47%、「3時間未満」40%、「3時間以上」13%だったのに対し、休校中は「ほぼしない」29%、「3時間未満」42%、「3時間以上」29%。学習時間を確保できている人とできていない人の差が開いていることが明らかとなった。
「学校の休校中の取組みと学習時間の関係」では、提出必須の課題が「出されている」場合の学習時間が2時間12分だったのに対し、「出されていない」群の学習時間は1時間38分で34分の差があった一方、受講必須の配信授業(オンライン授業)が「配信されている」群は2時間9分、「配信されていない」群は2時間11分と、統計的に優位な差はみられなかったという。このことから、オンライン支援よりも「やること」の明確化が、学習時間の確保に影響しているとした。
調査では「学校のICT化の状況と休校中の学習時間」の関連性ついても迫っている。統計的に優位な差として現れたのは、「学校関係者用デジタル連絡網」に取り組んでいるか否か。取り組んでいない群に対し、取り組んでいる群の学習時間が25分多いという差がみられ、学校からの情報発信が学習時間確保に影響していることがわかった。
また、学校生活を「楽しんでいる」は2時間17分に対し、「楽しんでいない」は1時間49分、学校での他者との関係を「築けている」2時間22分に対し、「築けていない」は1時間25分、休校中の教員とのコミュニケーションが「とれている」2時間22分に対し、「とれていない」が1時間54分と、3項目それぞれで学習時間が大きく差が開くという結果に。学校での居場所があることや、友人や教員とのコミュニケーションが取れていることが、休校中の学習時間に影響していることが明らかとなった。
親の働きかけは学習時間に影響ある?
一方で、親とのかかわりと学習時間についても調査が行われている。中でも興味深いのは、休校中に親に勧められた学習コンテンツに取り組んだかどうかと学習時間の関係について聞いた項目だ。これによると「取り組んだ」が2時間9分、「取り組んでいない」が2時間10分で、親が教材を勧めても学習時間が長くなるというわけではないという結果に。むしろ、親に勧められた学習コンテンツに取り組んだ群と取り組んでいない群では、ストレスによるものと考えられる反応が前者のほうが高くなったことがわかった。
こうした結果を踏まえ、高校生の学習や生活は「人とのつながり」に支えられているとした。また、見ず知らずの大人でもなく、かといって親ほど身近でもない距離にいて自分のことを見て理解してくれる「先生」とのかかわりが、学習時間を確保するのに重要であるとも言及。そして「学校や家庭に限らず、社会の幅広いアクターや領域で学びを支えていくことが必要なのではないか」として、第1部は締められた。
他者とかかわることの重要性
第2部は対談。カタリバの今村久美氏と加賀大資氏、都立日野台高等学校 教諭の佐々木宏氏、N高等学校 3年生の片野優氏、立教大学 教授の中原淳氏が登壇しそれぞれの立場からの意見が交わされた。
カタリバの2人は、休校中のオンラインでの「居場所」づくりについて。今後の子どもの「居場所」の可能性が示された内容だった。また、現役の高校教諭の佐々木氏からは、休校中の生徒たちの学びが「社会の中で他者とのかかわりから得る学び」から完全に断絶しており、学びの範囲が狭くなっていることについて言及し、問題を提起。
また、現役の高校3年生の片野氏は、休校期間にスクーリングが重なってしまい、AO入試に必要な要件を満たすことができるのかどうか不安という話や、自発的にZoomを使用した「自習室」を設定し、仲間とつながりながら学びを続けたという話を披露。高校生ならではの工夫や新たな視点に、参加者のチャットも盛り上がり多くの反応があがっていた。特に「Zoom自習室」の話題は、第1部の調査報告を裏付けるものでもあり、今後に備え、準備をしておきたい「施策」につながるのではないかと感じた。
第2波3波に備えて
第1部の報告と第2部の対談で浮き彫りになったのは、休校期間で社会や人とのつながりを感じにくい中で学習を続けることは、多くの子ども(高校生)にとっては難しいものであり、だからこそ、人と人がつながる「場」が、教育には必要だということ。
今後、来るべき新型コロナの第2波3波に備え、今回の休校期間でどんなことが起こったのかを総括し、子どもたちの学びを止めないためには何が必要なのか、何をするべきなのかを幅広い業種・立場の大人のひとりひとりが考え、行動する必要性を、改めて認識するイベントであった。
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